PowerPoint(PPT)は、現代のビジネスや教育現場において最もよく使われるコミュニケーションツールの1つです。企画提案、営業プレゼン、社内報告、採用説明会など、あらゆる場面で「いかに相手に伝わるか」が成果を左右します。しかし、多くの人が直面する課題は「内容を詰め込みすぎて分かりにくくなる」「伝えたいことが整理されていない」「デザインが統一されず印象が薄い」といった点です。
本コラムでは、初心者でも今日から実践できる「分かりやすいPPTの作り方」を体系的に解説します。テーマは、誰が見ても理解できる資料です。デザインスキルよりも重要なのは、相手の理解を助ける構成力と視覚設計です。
全体は7つのステップで構成されています。まず「なぜ分かりやすさが重要なのか」を押さえた上で、目的設定・ストーリー構築・デザインの基本・図解活用・フォントや色の統一・話し方との連携まで、順を追って解説していきます。最後に、ありがちな失敗例と改善策も紹介します。
このコラムを読み終えるころには、情報をただ並べるだけの資料ではなく、伝える力を持ったPPTを自分で設計できるようになります。ビジネスでも教育でも使える、実践的な資料づくりの基礎を、ぜひ身につけてください!
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
なぜ分かりやすいPPTが大切なのか
わかりやすさとは、単に見やすいという意味ではありません。それは、相手が短時間で内容を理解し、次の行動に移れる状態を指します。
プレゼン資料の目的は情報を伝えることではなく、理解と共感を得ることです。相手が何を求めているのかを考え、それに沿った構成と表現を設計することが、結果的に伝わる資料を生み出します。
わかりやすいPPTには、3つの効果があります。
1つ目は記憶に残ることです。人間は文字よりもビジュアル情報を優先的に処理するため、構造が整理されたスライドは理解と記憶の両方を助けます。
2つ目は説得力が高まることです。整った資料は、話し手の論理性や信頼性を自然に高めます。
3つ目は話す側の自信を生むことです。整理されたスライドは思考を明確にし、プレゼンの流れを安定させます。
逆に、わかりにくいPPTは情報過多・配色の混乱・文字の多さなどで、聞き手の集中を奪います。人は最初の5秒で「理解できるか」を判断すると言われています。そのわずかな時間で混乱を感じた瞬間に、聴衆の関心は離れてしまいます。

Step1|目的と伝えたい相手を明確にする
最初のステップは「目的の明確化」と「相手理解」です。これを曖昧にしたまま資料を作り始めると、スライドの方向性が定まらず、情報が散漫になります。まず、この資料で相手に何をしてほしいのかを具体的に設定しましょう。
例えば、社内向けなら意思決定を促すこと、営業向けなら自社サービスの価値を理解してもらって商談を前進させること、採用向けなら共感を得て応募意欲を高めることが目的になります。目的が明確になると、自然と取捨選択ができ、スライド1枚ごとの意図がはっきりしてきます。
次に、相手がどのような立場で、どんな知識レベルを持っているかを分析します。経営者向けなら全体像を、現場担当者向けなら具体的なプロセスを重視します。相手の興味や課題感に合わせて情報量と語彙を調整することが、理解を深める鍵です。
さらに、最初のスライドで目的と要点を明示しましょう。冒頭で何を伝えたいか、この資料を通じてどうなってほしいかを示すだけで、受け手の集中が高まります。目的と対象を明確にしたPPTは、ブレのない説得力を生み出します。

Step2|ストーリー構成でメッセージを整理する
わかりやすいPPTは、ストーリーの流れに沿って構成されています。人は論理的な情報よりも、物語として整理された内容のほうが理解しやすく、記憶にも残りやすいものです。情報をただ並べるのではなく、どんな順序で伝えると最も納得感があるかを意識することが大切です。
ビジネス資料でよく使われる構成法は、PREP法(結論→理由→具体例→再結論)です。最初に結論を提示し、次に理由や根拠を示し、具体例で裏づけを行い、最後に再度結論を強調します。この流れを守ることで、相手は迷わず理解できます。
また提案書や企画書では、問題→原因→解決策→効果の順に構成すると効果的です。現状の課題を提示し、その原因を分析し、自社の提案によってどんな変化をもたらすのかを示すことで、自然な説得の流れが生まれます。
構成を考えるときは、いきなりPowerPointを開かず、紙やメモで全体の流れを可視化するのがコツです。章ごとの要点を箇条書きにして整理すれば、スライドの順序も決まりやすくなります。ストーリー構築とは、相手の理解を助ける設計図です。どんな資料にも、語る流れを与えることで、伝わる力は一気に高まります。

Step3|スライドデザインの基本ルールを押さえる
デザインとは、装飾ではなく情報伝達の手段です。見た目を整えるだけでなく、視線の流れを導き、理解をサポートすることが目的です。そのためには、デザインの基本原則を押さえる必要があります。
まず守るべきは「1スライド1メッセージ」。1枚に複数の情報を詰め込むと焦点がぼやけ、理解が追いつかなくなります。1枚につき伝えたい要点を1つに絞り、それを中心に構成を組み立てましょう。
次に、視線誘導の法則です。人の視線は左上から右下に流れるため、タイトル→メイン→補足の順に配置するのが効果的です。また、余白を恐れずに残すことで、情報に呼吸を与えられます。詰め込みすぎたスライドは、読まれる前に疲れを感じさせてしまいます。
フォントサイズは14pt以上を推奨します。小さな文字は可読性を下げるだけでなく、信頼感を損ねます。さらに、整列・間隔・色の一貫性を保つことで、全体の印象が安定します。スライドデザインの目的は、聞き手に考えさせずに理解させること。デザインは感覚ではなく、論理的なルールに基づく見せ方の技術と言えるかもしれません。

Step4|図解とビジュアルで理解を促す
人は視覚から得る情報のほうが圧倒的に早く、文章よりも記憶に残りやすい傾向があります。そのため、複雑な内容ほど図や画像を活用し、言葉だけでなく見て分かる構成に変えることが効果的です。
図解の手法には、フロー図、ピラミッド図、マトリクス図、ベン図などがあります。プロセスを見せたいならフロー図、全体像を示すならピラミッド、比較ならマトリクス、重なりを表すならベン図が適しています。伝えたい情報の種類に合わせて、最も理解しやすい形式を選びましょう。
画像やアイコンを使う際は、トーンと目的を統一します。感情を動かしたい場面では人物写真、概念を整理したい場面ではアイコンが有効です。ビジュアルは装飾ではなく、理解を助ける翻訳の役割を持ちます。
また、アニメーションの使い方にも注意が必要です。派手な動きは集中を妨げるため、要点を段階的に表示する程度に抑えましょう。図解とビジュアルの役割は、見る人の理解を導くことにあります。文章を視覚的に変換することで、伝わるスピードと記憶の定着率が大きく向上します。

Step5|フォント・色・レイアウトの統一で見やすさを高める
資料の印象を大きく左右するのが、フォントや配色、レイアウトの一貫性です。統一感のない資料は、内容が優れていても雑多な印象を与え、信頼性を損ないます。逆に、フォントと色をそろえるだけで、全体の完成度は一気に上がります。
フォントは基本的には1種類までにします。また、フォントサイズは階層に応じて明確に差をつけ、タイトル>見出し>本文の順に整理します。
色使いでは、ベースカラー・アクセントカラー・サブカラーの3色構成が最も安定します。背景が白の場合、文字は黒か濃いグレーが最も読みやすく、強調部分には青やオレンジを使用すると効果的です。特にアクセントカラーは、強調部分だけに使うことで視線誘導の役割を果たします。
レイアウトは整列と余白のルールを守ることが重要です。タイトルの位置、ロゴの位置、ページ番号などを統一することで、全体が落ち着きます。整った資料は、デザインスキルではなく、規律から生まれるものです。統一感があるスライドは、それだけで説得力を持ちます。

Step6|話し方とスライドの連携を意識する
プレゼンにおける主役は話し手であり、スライドは補助役です。どれだけ美しいPPTを作っても、話し方と連動していなければ伝わりません。スライドと発言を同期させることが、プレゼン全体の完成度を高める鍵です。
まず、スライドを読み上げないこと。スライドにはキーワードだけを残し、説明は自分の言葉で補足します。その方が自然で、聴衆の理解も深まります。1枚ごとに「伝えたい一言」を決め、それを中心に話を組み立てましょう。
次に、声のトーンと間の取り方を意識します。重要な箇所の前後で一呼吸おくと、聴き手に考える余白を与えられます。また、スピードに変化をつけることで、リズムと緊張感を作れます。
目線も大切です。スライドばかり見ず、聴衆の顔を見ることで信頼感が高まります。練習の段階でスライドの切り替えタイミングを体に覚えさせ、話の流れに一体感を持たせましょう。資料はあくまで語るための支えです。話し方とスライドが調和したとき、プレゼンは一段上の完成度に達します。

よくある失敗例とその改善ポイント
失敗例の多くは、情報過多・デザインの乱れ・論理の欠落の3つに集約されます。
1つ目の情報過多は、全てを伝えようとする姿勢が原因です。スライドは要点に絞り、詳細は口頭や別資料で補いましょう。
2つ目のデザインの乱れは、フォント・色・余白の不統一が原因です。テンプレートを統一するだけで印象は大きく変わります。
3つ目の論理の欠落は、結論と理由の対応が不明確なときに起こります。PREP法を使い、筋の通った流れを意識しましょう。
改善の鍵は、相手視点です。自分が理解できるかではなく、初めて見る人がどう感じるかを想像します。可能であれば、第三者に見てもらい、分かりにくい点を指摘してもらうことも有効です。資料は作り手の満足ではなく、相手の理解を目的に磨くべきものです。

まとめ
わかりやすいPPTを作るには、目的・構成・デザイン・表現・話し方の5つを一貫させることが欠かせません。特別なデザイン技術は不要です。重要なのは、相手の立場に立って「どうすれば理解しやすいか」を考える姿勢です。
1スライド1メッセージを徹底し、ストーリーで流れを作り、図解で視覚的に補強します。そして色とフォントを統一し、話す内容との一体感を意識します。これらの原則を守れば、誰でも伝わるPPTを作ることができます。
わかりやすい資料は、相手への配慮と誠実さの表れです。相手が迷わず理解できる構成を設計することこそ、伝わるプレゼンの本質です。今日からの資料づくりに、ぜひ取り入れてください!
ちなみに、「自分で資料を作るのは大変・・・」「プロの力を借りたい!」という方は、「Business Jungle資料作成」をご利用ください!1枚3,000円から、あっと驚く資料作成のお手伝いをさせていただきます。まずはお気軽にご相談くださいませ。

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