創業を考える多くの人にとって、最初の壁となるのが資金調達です。特に自己資金が十分に用意できていない場合、創業融資を受けられるのかという不安は非常に大きくなります。
日本政策金融公庫の創業融資は創業者に広く利用されている制度ですが、自己資金がどれほど必要なのか、自己資金が少ない状態でも融資が可能なのかといった点は正確な情報が少なく、正しい理解が難しいことも事実です。
日本政策金融公庫では自己資金が融資審査の基準として重要視される一方で、制度変更により必須条件ではなくなった側面もあります。つまり、自己資金が少ない人でも融資を受けられる可能性は十分に残されています。しかし、この制度を活用するためには、自己資金の考え方、審査で見られるポイント、見せ金への注意など、さまざまな観点から準備を丁寧に進めておく必要があります。
本記事では、創業融資の仕組みから自己資金の位置づけ、旧制度と新制度の違い、少ない自己資金でも融資を通過するための方法までを丁寧に解説します。自己資金なしで創業融資を受けられるのか疑問を抱く方にとって、役立つ内容をお届けします。ぜひ最後までご覧くださいませ!
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案や事業計画作成に関する豊富な経験を有する。
日本政策金融公庫の創業融資とは
日本政策金融公庫の創業融資は、これから事業を始める人や創業後間もない人が、初期の設備資金や運転資金を確保するために活用できる代表的な融資制度です。
民間金融機関では実績や財務基盤が求められることが多く、創業初期の事業者にとっては融資が難しくなるケースが多々あります。その点、公庫は創業者の事業計画や将来性を重視する姿勢を強く持っているため、事業経験が浅い人や実績がない人でも融資を受けられる可能性が広く開かれています。
審査では、創業計画書の内容、創業者の経験、事業の社会的意義、収益化のプロセスなど多角的な視点から事業の成功可能性が評価されます。特に、創業者の準備状況や姿勢が重要視される点は、公庫の審査における大きな特徴と言えます。民間融資では数字や実績が大きなウェイトを占めるのに対し、公庫の創業融資は計画の合理性や創業者としての意志を丁寧に評価してくれる制度と言えるでしょう。
こうした背景から、公庫の創業融資は初めての資金調達として最も選ばれやすく、多くの創業者の背中を押してきた制度として定着しています。

創業融資における自己資金とは
創業融資における自己資金とは、創業者自身が事業のために準備した資金を指し、個人での貯蓄、給与からの積立、退職金、預金、その他の個人的な資産などが該当します。
自己資金は、事業を行う創業者がどれほど真剣に事業に向き合ってきたかを示す根拠のひとつとして扱われます。事業に自分自身の資金を投じるという行為は、創業者としての覚悟や責任感を示すと捉えられ、審査上の重要な指標になっているわけです。
一方で、自己資金は単なる金額の大きさではなく、その資金がどのように蓄積されてきたかも重要な評価ポイントになります。日々の家計の中で少しずつ積み重ねてきた記録や、創業という目的に向けて意識的に準備されてきた資金は、創業者の態度として高く評価される傾向にあります。反対に、短期間で急に増えた金額については、融資のために準備された表面的な「見せ金」と疑われる可能性があり、審査においては厳しく見られることになります。
自己資金は多ければ多いほど良いと考えられがちですが、実際には事業規模とのバランスが重視されます。自己資金の位置づけを正しく理解することで、創業融資の準備はよりスムーズに進められるはずです。

自己資金はどれほど必要か
それでは、創業融資においてどれほどの自己資金を用意しておければよいのでしょうか。その答えは、一般的に総投資額の3割程度が理想的とされています。
たとえば300万円の投資が必要な事業であれば、自己資金として90万円前後を用意しておくことが望ましいと言えます。この割合は、公庫が事業の実現可能性と創業者の姿勢を判断する際に、用いられる目安と言えるかもしれません。
ただし、この基準は絶対的なものではなく、事業の特性、創業者の経験、事業内容の難易度などによって必要な範囲は大きく変動します。自己資金が少ないから審査に通らないというわけではなく、自己資金の蓄積過程が明確であることや、創業計画書の精度が高ければ通過する事例は多く存在します。
自己資金の評価では、創業者がどのように資金管理を行ってきたかも重要です。生活費と事業準備費用が混在する状況では説明が困難になり、審査で不利になる場合があります。反対に、長期間にわたり計画的に積み立ててきた資金は、創業者の姿勢を示すものとして高く評価されます。自己資金の金額だけで判断するのではなく、蓄積方法まで含めて評価されるという点を理解しておくことが大切です。

旧制度と新制度における自己資金の要件
以前の日本政策金融公庫の創業融資では、自己資金として総投資額の10分の1以上を保有していることが必須条件とされていました。この厳格な基準が創業者の大きな負担となり、自己資金不足によって創業を断念するケースも多く見られたのが旧制度の実態です。
しかし、2024年3月からは自己資金要件が大幅に緩和されて、規定そのものが削除されました。制度上は自己資金がなくても創業融資の申請ができるようになったわけです。これは、さらなる創業促進を目的とした政策的な背景があり、多様な創業者が挑戦できる環境を整えるという狙いがあります。
とはいえ、実務においては自己資金が少ないほど審査ハードルが上がることに変わりはありません。自己資金がゼロに近い場合、創業計画書の精度や創業者自身の経験、信頼性、事業への準備状況が厳しく見られます。新制度では柔軟性が高まった分、創業者側の説明責任がより重要になっているとも言えるでしょう。
このように、自己資金の要件は制度上は緩和されているものの、実際の審査では自己資金があるかどうかが依然として大きな評価ポイントであり、旧制度と新制度の違いを理解しつつも、油断せずに対策を講じる必要があります。

少ない自己資金でも融資を通過するための5つのポイント
自己資金が少ないからといって、すぐにあきらめてはいけません。少ない自己資金でも、しっかりとした準備をすれば創業融資を受けることができます。ここでは、5つのポイントに絞って融資通過のテクニックをご紹介しましょう。
ポイント①:創業計画書の説得力を最大限に高める
売上の根拠、事業モデル、競合との差別化、顧客獲得の方法、収益化までのプロセスが一貫性を持って説明されている必要があります。計画書の精度が高いほど、自己資金が少なくても事業の実現可能性を評価してもらえる可能性が高まります。

ポイント②:創業者の経験やスキルが事業と関連していることを示す
経験が事業の成功可能性を裏付ける材料となり、審査で高く評価されます。同時に、創業者自身の姿勢や目的意識も重要であり、なぜその事業を行うのかという理由や背景を明確に説明することが必要です。

ポイント③:生活費や資金繰り計画を適切に説明する
創業初期に収益が上がらない期間があることは想定されるため、生活費や事業資金をどのように確保するのかを説明できると審査上の安心材料になり、評価が向上します。少なくとも、融資を受けた資金をどのように活用し、そのうえでいかに早急に事業を安定させるのかについて、説得力を持って示す必要があります。

ポイント④:信用情報を管理する
クレジットカードなど、過去の延滞や滞納は審査に大きく影響するため、信用情報に傷などがあれば、借金などを返済し切ってから、融資に申し込むことが望まれます。安定した金融履歴は、自己資金が少ない場合の補完材料として機能します。ただ、滞納履歴などがある場合も融資にチャレンジすることはできるので、まずは恐れずチャレンジしてみることをおすすめします。

ポイント⑤:事業の準備状況を具体的に示す
物件の契約見込み、仕入先との調整状況、テスト販売の結果など、事業がすでに動き始めている証拠があるほど、創業への姿勢と実現性を裏付ける材料として評価されます。口だけの創業者よりも、行動が伴っている創業者のほうが信頼できるというのは、当たり前の話でしょう。

創業融資で避けるべき「見せ金」
さて、創業融資において最も注意すべき行為のひとつである「見せ金」についても、簡単に触れておきましょう。
見せ金とは、審査に通るためだけに一時的に資金を移動させ、自己資金が多いように装う行為を指します。短期間で大きな資金が入金された場合や、資金の出所が明確でない場合、公庫は資金移動の履歴を詳細に確認し、不自然な点があると見せ金と判断される可能性があります。
見せ金と判断された場合、審査は不利になるだけでなく、融資そのものが否決される原因にもなります。さらに、虚偽申請とみなされるリスクもあり、今後の取引や信用にも大きな影響を及ぼします。そのため、見せ金は絶対に避けるべき行為であり、短期的な取り繕いでは融資は成功しないという理解が重要です。
自己資金が少ない場合は、無理に金額を増やそうとせず、日常の積立や創業準備としての支出履歴を丁寧に残しておくことが大切です。公庫は資金の動きだけでなく、創業者の姿勢や誠実さも評価するため、透明性のある資金管理が審査において最大の信頼材料となります。

自己資金が少ない場合の資金調達の代替手段
自己資金が少ない状況で創業を目指す場合、日本政策金融公庫の創業融資だけに頼らず、多様な資金調達手段を組み合わせることも効果的です。
自治体の制度融資、創業補助金、助成金などは大きな選択肢であり、なかでも補助金は返済不要という大きな利点があります。ただし、採択率や募集時期、対象となる事業の条件などを事前に把握する必要があるため、計画的な応募と準備が求められます。
他にも、クラウドファンディングは市場から直接支援を受けられる仕組みで、資金調達だけでなく、見込み顧客の獲得やマーケティング効果も期待できます。事業のコンセプトを明確に伝えられる創業者にとっては、非常に強力な選択肢です。一方で、広報活動や企画作成が必要となるなど、成功には一定の労力がかかる点も理解しておく必要があります。
親族からの贈与や借入も、慎重に利用すれば有効な手段となります。ただし、贈与の場合には税制面の検討が必要で、借入の場合は返済計画を明確にしておかないとトラブルの原因になる可能性があります。
これらの方法を公庫融資と併用することで、自己資金が少なくても創業へのハードルを下げ、事業開始後の資金繰りに余裕を持たせることができます。

まとめ
日本政策金融公庫の創業融資は、自己資金が少ない創業者にとって、非常に利用しやすい制度であり、事業の立ち上げを現実的なものにしてくれる力強い存在です。
制度上は自己資金が必須ではなくなったとはいえ、自己資金は依然として審査における重要な評価項目です。自己資金の蓄積方法や管理状況、創業者の姿勢や準備状況が、審査の結果に大きな影響を及ぼします。
自己資金が少ない場合でも、事業計画書の精度を高め、経験やスキルを明確に説明し、生活費と資金繰りの見通しを立て、誠実な資金管理を行うことで、創業融資を通過できる可能性は十分にあります。
また、補助金やクラウドファンディングなどの代替手段を柔軟に活用することで、資金面の不安を和らげながら創業を前進させることも可能です。
創業は大きな挑戦ですが、正しい制度理解と丁寧な準備があれば、どんな状況からでも一歩を踏み出せます。自己資金が少なくても創業を諦める必要はなく、公庫融資をはじめとする多様な支援制度を活かして、自分の事業を形にしていくことができます。 本コラムを参考にして、ぜひ最高の結果をつかみ取ってください!
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