スタートアップや新規事業において、資金調達を行う際に欠かせないのが「投資家向けピッチ資料」です。
投資家に対して自社の事業内容や成長性、投資価値を短時間で伝えるためには、分かりやすく整理されたピッチ資料が必要不可欠です。
しかし、実際には「ピッチ資料はどのような構成にすればよいのか」「何を書けば投資家に評価されるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
ピッチ資料は一般的なプレゼン資料とは異なり、資金提供を中心とする投資家の支援を引き出す必要があります。
そのため、投資家の視点を理解したうえで、資料の構成や内容を設計することが重要になります。
そこで本記事では、実際に使用されたスライドを参考にしながら、投資家向けピッチ資料の基本的な考え方から構成、事例、作り方までを体系的に解説します。
これから資金調達を検討している方や、ピッチ資料を作成したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
本記事でご紹介している投資家向けピッチ資料の例(抜粋版)
なお、本記事に登場する一部の企業名・資料内容は、機密保持契約に基づいて実際の内容から変更しております。
投資家向けピッチ資料とは
投資家向けピッチ資料とは、投資家(ベンチャーキャピタル、エンジェル投資家、金融機関など)に対して、自社の事業内容やビジネスモデル、成長性、資金調達の目的などを説明し、投資を検討してもらうためのプレゼン資料のことです。
一般的な営業資料や会社紹介資料との大きな違いは、目的が「商品を売ること」や「会社を知ってもらうこと」ではなく、「投資してもらうこと」にあり、非常に大きな意思決定を促す必要がある点です。
投資家は限られた時間の中で多くの企業のピッチを見ています。
そのため、短時間で事業の魅力や成長性、投資価値を理解してもらうためには、ストーリーが整理された分かりやすいピッチ資料を作成することが非常に重要になります。
投資家が評価するピッチ資料の条件
それでは、どのようなピッチ資料を作成すれば投資家に納得してもらうこと、ひいては投資家の協力を引き出すことができるのでしょうか。
その答えを簡潔に述べると、投資家に評価されるピッチ資料の条件としては、課題設定・市場性・競争優位性・収益性・将来性の5つの観点が網羅されている必要があります。
ピッチ資料を作成する際はこれらの条件を必ず意識して、投資家に刺さるピッチ資料を完成させましょう。
| 投資家が評価する観点 | 説明 | |
| 課題設定 | 誰のどのような課題を解決しており、課題は解決するにふさわしい内容か? | |
| 市場性 | 市場規模は十分であり、今後の成長も期待できるか? | |
| 競争優位性 | 競合はどのような取り組みを行っており、どのようにして差別化するか? | |
| 収益性 | 事業として利益を生み出せる構造になっているか? | |
| 将来性 | 将来的にも事業は成長していくか? | |
投資家向けピッチ資料の基本構成
投資家向けピッチ資料の概要を理解できたところで、AIを活用した健康増進サービスを提供するWellbeing Lab株式会社の事例から、ピッチ資料の基本構成を見ていきましょう。
気をつけていただきたいのは、この後紹介するスライドはあくまでも基本的な内容であり、事業の特性や投資家が重視するポイントに応じて、最適な構成を検討する必要があるという点です。
事例は参考にしつつも、「自分の場合はどうすべきか」という発想を持って、より良いピッチ資料の作成を目指してください。
表紙
表紙のスライドでは、会社名、サービス名、ロゴ、キャッチコピーなどを記載します。
一見すると単純なスライドに思えてしまいますが、ピッチの最初に表示されるスライドであり、第一印象を決める重要なスライドでもあります。
表紙はデザインを作り込みすぎる必要はありませんが、シンプルで見やすく、事業の雰囲気が伝わるスライドにすることが重要です。
事業をイメージできる画像を大胆に配置したり、コーポレートカラーで統一するなどしたうえで、投資家の期待を高めるようなデザインにしましょう。

課題
課題のスライドでは、世の中や顧客が抱えている課題を説明します。
投資家は「その事業は必要なのか」「本当に解決すべき課題なのか」「その課題は大きいのか」といった点を非常に重視するため、ピッチ資料の中でも特に重要なスライドの1つになります。
課題を説明する際は、単に「〇〇が不便です」「〇〇が大変です」といった感覚的な説明ではなく、市場データやアンケート結果、具体的な事例などを用いて数字で説明すると、課題の大きさや重要性が客観的に伝わりやすくなります。
良いピッチ資料は、課題のスライドを見ただけで、投資家に危機感や使命感を与えられるように設計されています。

解決策
解決策のスライドでは、課題をどのように解決するのかを説明します。
ここでは、自社のサービスやプロダクトがどのような仕組みで課題を解決するのか、他の方法と比べて優れているポイントにも注目しながら説明します。
単調にサービスやプロダクトの機能一覧を説明するのではなく、内容が直感的にイメージできるような画像・図解を使用することが大切です。
投資家のワクワクを引き出すようなスライドに仕上げることができれば十分です。
課題スライドと同様、解決策のスライドもピッチ資料の中で特に重要な部分であり、ここで事業の価値や面白さが伝わるかどうかがピッチ全体の印象を大きく左右します。

市場性
市場性のスライドでは、その事業が対象とする市場の大きさや成長性について説明します。
投資家は事業のアイデアだけではなく、「その事業の規模が大きく、将来的にも成長できる市場にあるのか」という点を非常に重視します。
そのため、市場規模や成長率などを定量的な統計とともに説明しましょう。
その際は、TAM(理論上の最大市場規模)、SAM(実際にサービス提供が可能な市場規模)、SOM(現実的に獲得可能な市場規模)といったかたちで段階的に市場規模を説明するケースや、数年分の規模・成長性を棒グラフで示すようなケースが多いです。

ビジネスモデル
ビジネスモデルのスライドでは、事業としてどのように収益を上げるのか、どのような仕組みでお金が入ってくるのかを説明します。
サブスクリプションモデル、広告モデル、手数料モデル、ライセンスモデルなど、収益構造を分かりやすく図解で説明することが多いです。
投資家は、リスクを背負ってリターンを求める使命がある以上、「儲かる仕組みがあるか」「スケールするビジネスモデルか」を重視する必要があります。
そのため、ビジネスモデルを示し、再現性高く収益を獲得する仕組みがあることを証明できなければ、投資家の期待に応えることはできません。

競争優位性
競争優位性のスライドでは、競合企業や代替サービスとの違いを明らかにしたうえで、自社の強みや優位性について説明します。
市場が魅力的であっても、競合が強すぎる場合は事業が成功しない可能性があるため、競合との競争に打ち勝つ方法については必ず説明する必要があります。
競合を比較表の形式で並べたりポジショニングマップを使うなどして、自社がどのような立ち位置にいるのか、なぜ競争に勝てるのかを説明しましょう。
その際は、価格、機能、ターゲット、ビジネスモデル、技術など、どのような観点で優位性があるのかを、根拠と合わせて示すことが重要です。

実績
実績のスライドでは、事業を通してこれまでに獲得した成果や、目標の進捗状況を説明します。
例えば、売上、ユーザー数、成長率、導入企業数、提携企業、受賞歴、メディア掲載、プロダクト開発の進捗など、事業が順調に進んでいることを示すデータを掲載しましょう。
投資家はアイデアだけではなく、実際にどれだけ事業が進んでいるか、どれだけ成長しているかを重視します。
そのため、創業当初では書けることが少ないかもしれませんが、可能な限り数字で実績を示すことが、投資家からの信頼を得るためにも大切になります。

チーム
チームのスライドでは、経営メンバーや主要メンバーの経歴や強みを紹介します。
スタートアップへの投資では、事業内容だけではなく「このチームなら事業を成功させることができるか」という点も非常に重要な評価ポイントになります。
そのため、メンバーの経歴、専門分野、過去の実績などを整理して説明します。
例えば、業界経験が豊富なメンバー、技術に強いメンバー、営業やマーケティングに強いメンバーなど、チームとしてのバランスや強みが伝わるようにすると効果的です。
投資家は「事業に投資する」というよりも「チームに投資する」と言われることもあるほど、チームは重要な評価項目です。

資金調達額と使途
資金調達額と使途のスライドでは、いくら資金調達したいのか、その資金を何に使うのかを説明します。
資金調達を目的とするピッチ資料であれば欠かすことができないスライドです。
投資家目線に立つと、自分たちが提供した資金がどのように効率的に使用されるのかは気になるところです。
そのため、人件費、開発費、広告宣伝費、設備投資、運転資金など、資金の使い道を具体的に示すことで、資金調達の意義を強調しましょう。
また、資金調達によってどの程度事業が成長するのか、売上やユーザー数がどのように伸びるのかといった計画も補足できれば、投資家にとって投資判断がしやすい資料になります。

クロージング
クロージングのスライドでは、これまで説明してきた内容を簡潔にまとめ、改めて事業の魅力や投資価値を伝えます。
ピッチの最後の印象は非常に重要なため、「なぜこの事業に投資すべきなのか」「この事業が成功するとどのような未来が実現するのか」といったメッセージで、プレゼンを美しく締めくくりましょう。
投資家といつでもコンタクトを取れるように、可能であれば連絡先情報も掲載しておくとよいでしょう。

ピッチ資料で登場するスライド一覧
繰り返しになりますが、ここまでで登場したスライドはあくまでも代表的なスライドであり、投資家の評価するポイントや事業内容などに応じて、構成は柔軟に変更する必要があります。
以下はピッチ資料で頻繁に登場するスライドになりますので、ここまで登場したスライドとあわせて覚えておきましょう。
| スライド | 記載する内容 | |
| 目次 | ピッチ資料全体の構成と流れを示し、これから説明する内容の全体像を伝える。 | |
| エグゼクティブサマリー | 事業概要、強み、市場、ビジネスモデルなど、ピッチ資料における重要な内容を要約して伝える。 | |
| 会社概要 | 会社名、所在地、設立年、事業内容など、会社の基本情報を紹介する。 | |
| 沿革 | 創業から現在までの主要な出来事や事業の成長過程を説明する。 | |
| 選ばれる理由・強み | 自社事業が顧客からどのような評価を受けており、なぜ選ばれるのかを説明する。 | |
| ロードマップ | 今後の事業計画やプロダクト開発、成長戦略の流れを中長期的に示す。 | |
| MVV(ミッション・ビジョン・バリュー) | 会社のゴールと、そこに至るための方法を説明する。 | |
| 業績 | 売上や利益、あるいはユーザー数など、会社の業績を示す指標を数字で提示する。 | |
| スケジュール | 今後の事業活動や資金調達後の計画を時系列で示す。 | |
もちろん、投資家向けピッチ資料では、これら以外にもさまざまなスライドが登場します。
ここまで登場したスライドを含め、以下では各スライドのテンプレートを登録不要で無料ダウンロードすることができますので、ぜひ参考にしてみてください。

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投資家向けピッチ資料の事例5選
ここまでの説明で、投資家向けピッチ資料における基本構成についてご理解いただけたと思います。
ここからは実際の事例を5つご紹介することで、ピッチ資料のバリエーションを肌で感じていただきます。
まずは身近な国内スタートアップの事例を2つご紹介したうえで、Airbnb・Tinder・LinkedInといった世界的企業の事例を3つご紹介します。
各社の状況に応じて、ピッチ資料の構成やデザインが大きく異なることが分かるはずです。
あなたもピッチ資料を作成する際は、場面に応じて最適な内容を設計しましょう。
健康系サービスの事例
こちらは、これまでも登場した健康系スタートアップ「Wellbeing Lab株式会社」の事例です。
投資家向けピッチ資料として基本を忠実に守っており、どのようなピッチにおいても参考になる事例と言えます。
まずは課題を示して、その後に解決策を提示するという分かりやすい構成を採用しており、投資家の目線からも理解しやすい内容になっています。
本ピッチは「資金調達額と使途」の明示が求められていたのできちんと盛り込んでいますが、反対に詳細な業績(財務計画)は求められていませんでした。
多くのケースでは業績(財務計画)も求められるため、必要に応じて追加してみてもよいでしょう。
※権利の関係上、一部画像は本記事でご紹介したものから差し替えております。
自治体向けサービスの事例
次は、自治体向けのコンテスト開催サービスを手掛ける「自治コン」の事例紹介です。
本事例の特徴は、何といっても事前開示されていた審査基準と、各スライドとの対応関係を明示しているところです。
目次や各スライド右上で対応する審査基準を示すことで、投資家目線に立つと非常に評価しやすいピッチ資料になっています。
また、サービスについて詳しく説明してから、サービスを取り巻く課題や市場・競争環境について説明する点もユニークでしょう。
ピッチ資料の最後には詳細な収益計画も説明しており、全体的に数字の説得力が強く感じられる事例になっています。
Airbnbの事例
ここまでは国内企業の事例を紹介してきましたが、ここからは世界的に有名なスタートアップの事例をご紹介しましょう。
まずは、民泊プラットフォームを提供しているAirbnbの事例からです。
Airbnbのピッチ資料は、デザインに凝っているとは言えませんが、ピッチ資料の基本を完璧におさえた内容です。
課題から始まって解決策につながり、サービス説明や競合分析、ユーザーの声に至るまで、シンプルながらも要点を網羅したピッチ資料になっています。
書いている内容は特別ではありませんが、シンプルかつ正しく情報を整理するだけで、投資家に刺さる内容にできることが分かるはずです。
Tinderの事例
マッチングアプリの先駆けであるTinderの事例も見ておきましょう。
本事例はご覧になっていただければ分かるように、徹底的に口頭説明に寄せています。
スライド上では文字情報をできる限りそぎ落とし、画像や一言メッセージを中心に配置することで、「プレゼンが聞かれずに、投資家は資料にばかり目をやってしまう」という状況を回避しています。
デメリットとしては、資料単体で内容を理解することができないため、投資家がプレゼン後に検討することが難しくなる点です。
しかしながら、プレゼンのみで投資判断が行われるようなケースでは、こうしたピッチ資料に仕上げてもよいでしょう。
LinkedInの事例
最後の事例は、ビジネスSNSの代表格であるLinkedInの事例です。
先ほどのTinderの事例がプレゼンを前提とした内容であったのに対し、今回の事例は投資家自身に読んでもらうことを前提とした事例です。
大半のスライドに数値情報が盛り込まれているため説得力があり、かつページ数も非常に多いためさまざまな情報を知ることができます。
ここまでの事例からも分かる通り、ピッチ資料においては場面に応じて最適な構成が異なっています。
あなたもピッチ資料を作成する際は、ピッチの目的から逆算してあるべき構成を探っていく必要があるわけです。
良いピッチ資料に共通するポイント
ここまで事例をご紹介してきた通り、ピッチ資料の構成やデザインは企業や状況によって大きく異なります。
しかし、投資家に評価されるピッチ資料には、いくつかの共通した特徴があります。
本章では、良いピッチ資料に共通する5つのポイントについて解説していきます。
投資家の目線に立って事業価値を数字で示し、プロフェッショナルさが感じられるデザインにし、そして何よりも熱量を伝えることが大切です。
投資家の目線になっている
良いピッチ資料は、常に投資家の目線で作られており、自社が伝えたいことを並べるのではなく、投資家が知りたい情報に的確に答えていることが重要です。
再掲になりますが、課題設定・市場性・競争優位性・収益性・将来性は、投資家が特に気にするポイントです。
これらの観点を網羅しつつ、かつピッチや投資家の特性に応じて、最適なピッチ資料に仕上げましょう。
| 投資家が評価する観点 | 説明 | |
| 課題設定 | 誰のどのような課題を解決しており、課題は解決するにふさわしい内容か? | |
| 市場性 | 市場規模は十分であり、今後の成長も期待できるか? | |
| 競争優位性 | 競合はどのような取り組みを行っており、どのようにして差別化するか? | |
| 収益性 | 事業として利益を生み出せる構造になっているか? | |
| 将来性 | 将来的にも事業は成長していくか? | |
事業に取り組む価値がある
投資家は限られた資金をどの事業に投じるかを判断するため、「その事業に取り組む価値があるか」を厳しく見極めています。
単に面白いアイデアであるだけではなく、課題として解決する意味はあるか、ビジネスとして成立するのかといったことを重視します。
町の小さな課題を解決しても、社会に対して大きなインパクトを与えることはできません。
「解決すべきである」「持続的な事業である」と投資家に思ってもらえるような、ワクワクでき、しかも現実的である事業を示しましょう。
数字で語られている
良いピッチ資料は、感覚ではなく数字で語られています。
売上、ユーザー数、成長率、市場規模などの定量情報を用いることで、事業の信頼性や再現性を示すことができます。
投資家は感情ではなく合理的な判断を重視するため、数字による裏付けがない主張は評価されにくくなります。
特に、投資家は常に数字と向き合っているため、数字が盛り込まれていないピッチ資料であるだけで相手をがっかりさせてしまいます。
可能な限りデータや実績を盛り込み、客観的に事業の価値を伝えていきましょう。
美しいデザインである
ピッチ資料では内容だけでなく、デザインも重要な要素です。
情報が整理されておらず見づらい資料は、それだけで理解が難しくなり、評価が下がってしまう可能性があります。
一方で、シンプルで統一感のあるデザインは、内容を分かりやすく伝えるだけでなく、プロフェッショナルな印象を与えます。
フォント、色、レイアウトを統一し、余白を意識することで、読みやすい資料に仕上げることが大切です。
いつも美しい資料ばかり見ている投資家に対し、素人感たっぷりのピッチ資料を示し、それだけで期待値を大きく下げてしまうことがないようにしましょう。
熱意が感じられる
最後に重要なのが、事業に対する熱意です。
投資家は事業だけでなく、その事業を推進するチームや経営者、そして熱量に対して投資を行います。
そのため、「なぜこの事業に取り組むのか」「どのような想いでこの事業を進めているのか」といった思いが伝わる資料は、投資家の共感を得やすくなります。
人間は論理も重視しますが、最終的には感情で意思決定をする生き物です。
そのため、論理性とあわせて、情熱や覚悟が感じられるピッチ資料にすることが重要です。
投資家向けピッチ資料の作り方
ピッチ資料の構成や事例、良いピッチ資料に共通するポイントについて解説してきましたが、実際に投資家向けピッチ資料はどのような手順で作成すればよいのかも知っておく必要があります。
ピッチ資料は、いきなりパワーポイントを開いて作り始めると、内容がぶれてしまい、伝わりにくい資料になってしまいます。
そのため、まずはピッチの目的を考え、そこからストーリー・文章・デザインを順番に設計し、そのうえで見直して最終化するという工程が必要になってきます。
①ピッチの目的を考える
まず最初に考えるべきは、このピッチの目的です。
投資家向けピッチ資料といっても、シード期の資金調達なのか、シリーズA以降の成長資金なのか、あるいはコンテスト用なのかによって、求められる内容は大きく異なります。
また、相手となる投資家の属性によっても重視されるポイントは変わります。
ベンチャーキャピタルであれば成長性や事業規模、金融機関であれば収益性や安定性といったように、評価軸は一様ではありません。
そのため、「誰に対して、何を伝え、どのようなアクションを取ってもらうのか」を明確にすることが、ピッチ資料作成の出発点になります。
②ストーリーを設計する
目的が明確になったら、目的を達成するために最適な資料全体のストーリーを設計しましょう。
ピッチ資料はスライドの集合ではなく、全体として1つのストーリーで設計されていることが重要です。
例えば、ここまでも登場してきたように、まずは課題・解決策を語り、そのうえで市場や競合について説明し、最後に財務やチームなどの補足情報を盛り込むという構成を採用してもいいかもしれません。
目的に合致したスライド構成を考え、各スライドで何を述べるのかを一言で整理すると、全体ストーリーができあがります。
なお、この段階ではまだスライドを作成せず、紙やメモを使用し、スライド構成やメッセージを書き出すことがポイントです。
具体的な文章やデザインは分けてストーリーに集中して考えることで、余計な手戻りを防ぐことができます。
③文章を考える
ストーリーが固まったら、各スライドで伝える内容を文章として整理していきます。
この段階ではデザインを意識する必要はなく、「何を伝えるか」という文章に集中することが重要です。
ストーリー設計の段階で、各スライドに盛り込むべきメッセージは決まっているはずですので、そのメッセージを詳細に説明した文章を作成していくことになります。
なお、1スライドは1メッセージが原則です。
伝えたい情報が2つ以上になってしまう場合は、情報過多になっているため、スライドを分割する勇気が必要です。
④デザインを考える
文章が完成した段階で、やっとデザインを整えていきます。
フォント、色、レイアウトを統一し、余白を意識したシンプルなデザインにすることで、情報が整理され、理解しやすい資料になります。
また、図解やグラフを適切に使うことで、複雑な内容も直感的に伝えることができるでしょう。
ここでは、作成した文章を分かりやすく説明するためのデザインに限定して作業することが大切です。
文章とはまったく関係のない情報をデザイン段階で追加しても、投資家は混乱してしまいます。
⑤最終化する
最後に、資料全体を見直して最終化します。
この段階では、誤字脱字のチェックは言うまでもありませんが、ストーリーの流れや分かりやすさも確認することが重要です。
特に、初めて資料を見る投資家の視点に立って、「短時間で内容が理解できるか」「論理に飛躍がないか」「説得力があるか」といった観点でチェックを行いましょう。
可能であれば第三者にレビューしてもらうことで、自分では気づきにくい改善点を見つけることができます。
そして、ピッチ資料を作成した後は、徹底的にプレゼンの練習をするようにしてください。
資料だけでなく、プレゼンも含めて評価されることを意識しましょう。
ピッチ資料におけるよくある質問
さて、本記事の集大成として、ピッチ資料に関してよくお問い合わせいただく質問を、回答とセットでまとめておきました。
ここまで登場していない考え方もあるため、最後に一通り目を通しておきましょう。
投資家から評価されるコツは?
投資家から評価されるためには、良い内容の資料を作るだけでなく、その完成度を最後まで高め切ることが重要です。
特に、第三者レビューを受けること、プレゼンの練習をすること、そして資料を徹底的に見直すことの3つは欠かせません。
資料作成後のブラッシュアップまで丁寧に行うことが、投資家から高く評価されるための重要なポイントです。
投資家はどんな資料を評価する?
本記事でも何度も登場しましたが、投資家が特に気にするポイントは課題設定・市場性・競争優位性・収益性・将来性です。
そのため、これらの要素を網羅したピッチ資料に仕上げることが最低限必要でしょう。
そのうえで、「投資家の目線になっている」「事業に取り組む価値がある」「数字で語られている」「美しいデザインである」「熱意が感じられる」の5点セットも担保することができれば、プロフェッショナルなピッチ資料になるでしょう。
資料は何ページにすべき?
ピッチ資料のページ数は、一般的には10〜20枚程度が目安とされています。
短時間のピッチであれば10枚前後、詳細な説明を行う場合は20枚程度になることが多いです。
重要なのは枚数ではなく、必要な情報が過不足なく整理されているかどうかです。
プレゼン時間に対して内容が多くなりすぎる場合は、補足資料として分けることも検討すればよいでしょう。
ピッチの台本は暗記すべき?
台本を一言一句暗記する必要はありませんが、話の流れや伝える内容はしっかりと頭に入れておく必要があります。
プレゼンが苦手な方はすべて暗記してもよいですが、重要なのは、内容を理解したうえで自分の言葉で説明できる状態にしておくことです。
暗記に頼りすぎると、想定外の質問に対応できなくなる可能性があるため注意しましょう。
一般的なプレゼンとの違いは?
一般的なプレゼンは情報共有や提案が目的であるのに対し、ピッチは「投資してもらう」という大きな意思決定を促す点が異なります。
そのため、単なる説明ではなく、事業の価値や成長性を伝え、投資する理由を提示する必要があります。
より短時間で、かつ強い説得力が求められるのがピッチの特徴であり、そのようなピッチ資料に仕上げましょう。
ピッチではどんな失敗が多い?
よくある失敗としては、情報を詰め込みすぎて分かりにくくなること、ストーリーが整理されていないこと、数字による裏付けが不足していることなどが挙げられます。
他にも、自分の商品・サービスに熱中するあまり、投資家が知りたい情報が不足しているケースも多く見られます。
ピッチ資料はとにかく「投資家視点」を意識することが必要です。
ピッチデックとの違いは?
ピッチデックは、投資家向けピッチ資料とほぼ同じ意味で使われる言葉です。
特にスタートアップ業界では、ピッチ資料のことをピッチデックと呼ぶこともありますが、基本的には同義と捉えておけば問題ありません。
まとめ|投資家向けピッチ資料を作成しよう
本記事では、投資家向けピッチ資料の基本的な考え方から構成、事例、作り方までを一通り解説してきました。
投資家向けピッチ資料は、投資家に対して「この事業に投資したい」と思ってもらうための重要なコミュニケーション手段です。
そのためには、課題設定・市場性・競争優位性・収益性・将来性といった投資判断に必要な要素を押さえつつ、分かりやすいストーリーで伝えることが求められます。
また、資料の構成や内容だけでなく、数字による裏付けやデザインの完成度、そして事業に対する熱量も、評価を大きく左右する要素になります。
ピッチ資料は一度作って終わりではなく、第三者レビューやプレゼン練習を通して磨き込み続けることが重要です。
本記事でご紹介した事例や構成を参考にしながら、自社の事業やピッチの目的に応じて最適な資料を設計し、投資家に刺さるピッチ資料を完成させていきましょう。
ちなみに、「自分で資料を作るのは大変・・・」「プロの力を借りたい!」という方は、「Business Jungle資料作成」をご利用ください!1枚3,000円から、あっと驚く資料作成のお手伝いをさせていただきます。まずはお気軽にご相談くださいませ。

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