スタートアップピッチ資料の作り方完全ガイド|投資家が評価する構成とポイント

スタートアップピッチ資料の作り方完全ガイド|投資家が評価する構成とポイント

スタートアップが投資家と出会うとき、最初に見られるのはプロダクトよりもピッチ資料です。

事業の未来、市場の可能性、チームの熱量を数十枚のスライドにまとめ、数分のプレゼンで伝えなければなりません。だからこそ、資料の質がそのまま調達の結果を左右すると言っても過言ではありません。

投資家は膨大なピッチ資料を日々チェックしています。そのなかで一瞬で興味を奪い、理解を促し、未来を感じてもらわなければならない。ただ情報を詰め込むのではなく、読み手が自然とストーリーを追える構成と、説得力のある数字やデータが必要です。

ピッチ資料をつくる過程では、スタートアップ自身が事業の輪郭を改めて言語化し、矛盾をなくし、強みや弱点を整理できます。チーム間の認識が揃い、これまで曖昧だった方針が整理されることも多く、資料作成自体が事業のブラッシュアップにつながります。

本コラムでは、ピッチ資料の役割、投資家が何を見ているのか、そして投資家から信頼を得るためのスライド構成まで、実践的なポイントをまとめて解説します。ピッチ資料に悩んでいるスタートアップや、これから初めて資金調達に挑む方に役立つ内容に仕上げています。

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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。

スタートアップピッチ資料の役割

ピッチ資料は、スタートアップと投資家が初めて向き合うための入口です。短い時間で企業の全体像を掴んでもらう必要があり、伝わりやすさが何より優先されます。読みやすい資料であれば、それだけで誠実さや準備力が伝わり、次の会話へつながりやすくなります。

まず、ピッチ資料が持つ3つの重要な役割について見ておきましょう。

ひとつは、事業の魅力を簡潔に伝える役割です。そのためにも、ミッション、市場、課題、プロダクト、収益構造、チームの強みなど、事業を評価するための情報を整理し、投資家が全体像をつかみやすい構成にまとめましょう。

もう一つは、事業に対する期待値を高めることです。市場の伸び、プロダクトの独自性、ユーザーの反応、チームの熱量など、成長の兆しが感じられるほど、投資家は次のステップに進みやすくなります。

そして、対話の起点をつくること。ピッチ資料は、すべてを語り尽くす必要はありません。むしろ、投資家が知りたいことを自然に引き出し、「話を聞いてみたい」と思わせることこそ、資料の本来の役割です。

投資家がピッチ資料で評価するポイント

投資家は、資料に書かれている情報をただ読むだけではありません。事業の本質、伸びしろ、チームの実行力、数字の裏側など、さまざまな観点からスタートアップそのものを評価しています。

まず目が向くのは、取り組んでいる課題の大きさです。ユーザーが日常の中で抱えているストレス、業界に根強く存在する非効率、見過ごされがちな社会課題など、課題の深さは事業の意義や市場規模にも直結します。実際のユーザーの声があれば一層説得力が増します。

市場の成長性も重視されます。スタートアップ投資は未来への投資であるため、今後伸びる領域であるかどうかは非常に大きなポイントです。市場が伸びている背景や、なぜ今このタイミングで勝ち筋があるのかまで示されていると、投資家の理解が一段と深まります。

競争環境の中で、どこに優位性があるかも重要です。特許、技術力、UX、スピード、価格、営業チャネル、コミュニティなど、強みは企業によって異なりますが、自社が戦える理由が明確であるほど信頼を得やすくなります。

チームの実行力も欠かせません。どれだけ優れたプロダクトでも、実行しなければ事業は前に進みません。メンバーの経歴や専門性だけでなく、事業に向き合う姿勢、これまでの実行の速さなども評価の対象になります。

さらに、数字の信頼性が重要です。初期段階の数字は小さくても構いませんが、伸びている兆しや、ユーザーが強く支持している証拠があるかどうかが、投資家の判断を大きく左右します。

ここまでで、スタートアップピッチ資料の基本的なお作法は見えてきましたが、具体的にどのような要素を盛り込んでいけばいいのでしょうか。次章から詳しく見ていきましょう。

スライド構成1:ミッション・世界観

最初のスライドは、企業の方向性を示す大切な位置づけです。ミッションは抽象的な表現になりがちですが、なぜこの事業に挑んでいるのか、どんな未来を実現したいのかが読み手に伝わることが重要です。

ミッションの裏にあるストーリーや、創業時の背景、現場で見た課題などが添えられていると、投資家は企業の姿勢に強く共感しやすくなります。言葉の強さだけでなく、企業の真剣さが伝わるかどうかがポイントです。

スライド構成2:プロダクト・ソリューション

プロダクトの紹介では、機能の羅列ではなく、ユーザーの課題がどのように解決されるかを中心に説明することが大切です。利用シーンを描いたり、実際のユーザーの変化を示したりすると、価値がイメージしやすくなります。

プロダクトの画面、動き、利用フローを図にまとめると、文章よりも素早く理解できます。競合との差異や、独自技術、こだわった体験設計なども、自然な流れの中で伝えられると効果的です。

スライド構成3:市場規模と成長性

スタートアップの未来を評価するうえで、市場規模が大きいかどうかは避けて通れません。市場の大きさだけでなく、市場が拡大している理由や社会的背景まで説明されている資料は、投資家にとって深い理解につながります。

TAM、SAM、SOMの整理があると、狙っている市場が明確になります。また、ユーザーの行動変化や国の政策、産業構造の変化などが入っていると、なぜ今この事業にチャンスがあるのかがより鮮明に伝わります。

スライド構成4:課題と提供価値

ユーザーの課題がどれだけ深刻で、どれだけ頻度高く発生しているかを示すことも重要です。課題が深いほど、プロダクトの価値は高まります。

ユーザーインタビューの声や、生活や業務で起きている問題の具体例があると、投資家は課題のリアリティを感じやすくなります。その課題に対して、自社のプロダクトがどのように価値を提供するかを自然な流れで示します。

スライド構成5:競合と優位性

競争環境を正確に把握している企業は信頼されます。競合を必要以上に排除しようとする資料よりも、正しく分析し、自社の優位性を冷静に示す資料のほうが投資家には好印象です。

競合との比較では、スペックだけではなく、体験、価格、ターゲット、導入障壁、顧客との関係性など複数の角度から見ることが大切です。どこで勝つのかが明確な資料は、それだけで事業の方向性が理解しやすくなります。

スライド構成6:ビジネスモデル

収益構造をシンプルに表すことを意識します。料金体系、収益ポイント、リピート性、スケーラビリティなどが伝わっていれば、投資家はビジネスの健全性を判断しやすくなります。

顧客獲得コストと顧客生涯価値を絡めた説明があると、よりプロフェッショナルな印象を与えます。数字がまだ揃っていない段階であっても、どのような収益モデルを目指しているのかが明確だと、将来の成長がイメージしやすくなります。

スライド構成7:トラクション・実績

どのスタートアップも、成長の手応えがあるかどうかを見せることが重要です。売上、ユーザー数、リテンション、口コミ、導入企業数など、数字で語れるものがあるほど説得力は高まります。

初期段階で数字が小さい場合は、伸び率や利用者の熱量が伝わるエピソードを添えることで補完できます。グラフを使いながら直感的に理解できる資料にすることがポイントです。

スライド構成8:ロードマップ

事業をどのように成長させるのか、未来に向けた計画を示します。短期の改善施策から、中期の組織づくり、長期の市場拡大まで、企業によってアプローチは異なりますが、現実味のある計画が描かれているかが重要です。

投資家は、未来のストーリーに共感できる企業に投資します。ロードマップは、そのストーリーを見える形にしたものです。

スライド構成9:チーム紹介

スタートアップが成功するかどうかは、最終的にはチームが決めます。どれだけ優れたアイデアでも、実行されなければ形になりません。

どんな経験を持ったメンバーが集まり、どんな役割分担で動いているのか、なぜこのチームで挑戦しているのかなど、背景のニュアンスが伝わる紹介が理想的です。人柄や価値観が伝わる紹介は、資料全体の印象も大きく変えます。

スライド構成10:調達金額と使途

資金がどのように事業成長に変換されるのかを示します。採用、開発、マーケティング、プロダクト改善など、使途が明確であるほど投資家は安心して判断できます。

使途の説明が抽象的だと不安材料になりますが、具体的な施策とそれに伴う効果が説明されている資料は評価が高くなります。

投資家に刺さるピッチ資料の共通点

魅力的なピッチ資料には、どの企業にも共通する一貫性があります。

複数の要素がきれいに整合しており、読み進めるほど理解が深まり、いつの間にかスタートアップの描く未来に引き込まれていくような構成になっています。情報が豊富であっても過剰に感じさせず、重要な論点はすっと頭に入り、背景の説明や数字の根拠にも無理がありません。文章や図解が丁寧に整理され、余白や視線誘導の工夫も自然で、読み手が迷わず理解できるよう設計されています。

また、良い資料ほどストーリーに無理がありません。

課題から価値提供へ、価値提供から市場へ、そして競争環境や実績へと流れる一連のストーリーが滑らかで、投資家は抵抗感なく事業の全体像をつかむことができます。数字の扱い方も巧みで、大きな数値だけでなく、その裏側にある理由や背景まで丁寧に補足されているため、事業の健全性や成長の兆しを読み取ることができます。

そして投資家は、資料を通して「この企業と未来を描けるか」を見極めています。

事業の可能性、プロダクトの独自性や強さ、チームの熱量や実行力、そして数字の信頼性が自然と伝わってくる資料は、それだけで印象が大きく変わります。読み終えたあとに記憶に残る資料には、単なる情報以上の空気感や信念が感じられ、投資家がもう一度会話したくなる理由が明確に存在します。資料自体が企業の姿勢を映す鏡になっているため、誠実さや準備力が感じられるピッチ資料は、投資家の心を動かしやすくなります。

ピッチ資料の作り方ステップ

最後に、ここまでで紹介したピッチ資料を手にするためのステップも見ておきましょう。
ピッチ資料づくりは、事業の棚卸し作業でもあります。情報をそのまま並べても投資家には伝わりにくく、伝える順番や構成を丁寧に考えることで、資料の理解度は大きく変わります。

最初に取り組むべきなのは、投資家にどんな印象を持ってもらいたいかを整理することです。強みにしたいポイント、伝えたい世界観、事業の裏にあるストーリーなどを一度書き出してみると、資料全体の方向性が整いやすくなります。

次の段階では、資料の流れを決めていきます。課題から価値提供につなげるのか、プロダクトから事業の世界観を説明するのか、スタートアップによって最適な構成は異なりますが、読み手に負担をかけない順番が大切です。

その後、市場データ、顧客の声、利用実績など、信頼性を裏付ける材料を集めていきます。数字が弱い部分があれば、なぜその数字になっているのかを丁寧に言語化することで、資料の説得力は大きく変わります。

スライド作成に入ったら、1ページの中に複数の話題を詰め込みすぎず、視覚的に理解しやすい構成を心がけます。図解やグラフを活用しながら、余白を確保することで読み手の負担が軽減されます。

最後に、第三者にレビューしてもらいます。自分たちでは見えない違和感が明らかになり、ストーリーラインの弱い部分や説明不足の部分を改善できます。

まとめ

スタートアップピッチ資料は、事業の未来を伝えるプレゼンテーションであり、投資家と出会うための大切なツールです。資料の構成、数字、ストーリー、デザインのすべてが信頼につながります。

今回紹介した考え方やスライド構成を参考に、自社の強みや未来をしっかり言語化し、事業の魅力を最大限に伝えられる資料を目指してください。ピッチ資料は一度つくって終わりではなく、磨けば磨くほど強くなります。

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