スタートアップや新規事業の文脈で、近年よく耳にするようになったのがピッチブック(pitchbook)という言葉です。
これは投資家や金融機関からの資金調達や、ビジネスコンテストなどの場面で活用されることが多く、事業の内容や将来性・実現可能性などを短時間で伝えるための重要な資料です。
一方で、そもそもピッチブックについてよく分からない、何を書けばよいのか判断できないといった悩みを抱える方も少なくありません。
本記事では、ピッチブックの意味や作成目的、基本構成から日本企業の事例、作り方や注意点までを体系的に整理し、実務で使える知識として分かりやすく解説します。
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
ピッチブック(pitchbook)とは
ピッチブック(pitchbook)とは、事業内容や成長戦略を第三者に伝えるための説明資料です。
主に投資家や金融機関、審査員などを対象とし、事業の魅力や将来性を短時間で理解してもらうことを目的としています。
パワーポイントのスライド形式で作成されることが多く、口頭説明と組み合わせて使われる場合もあれば、資料単体で読まれることを前提に作られる場合もあります。
事業の全体像を簡潔にまとめつつ、判断に必要な情報を過不足なく盛り込む点が特徴です。
なお、似たような概念にピッチデッキやピッチ資料などがありますが、基本的にはピッチブック(pitchbook)と同義で使用されています。

ピッチブックの作成目的
ピッチブックの作成目的は、「第三者の協力を得るため」と「事業成長のヒントを得るため」の2つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
目的①:第三者の協力を得るため
ピッチブックの主な目的は、第三者に事業の魅力や将来性を短時間で理解してもらい、融資や出資などの協力を得ることです。
投資家や金融機関、審査員などは限られた時間の中で複数の案件を判断するため、事業の全体像や成長可能性を端的かつ論理的に伝える資料が求められます。
ピッチブックは、第三者が用意した大勢向けのプレゼンや、1対1の直接面談の場において、事業の価値を効率よく伝え、第三者の「協力すべきか」という意思決定を後押しするための重要な役割を担います。
目的②:事業成長のヒントを得るため
一方で、ピッチブックには副次的な目的もあります。それは、自分自身が事業内容を整理し、事業をどのように成長させていくかを見つけるための思考整理の資料として作成するという点です。
課題や解決策、自社戦略について整理することで、事業の方向性や改善点が明確になります。この点では、ピッチブックは事業計画書に近い役割を持つと言えるでしょう。
ただし、事業計画書が内部利用や詳細説明を前提とするのに対し、ピッチブックはそれを外部向けに再構成し、第三者が短時間で理解できる形にまとめ直したものという位置付けになります。

ピッチブックの基本構成
ピッチブックは、事業の魅力や将来性を短時間で第三者に理解してもらうための資料であるため、情報の網羅性と分かりやすさの両立が求められます。
そのため、単に思いついた内容を並べるのではなく、課題の提示から解決策、ビジネスモデルや市場性・競合性など、一貫したストーリーに基づいて構成することが重要です。
ピッチブックに決まりきった型はありませんが、以下のような要素を盛り込むことで、誰でも簡単に理解できるストーリーが出来上がるはずです。以下の要素を基本として、自社の状況に応じたアレンジを加えていきましょう。
表紙
表紙は、事業名やサービス名、簡潔なキャッチコピーなどを通じて、事業の方向性を直感的に伝える役割を持ちます。
最初に目に入るページであるため、何をする事業なのかが一目で分かる表現を心がけましょう。デザインは過度に凝りすぎず、事業の世界観や信頼感が伝わる内容にすることが大切です。
エグゼクティブサマリ
エグゼクティブサマリは、ピッチブック全体の要点をまとめた概要ページです。
課題、解決策、市場性・競合などを簡潔に整理し、時間のない相手が短時間で事業の全体像を把握できるようにします。ここを読んだだけで、事業の魅力が伝わる内容を意識しましょう。
課題
課題のパートでは、顧客や社会が抱えている問題を明確に示します。
主観的な意見だけでなく、具体例や背景を交えながら、なぜその課題が重要なのかを説明することが求められます。課題の解像度が低いと、後続の解決策やビジネスモデルの説得力も弱くなってしまいます。
解決策(製品・サービス)
解決策では、提示した課題に対してどのような製品やサービスを提供するのかを説明します。
機能の紹介に終始するのではなく、どの点が課題解決につながるのかを明確にすることが重要です。
ビジネスモデル
ビジネスモデルでは、どのように収益を生み出すのかを説明します。
誰が顧客で、何に対して対価を支払うのかを明確にすることで、事業として成立するかどうかを判断してもらいやすくなります。収益源が複数ある場合は、それぞれの優先順位なども整理しましょう。
市場分析(規模・成長性)
市場分析では、対象とする市場の規模や将来の成長性を示します。
市場が十分に大きいか、今後拡大が見込めるかは、事業の成長可能性を判断する重要な要素です。自分の思いこみではなく、根拠となるデータや前提条件を簡潔に示すことで、信頼性を高めるようにしてください。
競合分析(差別化戦略)
競合分析では、同様の課題を解決している既存商品・サービスを整理し、自社との違いを明確にします。
価格、機能、提供価値など、どの点で自社に優位性があるのかを示すことで、競争環境の中での立ち位置・勝ち筋を理解してもらうことができます。
チーム体制
チーム体制では、事業を推進するメンバーの経歴や役割、強みを紹介します。
どのような経験やスキルを持つメンバーが関わっているのかを示すことで、事業を実行できる体制が整っていることを示すことができます。スタートアップの場合は特に、人に対する信頼が事業評価に大きく影響します。
実績
実績のパートでは、これまでに得られた成果について整理します。
売上、利用者数、導入事例など、可能な限り数字を用いて示すことで、事業が机上の空論ではないことを証明します。小さな実績であっても、「このまま進めば大丈夫そう」と思ってもらうことが重要です。
活動計画
活動計画では、今後どのようなステップで事業を成長させていくのかを示します。
短期・中期・長期の目標を整理し、実行可能なロードマップとして提示することで、事業を段階的に発展させていくことを伝えます。一足飛びではなく、現実的な計画であればあるほど、評価してもらえます。
財務計画
財務計画では、売上や費用、利益の見込みを整理します。
数字そのものだけでなく、どのような前提で算出しているのかを説明することが重要です。過度に楽観的な数値は避け、統計情報などを用いて現実的な数値を示すことが信頼につながります。
資金調達の金額・用途
資金調達の金額と用途では、必要な資金規模とその使い道を明確にします。
なぜその金額が必要なのか、どの領域に投資することで成長につながるのかを説明することで、資金提供側が提供する意義を判断しやすくなります。なお、資金調達を目的としない場合、本スライドは盛り込む必要はないでしょう。
まとめ・メッセージ
まとめ・メッセージでは、ピッチブック全体の要点を簡潔に振り返ります。
事業の魅力や目指す方向性を再確認し、読み手に強く印象付ける役割を持ちます。感情に訴えつつも、事業としてこれまで説明してきた内容との一貫性を意識した表現が効果的です。
裏表紙
裏表紙には、ロゴや目指す姿、会社名や連絡先などの基本情報を記載します。
資料の終わりを伝える役割、資料を確認した相手に次のアクション(問い合わせ・連絡など)を行ってもらうための役割があります。

ピッチブックの日本企業の事例
ここまでで、ピッチブックに関する基本的な考え方はご理解いただけたと思いますが、まだまだ具体的なイメージがわかないかもしれません。
そのため、本章では日本企業のピッチブック事例を3つご紹介させていただきます。より一層、ピッチブックの中身が見えてくるはずです。
日本企業のピッチブック①:Business Jungle
スタートアップの立ち上げから成長までを支援するBusiness Jungleのピッチブックは、資料単体でも事業全体が詳細に把握できる構成が特徴です。市場や競合、自社戦略、数値計画までを整理し、フレームワークを用いて自社戦略を分かりやすく体系化しています。
日本企業のピッチブック②:自治コン
自治体向けにビジネスコンテスト運営を支援する自治コンのピッチブックは、課題提起から事業成立の流れをストーリーとして整理しています。審査基準との対応関係をスライド上で明示しており、評価視点を強く意識した設計が印象的です。
日本企業のピッチブック③:Wellbeing Lab
AI×ヘルスケアの健康管理サービスを提供するWellbeing Labのピッチブックは、課題設定から解決策、市場性、組織体制までを王道の順序で構成しています。創業初期ならではの実績不足を踏まえ、チームや資金計画を丁寧に示すことで、事業の信頼性を高めています。
ピッチブックの作り方
日本企業におけるピッチブックの事例を見て、より具体的なイメージもできてきたかと思いますので、ここでピッチブックの作り方を整理しておきましょう。
まずピッチブックを作成する際は、最初からスライドを作り始めるのではなく、構成・ストーリーを文章で整理することが重要です。ピッチブックの目次を洗い出したうえで、2~3分で読めるほどの文章に落とし込みます。
次に、その構成・ストーリーをもとに、各スライドに記載する文章を作り込んでいきます。この段階ではデザインには手を付けずに記載内容のみに集中することで、デザイン先行で作成した場合と比較して、手戻りを大きく減らすことができます。
最後に、整理した内容を各スライドのデザインに落とし込み、視覚的に理解しやすい形に整えていきます。ピッチブックは情報量が多くなりやすいため、1枚あたりの情報を絞りつつ、構造的で統一感のあるデザインに仕上げることが大切です。
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ピッチブック作成時の注意点
ピッチブックは、事業内容を分かりやすくまとめればよいという資料ではありません。
読み手は投資家や金融機関など、日常的に多くの案件を比較・判断している第三者です。作成者の思いや熱量だけで評価されることはなく、事業として成立するか、将来性があるかを冷静に見極められます。
その前提を理解したうえで、視点・数字・伝え方の3点を意識して作成することが重要です。
投資家・金融機関の視点に立って作成する
ピッチブックは、自分が伝えたい内容ではなく、相手が知りたい内容を中心に構成する必要があります。
投資家や金融機関は、事業の面白さ以上に、継続性や成長可能性、リスクをどう捉えているかを見ています。自社の立場だけで説明するのではなく、第三者がどの情報をもとに判断するのかを常に意識しましょう。
徹底的に数字で事業を語る
事業の魅力や可能性を言葉だけで説明しても、説得力は高まりません。
市場規模、売上見込み、成長率、費用構造など、可能な限り数字で示すことが重要です。特に、ピッチブックの読み手は数字を重視する人ばかりです。数字で語らないピッチブックに対して、読み手は何の関心も持ちません。
ピッチブックの作成時にもプレゼンを意識する
ピッチブックは資料単体で読まれる場合もありますが、多くの場面ではプレゼンと併用されます。
そのため、ピッチブックを作成する際は、自分自身がプレゼンに対応できるかということを常に意識しましょう。口に出して説明してみると、意外にも資料の欠陥が見つかるものです。

まとめ
ピッチブック(pitchbook)は、事業の魅力や将来性を短時間で第三者に伝えるための重要な資料です。
資金調達やビジネスコンテストといった外部向けの場面で活用される一方、事業内容を整理し、成長の方向性を明確にするための思考整理の役割も担ってくれます。
基本構成や作成手順、注意点を押さえたうえで作成すれば、事業の説得力は大きく高まります。本記事で解説した考え方や事例を参考にしながら、自社の状況や目的に合ったピッチブックを作成し、事業成長や次のチャンスにつなげていきましょう。
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