プレゼン資料は、話し手の勢いに頼らず、資料そのものが読み手を意思決定へ押し出すための役割があります。
会議での投影、メールでの事前共有、意思決定者が不在の場での回覧など、資料が一人歩きする場面は珍しくありません。だからこそ、結論から始まり、根拠で支え、次の行動を明確に示す「迷わせない順路」を最初から設計し、逆算して資料を作り上る必要があります。
本記事では、そうした順路を念頭に、ストーリー、表現、データ可視化、制作プロセス、レビューまでを一気通貫で解説します。プレゼン資料のテンプレートも用意しているので、ぜひご活用ください!
.png)
本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
はじめに:ダウンロード用テンプレート
まず初めに、そのままコピペして使える2種類のプレゼン資料テンプレートを用意しました。テンプレート内の文章を書き換えることで魅力的なプレゼン資料が出来上がります!
より良い資料作成の最初のステップはマネすること。本テンプレートをもとに、より良いプレゼン資料を作成してみてください。
プレゼン資料の目的
さて、テンプレートだけではなく、そもそものプレゼン資料の「あるべき姿」について理解することも極めて重要です。ここからは、そうした内容について解説していきます。
まず押さえておくべき大前提として、強いプレゼンは、情報の多寡ではなく「望む行動を起こさせたか」で評価されます。そのためには、承認、デモ実施、予算化、採用といったプレゼン資料の目的を最初に定義し、その目的に直結しない要素は削りとることが重要です。
こうした目的は、プレゼン資料の冒頭で読み手にも共有しておくと、プレゼン内容がスムーズに受け入れられます。もちろん、「〇〇という商品を購入していただく」のような直接的な表現は避けるべきですが、「〇〇という商品についてご理解いただき、購入有無を検討いただく」のような表現にしておけば、読み手もどのような観点でプレゼンを聞けばいいのかが分かり、プレゼン中のストレスがなくなります。
プレゼンは何かしらの目的があって実行するもの。どのようなタイミングであっても、必ず目的に立ち戻ってプレゼン資料を作成するようにしてください。

響くプレゼンのストーリー設計
響くプレゼンにはきちんとしたお作法があります。物語は結論から始め、背景と課題で惹き付け、解決策を提示して未来像で手触りを与え、最後に具体的な行動を明示します。
結論先出しは勇気が要りますが、読み手の注意は冒頭に集中するため、最初の数十秒で「何が決まると良いか」を言い切ることが、目的達成のための最短距離です。背景は事実の羅列ではなく、意思決定に必要な前提だけを抽出します。課題は「何が・どれだけ・なぜ困るか」を定量と因果で描きます。解決策は課題と一対一に結び、対応表が頭に浮かぶ並べ方にします。未来像では課題解決後の絵姿をワクワクする形で示します。
こうしたストーリー設計を守るだけで、読み手の迷いは激減し、説得は加速します。必ず守るようにしましょう。
本記事の上部で配布させていただいたテンプレートも、こうしたお作法を守っています。ぜひテンプレートも確認しながら、ストーリーを設計してください。

聴衆理解とメッセージ設計
同じ資料でも、経営、現場、情報システム、法務など、対手に応じて見るポイントが異なります。経営は事業インパクトと機会費用、現場は運用負荷と教育の手間、情報システムは安全性と互換性、法務は契約の明確さなどに注目します。
このような点を踏まえ、プレゼン資料を作成する際は聴衆の優先懸念を想定し、各懸念に答える一文を該当ページの見出しに仕込みます。このメッセージを読むだけで論旨が追える状態を作ることで、読み手が資料を詳細まで確認する手間が大きく削減され、非常に快適なプレゼンを受けることができます。
プレゼン資料を誰が聞くのか、そしてその相手に刺さる内容は何なのか。その内容をどのようなメッセージで端的に・分かりやすく伝えるか。これをプレゼン資料の隅ずみまで実践できるか否かで、プレゼン資料の品質は天と地ほど異なってきます。

正しいデザイン表現(フォント・配色・余白)
プレゼン資料は記載内容が正しくても、デザインが疎かであれば読み手はプレゼンを聞く気を失ってしまいます。
デザインの目的は飾ることではなく、理解速度を上げること。
フォントは読みやすいゴシック系に統一し、見出しは太く大きく、本文は読みやすいサイズ(小さすぎないサイズ)にします。行間は詰めすぎず、段落スペースは控えめにしてリズムを保ちます。配色はブランドカラーを軸に少数の補助色を添え、背景と文字のコントラストを十分に確保して視認性を確保します。強調は色だけに頼らず、サイズ、位置、余白の段差で表現すると視線が暴れません。余白は情報の「呼吸スペース」であり、意味のまとまりを示してくれるフレームです。
要素同士の距離をそろえ、見出しと本文、図と注記の関係を揃えるだけで、プロらしい一体感が生まれます。ポイントは情報を詰めすぎないこと。1スライド1メッセージの原則を守り、同メッセージに該当しない情報は思い切って別スライドに盛り込むような勇気が必要です。

美しいスライドのコツ:図表の使い方
プレゼン資料を作成する際は、図表を多用することもあるかと思いますので、それらを使用する際の注意点についても述べておきましょう。
図の目的は、読み手の思考時間を短縮することです。
差を見せたいなら棒、割合は円、推移は折れ線、関係は散布や帯といった相性を踏まえます。データ量は可能な限り絞り、軸と単位ははっきり大きく、凡例は近くに置きます。グラフから読み取れる結論を文章で書き、重要点は注釈で短く言い切ります。複数グラフを並べるときは、目盛りと単位を揃え、比較軸を固定することで、視線の往復を減らし理解を速めます。
表は並び順と桁の揃えだけで読みやすさが大きく変わります。
数字は右寄せ、小数点は揃え、比較したい列は隣に置きます。色で派手にしてもよいのですが、配置と余白で目立たせる方が視認性も信頼性も高まります。
図表の作成に際して気を付けておくべきは、統一感を持たせること。図表の色合いやフォントサイズ、文字の配置など、揃えられる部分はすべて統一するようにしましょう。

プレゼン資料の作成順序(前提→骨子→作成→リハーサル)
プレゼンの良し悪しは、作成順序で8割が決まります。
「前提」では、目的、聴衆、決めたいこと、根拠、次アクションをテキスト1枚程度にまとめ、順路と着地点を先に固定します。
「骨子」ではページごとに見出しを先に書き、メッセージは1~2行以内に抑え、どのような内容を記載したいのかを概要レベルで記載しておきます。
「作成」では具体的な文章を作りこんだうえでフォント、配色、体裁などを確認し、1スライド1スライドを丁寧に作りこんでいきます。
「リハーサル」では実際に声に出して通し、時間配分と引っかかる表現を修正します。質疑で深掘りされる論点は付録に整理し、本編は軽く保つのがコツです。
とにかく注意していただきたいのは、いきなりスライド作成に着手しないということです。前提や骨子を整理したうえで作りこんでいかなければ、「作ったものの必要ないスライド/よく分からないスライド」が量産されてしまいます。これではプレゼン資料作成に余計な時間を要し、その先にあるクライアントの行動を変えるという目的を達成するために必要な準備ができません。

見直しと第三者レビューも忘れずに
プレゼン資料を作成し終わると気が緩んでしまいますが、まだ気を引き締めておく必要があります。やはり重要になってくるのが自分で見直しすること、そして第三者レビューを受けることです。一度資料を作成し、冷静になったタイミングで見返してみると案外改善点がたくさん見つかります。油断せずに、必ず取り組むようにしましょう。
具体的には、3つの観点でチェックしていくと、改善度合いがググっと上がります。
第1に論理です。結論が冒頭にあり、各ページの見出しが結論を支えているかを確認します。
第2に表現です。見出しは分かりやすく、本文は冗長表現が削られ、図表が正しく使用されているかを見ます。
第3に視認性です。フォントと行間、余白と整列、色の使い過ぎやコントラスト不足がないかを俯瞰します。
そして、第三者レビューを依頼する際は、「この資料だけで意思決定できますか」と尋ねます。迷いが報告された箇所は、読み手の意思決定や行動にとっての足かせとなりますので、改善方法を検討のうえ資料に反映するようにしてください。

よくある失敗チェックリスト
さて、最後にプレゼン資料作成におけるよくある失敗を見ておきましょう。チェックリストとして使っていただければ、あなたのプレゼン資料をより一層素晴らしいものに引き上げてくれるはずです。
代表的な失敗は、「結論が最後まで出ない」、「情報を詰め込みすぎて論点が埋もれる」、「デザインがページごとに揺れて信頼を損なう」、「立場別の疑問に答えていない」、「次アクションが具体的でない」の5つに集約されます。自分がプレゼン資料を作ってみると、同じ間違いをしてしまいそうと感じると思います。
そのため、以下のような改善を講じる必要があります。
まずは冒頭で結論を言い切り、要点に関係しない情報を削り、見出しで主張を本文で短く根拠を述べ、図表を使用して伝えたいことを分かりやすく表現します。経営、現場、情報システム、法務など聞き手に応じた疑問・回答を示し、各スライドに埋め込んでいきます。最後に行動と期日、担当と連絡方法を具体的に書き、読み手が「次に何をすればよいか」で迷わない状態を作ります。
プレゼン資料を作成する際は、こうしたよくある失敗と改善策を頭に入れておき、最後の仕上げとして使っていただければと思います!

まとめ
プレゼン資料は、相手の理解を速め、意思決定を前に進めるためのツールです。
結論から始め、背景と課題で必然性を作り、解決策と未来像で期待を具体化し、最後に行動を明確にする。この順路をテンプレートとして内蔵し、表現を整え、段階的な作成とレビューで手戻りを減らす。こうした基本ルールを守っていただければ、あなたのプレゼン資料の品質を大きく向上させてくれます。
冒頭で共有させていただいたテンプレートを使用ながら、最短ルートで最高のプレゼン資料を作成してください!
ちなみに、「自分で資料を作るのは大変・・・」「プロの力を借りたい!」という方は、「Business Jungle資料作成」をご利用ください!1枚3,000円から、あっと驚く資料作成のお手伝いをさせていただきます。まずはお気軽にご相談くださいませ。
