本コラムでは、初めて研修資料を作成する人や、既存資料を改善したい教育担当者に向けて、目的の明確化から構成設計、内容づくり、伝え方、デザイン、そして成功事例までを体系的に解説します。
社員が自ら考え、動き出す研修を実現するために、資料設計の本質を具体的に掘り下げていきますので、ぜひ最後までご覧ください!
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や資料作成に関する豊富な経験を有する。
なぜ研修資料の作り方で成果が変わるのか
研修が思うような成果を生まない原因の多くは、内容そのものよりも「資料設計」にあります。どれほど優れた講師でも、資料の流れや構成が悪ければ、受講者の理解は深まりません。逆に、わかりやすく整理された資料があれば、話が多少たどたどしくても学びは定着します。つまり、研修の成否は資料の設計思想に大きく左右されるのです。
研修資料の役割は単なる補助資料ではなく、学びの導線をつくることです。受講者が「なぜこの学びが必要なのか」「どう実践すればよいのか」を自分の中で再構築できるように導くことが目的です。そのためには、知識を詰め込むよりも、思考と行動を促す構成が求められます。
多くの研修が失敗する理由は、講師が話したいことをそのままスライドに落とし込んでしまうからです。情報量が多く、流れが不明確な資料では、受講者は途中で集中力を失い、学びが断片的になります。成果を生む研修資料は、情報を並べるのではなく、受講者の心理的な流れに合わせて設計されています。
研修とは、単なる知識の共有ではなく「行動変容」を目的とする活動です。資料はその行動を支える設計図であり、どのように作るかで成果が大きく変わるわけです。

①研修資料の目的を明確にする
最初にすべきことは、研修資料の目的を明確にすることです。
目的が曖昧なままでは、スライドの構成もメッセージもぶれてしまいます。多くの研修担当者が陥るのは、資料を作ること自体が目的になってしまうことです。しかし、本来の目的は「受講者が理解し、行動できるようにすること」です。
目的設定の基本は、何を理解させたいのか、どんな行動を促したいのかを明文化すること。例えば、新人研修であれば「自社の文化や業務プロセスを理解し、早期に戦力化すること」。管理職研修であれば「メンバーとのコミュニケーション改善やマネジメントスキル向上を実現すること」などです。これを定義するだけで、資料全体の方向性が明確になります。
また、受講者の立場やレベルに合わせた目的設定も重要です。経験の浅い社員と、現場責任者では理解度も求める内容も異なります。同じテーマでも、資料の目的を少し変えるだけで伝わり方が大きく変化します。受講者の属性を意識した目的設計が、研修効果を左右します。
研修資料が、伝えるではなく、動かすにあることを理解しておくことも大切です。たとえば、知識共有型研修では「理解を深める」が目的でよいですが、スキル研修や理念研修では「行動変容」や「共感形成」がゴールとなります。目的を正しく設定することで、資料全体に一貫性が生まれ、受講者の心に届く研修が実現します。

②成果を生む構成を設計する
目的が決まったら、次に行うのは構成設計です。
構成設計とは、受講者が学びを理解し、最終的に行動に移すまでの流れを設計することを指します。資料の構成を感覚的に決めるのではなく、心理的なプロセスに沿って組み立てることが成果を左右することを覚えておいてください。
成果を生む研修資料には共通の流れがあります。それは「共感→理解→行動」の三段階です。最初に共感を生み、受講者に「自分ごと」として考えさせる。次に理論や情報を整理して理解を深める。そして最後に、具体的な行動につなげる仕組みを設ける。この三段構成を意識するだけで、資料は劇的にわかりやすくなります。
導入部分では、問題提起や現場の実例を使って関心を引き、共感を得ます。次に、研修テーマの背景や理論を図解などで整理し、理解を助けます。最後に、行動につながる具体的なアクションプランを提示します。例えば「明日からできる3つの行動」を明示するだけで、学びが現場に持ち帰られる確率が高まります。
ちなみに、構成設計で意識すべきは、「1スライド1メッセージ」の原則です。1枚のスライドに複数の情報を詰め込むと、受講者の理解が追いつかなくなります。ページごとに「このスライドの目的は何か」を明確にして設計すれば、講師も迷わず進行でき、聞き手も自然に内容を整理できます。
構成とは、学びのストーリーをつくることです。研修の目的が行動変容である以上、受講者の心の流れを設計する意識が欠かせません。

③伝わる内容を作る
構成が決まったら、次に中身を具体化していきます。伝わる内容には必ず「伝える内容の具体性」「受講者との関連性」「資料の一貫性」の3要素があります。抽象的な理論や理念を並べるだけでは理解は深まりません。受講者が自分の業務や経験と結びつけられるよう、具体的な事例や数値、現場の声を交えることが重要です。
例えば「顧客満足度を高める」というテーマの場合、「丁寧な対応を心がけましょう」と言うだけでは漠然としています。しかし「問い合わせメールには1時間以内に返信」「お礼を伝える際には相手の名前を必ず入れる」など、具体的な行動レベルに落とし込むと、受講者は自分の行動をイメージできます。
また、内容は受講者の立場や経験に沿って構成する必要があります。新人向けなら基本用語や概念を中心に、管理職向けならケーススタディや課題解決を重視するなど、対象に合わせてレベルを調整します。全員に同じ情報を与えるよりも、役割ごとの視点を意識した方が理解は深まります。
さらに、内容の一貫性も重要です。スライド全体を通じてメッセージが統一されているかを確認しましょう。途中で焦点がずれると、研修の印象が薄くなります。主張と事例、行動指針の間に一貫したストーリーがあることが、説得力を生む鍵です。
伝わる資料とは、情報量の多さではなく、理解のしやすさで評価されます。内容を削る勇気と、伝えたいメッセージを明確に絞る意識が、伝わる資料づくりの本質です。

④社員が動く伝え方を実践する
資料の構成と内容が完成しても、それだけで行動変容は起きません。最も重要なのは、資料の使い方です。講師の伝え方、話す順序、受講者との関わり方によって、同じ内容でも研修の成果は大きく変わります。
社員が動く伝え方の第一歩は、受講者の興味を引き出すことです。冒頭で問いかけを行い、「なぜこのテーマが自分に関係あるのか」を考えさせることで、参加意識が生まれます。次に、講師自身の体験やエピソードを交えることで、研修にリアリティが加わります。人はデータよりもストーリーに共感します。
また、情報を詰め込みすぎず、間を取ることも大切です。沈黙や考える時間を意図的に作ることで、受講者が自分の中で答えを見つける瞬間が生まれます。この時間こそが行動につながる内省の時間です。
伝え方の最後のポイントは、行動喚起です。「この学びを明日からどう活かすか」を言葉にさせるワークや振り返りを設けると、行動の実践率が高まります。資料の最後に「行動宣言シート」や「3つの実践ポイント」を配置するのも効果的です。
研修資料は、講師が語るための支えであると同時に、受講者の行動を引き出すためのツールです。伝え方まで含めて設計することで、資料は初めて完成します。

研修資料のデザイン基本原則
デザインは、内容をより伝わりやすくするための要素です。装飾ではなく、理解のサポートとして機能する必要があります。
まず、余白を活かすこと。文字を詰め込みすぎると視線が散り、内容が頭に入りません。1スライドに1メッセージを徹底し、視線の流れを意識して配置します。
次に、フォントは1種類に統一します。統一感があると、資料全体の印象が安定し、視認性が向上します。サイズと太字で情報の階層を表現すれば、読み手の負担を減らせます。
配色はシンプルにまとめます。ベースカラー・アクセントカラー・テキストカラーの3色以内に抑えるのが理想です。背景と文字のコントラストを明確にして、重要な要素だけを強調します。
また、グラフや図解を活用して、概念を視覚的に説明します。複雑な説明も図で示すと直感的に理解されます。イラストや写真を使う場合は、意味を持たせることが大切です。装飾的に使うと集中を妨げます。
デザインは目立たせるためではなく、理解を助けるための仕組みです。シンプルで一貫性のあるデザインが、研修資料に信頼感と集中力をもたらします。

成功事例に学ぶ研修資料の要諦
成果を上げている企業の研修資料には、共通した特徴があります。それは「人を中心に設計されている」ことです。知識や理論を伝えるだけではなく、受講者の感情や行動に働きかける設計がなされています。
例えば、あるメーカーでは、理念研修資料を再構築し、スライドの冒頭に社員の実体験を掲載しました。理念を抽象的に説明するのではなく、日常の行動にどう結びつくかを示したのです。その結果、理念理解度が上がり、社内アンケートでは「自分の仕事が理念につながっていると感じる」と回答する社員が増加しました。
また、IT企業では、DX研修で専門用語を使わず、すべての概念を図解化しました。内容を理解しやすくするために、業務シーンを例示しながら説明することで、現場の実践率が向上しました。
これらに共通するのは、資料が受講者目線で作られている点です。話し手ではなく、聞き手の思考プロセスに合わせて構成されている資料は、自然に学びを促します。研修資料の目的は、知識を伝えることではなく、理解を起点に行動を生み出すことです。成功事例は、その本質を伝えてくれています。

まとめ
研修資料の作り方は、研修の成果を左右する最も重要な要素です。目的を明確にし、構成を整え、内容を具体的にし、伝え方とデザインを工夫する。この一連の流れを意識するだけで、研修の質は大きく変わります。
研修資料は、講師の説明を補うものではなく、受講者の行動を変えるための設計図です。資料を丁寧に設計することは、組織の学び方そのものを変える行為でもあります。 次に研修資料を作るときは、単なるスライドではなく「行動変化を生む手段」として設計してみてください。成果を生む研修は、資料の1枚目から始まります!
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