PowerPoint(PPT)は、ビジネスにおける最も身近で重要なコミュニケーションツールです。プレゼン、営業提案、社内報告、研修資料など、あらゆる場面で使われています。
ところが、実際には多くの人が「伝わりにくい」「読みにくい」「印象に残らない」スライドを作ってしまいがちです。原因は、内容の問題ではなく、構成やデザイン、情報整理の仕方にあります。
PPTの見やすさは、第一印象を決定づける要素です。人は資料の中身を読む前に、全体のレイアウトや配色、余白、フォントなどの視覚的要素から印象を受け取ります。たとえ優れた内容でも、見づらいスライドでは理解されず、記憶にも残りません。逆に、整理された構成と統一感のあるデザインは、聞き手に安心感と信頼を与えてくれます。
このコラムでは、初心者でも実践できる「PPTを見やすくする作り方」を6つのステップで紹介します。目的の明確化から構成の整理、フォントや配色の統一、図解活用までを体系的に解説し、最後に改善のチェックポイントもまとめます。短時間でも意識を変えるだけで、あなたのスライドは確実に伝わる資料に進化します!
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
見やすいPPTとは何か|伝わるスライドの共通点
見やすいPPTとは、スライドを一目見た瞬間に内容が直感的に理解できる資料のことです。文字を読まなくても、全体の流れやメッセージの方向性が分かる状態が理想です。そして、見やすいスライドにはいくつかの共通点があります。
1つ目は、情報の優先順位が整理されていることです。重要なメッセージが中央や上部に配置され、補足情報が下部に配置されている資料は、視線の流れが自然で理解しやすい傾向にあります。逆に、あちこちに情報が散らばっている資料は、聞き手に混乱を与えます。
2つ目は、構成が明快であることです。良い資料は1枚ごとに役割が決まっています。導入、課題、分析、解決策、結論という流れが整っているスライドは、話の筋が通りやすく、内容が頭に入りやすくなります。
3つ目は、デザインの統一感です。フォント、配色、図形のスタイル、余白の取り方が統一されているスライドは、視覚的な秩序を生みます。統一感があるだけで、見た目の印象が格段に良くなり、内容への信頼性も高まります。
そして4つ目は、文字量が適切であることです。文字が多いスライドは読む気を失わせます。スライドは説明文を載せる場所ではなく、聞き手の理解を支援するビジュアルです。1枚あたりの文字数を減らすことで、視線の動線が整理され、見やすさが向上します。
見やすいPPTは、情報量の多さではなく、整理の巧みさで勝負します。内容を詰め込むのではなく、必要な要素だけを残し、聞き手の理解をデザインすることが本質的な「見やすさ」と言うことができます。

ステップ1:目的とメッセージを明確にする
PPTを作る最初の段階で最も重要なのは、目的とメッセージを明確にすることです。目的があいまいなままスライドを作り始めると、情報が散らかり、結果として伝わらない資料になります。
まず、「この資料で何を達成したいのか」を一文で言えるようにしてください。たとえば、「上司に進捗を報告する」「顧客に提案内容を理解してもらう」「チーム内で方向性を共有する」といった具体的な目的を設定します。目的が明確であれば、スライドに入れる情報の基準も明確になります。
次に、各スライドごとに「このページで何を伝えたいか」を一言でまとめましょう。これがスライドタイトルになります。例えば「市場動向」ではなく「市場は前年比120%で拡大中」と書く方が、見た瞬間に意味が伝わります。
目的とメッセージを整理すると、構成が自然に整理され、不要な情報が削ぎ落とされます。結果として、内容が明確で見やすいスライドになります。PPTの見やすさは、デザインではなく情報整理の段階で8割が決まります。

ステップ2:1スライド1メッセージを徹底する
伝わるスライドの基本原則は「1スライド1メッセージ」です。1枚に複数の主張を詰め込むと、焦点がぼやけてしまいます。見やすいPPTを作るためには、スライドごとに伝えたい内容を明確にし、それ以外の情報を思い切って省くことが重要です。
まずは、1ページにつき1つの主張を明確にします。もし1ページで2つ以上の話題を扱っている場合は、スライドを分割して構成し直すべきです。短くシンプルなスライドを連続させる方が、全体の理解はスムーズになります。
1スライド1メッセージを徹底することで、文字量が減り、余白が増えます。この余白は単なる空白ではなく、理解をサポートしてくれる戦略です。聞き手が考える時間を持てる資料は、結果的に印象に残ります。

ステップ3:構成を整理してストーリーにする
スライドは単なる情報の集合ではなく、聞き手にストーリーとして伝わる構造でなければなりません。構成を整理することは、見やすいPPTを作るうえで最も効果的な手段です。
全体を「導入 → 課題 → 解決策 → 根拠 → 結論」という流れで整理すると、自然な理解の流れが生まれます。この順番は人の思考プロセスに沿っており、聞き手が違和感なく内容を受け取れる構成です。
スライドの順番を並べ替えるだけでも、印象は大きく変わります。最初に問題提起を示し、次に原因やデータを説明し、最後に解決策を提示することで、説得力のある資料になります。
構成の整理では、スライドタイトルの流れを声に出して読むのが効果的です。タイトルだけを連続して読んだときに一貫したストーリーとして成立していれば、聞き手も迷いません。

ステップ4:文字量を減らし、視線の流れを整える
PPTを見やすくするための即効性のある方法が、文字量を減らすことです。多くの人が「説明を省くと誤解されるのでは」と考えて文章を詰め込みますが、実際は逆です。文字が多いと、理解よりも読む作業に意識が奪われ、内容が頭に入らなくなります。
文章はできるだけ短くし、動詞や数字を活用して簡潔にまとめます。また、行間を広く取り、1行あたりの文字数を減らすことで、視線の負担が軽くなります。
視線の流れも意識しましょう。人の目は左上から右下へ自然に動くため、その方向に沿って情報を配置すると、無意識のうちに理解が進みます。重要な要素は中央または右下に配置すると印象に残りやすくなります。
文字量を減らし、視線の流れを設計したスライドは、見やすさと理解度の両方を高めます。

ステップ5:配色・フォント・レイアウトを統一する
デザインの統一は、PPTの見やすさを大きく左右します。配色、フォント、レイアウトを統一するだけで、資料全体の印象が整い、信頼性が高まります。
配色はベースカラー1色、アクセントカラー1〜2色に絞りましょう。白背景×ブルー系はビジネスシーンに適しており、黒背景×オレンジなどは強調資料に効果的です。色数が増えると焦点が分散し、統一感が失われます。
フォントは1種類以内に統一します。そのうえでタイトル28pt以上、本文14pt前後を目安にすると、投影時にも読みやすくなります。
レイアウトは余白を意識し、要素を整列させましょう。左揃えを基本とし、テキストや画像の位置を一定に保つことで、安定した印象を与えます。

ステップ6:図解や写真で視覚的に理解を促す
人は文字よりも画像の方が圧倒的に早く情報を処理します。そのため、図解や写真を使うことで、理解を加速させることができます。
グラフやチャートは色数を抑え、強調したいデータだけを目立たせます。写真を使う場合は、意味のあるものを選びましょう。雰囲気ではなく、内容を補強する写真を配置することで、資料の説得力が上がります。
また、アイコンを活用するのも効果的です。単調な文章を視覚的に分解できるため、情報を整理しながら印象を残せます。
図解や写真を取り入れることで、スライドの可読性と理解スピードが同時に向上します。

より良い資料を作るためのチェックポイント5選
PPTを改善しても、最終的に「この資料は本当に伝わるだろうか」と不安に感じることは少なくありません。完成度を高めるためには、仕上げの段階で客観的にチェックすることが欠かせません。ここでは、見やすく分かりやすい資料を作るための5つのチェックポイントを紹介します。
1つ目のポイントは「1スライド1メッセージになっているか」です。スライドごとに主張を1つに絞ることで、焦点がぶれず、聞き手が理解しやすくなります。もし複数の主張が混ざっている場合は、スライドを分けるか、内容を再整理しましょう。タイトルを読んだだけで内容が分かるかどうかを基準にするのも有効です。
2つ目は「情報量が多すぎないか」です。読み手が一度に理解できる情報は限られています。スライドを見た瞬間に全体が把握できるレベルが理想です。余分な文章を削り、数字やキーワードで要点を整理しましょう。視覚的に詰まりすぎていると感じたら、情報を半分に減らすつもりで見直すと、驚くほどスッキリします。
3つ目は「構成に一貫した流れがあるか」です。スライドを順番に読んで、自然にストーリーがつながるかを確認します。導入→課題→解決→結果→次のアクションという流れが成立していれば、論理的で理解されやすい資料になります。もし途中で話が飛ぶ感覚があるなら、スライドの順序を並び替えるか、接続スライドを追加して流れを補強しましょう。
4つ目のチェックポイントは「デザインの統一性」です。フォント、配色、図形の形、余白の取り方などに一貫性があるかを確認します。資料全体に統一感があるだけで、見やすさと信頼感が格段に向上します。フォントは2種類以内、色はベース1色+アクセント1〜2色が基本です。文字サイズや行間をそろえることで、視覚的な安定感が生まれます。
5つ目は「第三者の視点で理解できるか」です。作り手にとって分かりやすい資料でも、初めて見る人には難しいことがあります。完成後に同僚や友人などに見てもらい、どこで迷うかを確認しましょう。外部の視点から得られるフィードバックは、自分では気づけない改善点を見つける最短ルートです。
これらの5つのチェックを行うことで、資料の完成度は大きく変わります。PPTの見やすさは、作る過程よりも「仕上げの確認」で決まると言っても過言ではありません。短時間でも意識的にチェックする習慣を持つことで、PowerPoint資料はより洗練され、説得力のあるコミュニケーションツールへと進化します。

まとめ|見やすさは整理と意図で決まる
PPTを見やすくするコツは、センスではなく整理と意図にあります。情報を選び、構成を整え、デザインを統一することで、誰でもわかりやすく伝わる資料を作ることができます。 見やすい資料は、相手に信頼感を与え、説得力を高めます。今日から詰め込むのではなく、整理することを意識して、あなたのスライドを改善してみてください!
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