建設業の事業計画書は、将来の売上規模や成長性をアピールするための資料ではありません。むしろ、日々の現場に追われる中でも、経営判断の軸を見失わないために、自分自身の考えを整理しておくための資料です。
特に、建設業は、仕事の成果が目に見えやすい反面、その裏側にある判断や負担は外から見えにくく、忙しさが続くほど立ち止まる機会が失われやすい業態です。
受注があるから断れない、現場が詰まっているから休めない、次の工事が見えているから無理をしてでも進めてしまう。このような判断が積み重なると、事業は回っているのに、経営の主導権を徐々に手放してしまいます。そうした状態を防ぐために必要なのが、事業計画書による事前の整理です。
事業計画書は、未来を正確に予測するための設計図ではありません。判断に迷ったときに立ち戻るための基準を言葉にしておくためのものです。本解説では、建設業の事業計画書をどのような視点で、どのように書けば判断の支えになるのかを、項目ごとに整理していきます。
ちなみに、今回ご紹介させていただく事業計画書は初心者向けの簡易的な内容になりますが、自分なりに改善余地を考えていくことで、より良い事業計画書に仕上げることができます。
こちらはわたしたちBusiness Jungleの事業計画書サンプルですが、デザインなどを工夫すれば、こんな資料も手に入るかもしれません!
Business Jungleと一緒に、こんな事業計画書を作成したい方はぜひご連絡ください。刺さる事業計画書を9,800円から作成代行させていただきます!

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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業計画書作成や事業戦略立案に関する豊富な経験を有する。
建設業の事業計画書テンプレート
さっそくですが、本コラムをご覧になってくださった方のために、事業計画書のテンプレートからプレゼントさせていただきます。こちらは、コラムの中でご紹介させていただく内容をまとめたものになっておりますので、ぜひご活用ください!
ただし、テンプレートはあくまでも「こういう風に書けばいい」という例示に過ぎません。あなたの事業にとって、最適な記載内容があるはずですので、本コラムの内容をきちんと理解したうえで、テンプレートをもとに改善を繰り返していきましょう。
そうすることで、あなただけの最高の事業計画書が完成するはずです。頑張ってください!
事業計画書の10つの構成要素
まず、事業計画書に決まりきった型はありません。しかしながら、事業計画書に盛り込まれることが多い基本的な項目は存在します。
本コラムでは、日本政策金融公庫の創業計画書で登場する10つの項目を例にとり、それぞれについて詳しく見ていきます。これらの構成要素を網羅することができれば、事業計画書としては大きな抜け漏れがなくなるはずです。
難しく感じるかもしれませんが、ひとつひとつ丁寧に見ていけば怖がることはありません。
自分自身の事業整理のため、金融機関に提出するためなど、事業計画書を作成する理由はさまざまですが、こうした要素をおさえれば、あなたの目的はきっと達成されるでしょう。
| 構成要素 | 概要 | ||
| ①創業の動機 | 「なぜ創業しようと思ったのか」という、事業に対する根源的な思いを整理します。 | ||
| ②経営者の略歴等 | 経営者の簡単な経歴を、資格保有や許認可取得の状況とあわせて整理します。 | ||
| ③取扱商品・サービス | どのような事業を行い、なぜその事業が成立するのかを、市場・競合・自社の差別化ポイントといった観点から整理します。 | ||
| ④従業員 | 常勤役員や一般的な従業員など、人員状況を整理します。 | ||
| ⑤取引先・取引関係等 | 販売先・仕入先・外注先など、取引関係を整理します。 | ||
| ⑥関連企業 | 自社に関連する企業を、自分自身あるいは配偶者が経営している場合は整理します。 | ||
| ⑦借入の状況 | 借入を行っている場合は、代表者個人の借入状況を含めて整理します。 | ||
| ⑧必要な資金と調達方法 | 事業で必要になる設備資金と運転資金、そしてそれらをどのように調達するかを整理します。 | ||
| ⑨事業の見通し | 創業当初から1年後(または事業が軌道に乗った後)の財務計画を、算出根拠と合わせて整理します。 | ||
| ⑩自由記述欄 | 他項目では表現できていない事業のアピールポイントを整理します。 | ||
建設業の記入例① 創業の動機
創業の動機では、なぜ建設業を始めるのかを整理しますが、前向きな理由や格好の良い動機を書く必要はありません。
この項目で大切なのは、なぜ自分が現場の最終判断を引き受ける立場に立つのかを、冷静に言語化することです。
建設業では、工程の遅れ、予算の調整、品質とコストのバランス、人間関係のトラブルなど、正解のない判断が日常的に発生します。その判断の結果は、すべて経営者自身に返ってきます。そうした責任を理解したうえで、それでも事業を続けたい理由がどこにあるのかを整理することが重要です。
創業の動機は、迷いが生じたときに立ち戻るための原点です。苦しい状況でも判断を誤らないための拠り所として機能するように書く意識が求められます。

建設業の記入例② 経営者の略歴等
経営者の略歴では、経歴を立派に見せることや、実績を誇張することを目的にしてはいけません。
ここで整理すべきなのは、これまでどのような立場で建設業に関わり、どのような判断や経験を積み重ねてきたかという点です。
職人として現場に立ってきたのか、現場管理や工程調整を担ってきたのか、営業や調整役として動いてきたのかによって、事業運営における強みと課題は異なります。また、建設業以外の経験も、経営判断や人との関わり方に影響する重要な要素になるため、建設業の経験がなくても問題ありません。
この項目は、自分自身の現状を客観的に把握し、無理のない事業計画を組み立てるための前提条件を整理する場です。等身大の経歴を言葉にすることで、現実的な計画につながります。

建設業の記入例③ 取扱商品・サービス
取扱商品・サービスでは、工事内容を細かく説明することよりも、事業としてどこに軸を置き、どのような価値を提供するのかを明確にすることが重要です。
建設業は対応できる範囲が広いため、すべてを扱うように書いてしまいがちですが、それでは事業の輪郭が曖昧になってしまいます。
どの分野を主軸にするのか、どこまでを自社で担い、どこからを協力会社や外注に任せるのかといった線引きを言葉にすることで、現場での判断基準が明確になります。あらかじめ対応範囲を定義しておくことで、無理な受注や過度な負担を避けやすくなります。
市場や競合の動向も踏まえながら本項目を整理することで、本事業においてどのように打ち勝っていくのかを明確にすることができます。

建設業の記入例④ 従業員
従業員の項目では、人数そのものよりも、誰がどの判断を担うのかという体制を整理することを念頭に置きましょう。建設業では、現場での判断の遅れが、そのまま工程の乱れやトラブルにつながりやすいためです。
すべての判断を代表者が行うのか、一部を任せるのかによって、事業の形は大きく変わります。人を増やせば楽になるとは限らず、判断基準が共有されていなければ、かえって混乱や負担が増えることもあります。
この項目では、将来の負担や責任の分散を見据え、どのような体制で事業を回すのかを検討することが重要です。

建設業の記入例⑤ 取引先・取引関係等
取引先・取引関係等では、売上がどこから生まれ、支払いがどこへ流れていくのかを整理します。建設業では、元請、施主、協力会社といった関係性が複雑になりやすく、支払い条件やタイミングが経営判断に大きな影響を与えます。
誰から、どのような条件で入金され、誰に、いつ支払いが発生するのかを言葉にすることで、資金繰りの前提が明確になります。取引条件が曖昧なままだと、現場は回っていても経営状況が不安定になりやすくなります。
この項目は、事業がどのような構造で成り立っているのかを可視化し、無理のある取引関係になっていないかを確認するための重要な整理項目です。

建設業の記入例⑥ 関連企業
関連企業の項目は、必ずしもすべての事業者が記載するものではありません。
代表者本人や配偶者が別事業を行っている場合や、資金や人手、判断が相互に影響し合う関係がある場合に、その構造を整理するための項目です。
なお、関連企業が存在しない場合は、この項目を記載する必要はありません。

建設業の記入例⑦ 借入の状況
借入の状況では、借入額の多さや少なさを評価するわけではありません。重要なのは、返済条件が日々の経営判断を縛らないかどうかを、自分自身で把握しているかです。
建設業は、工事の進捗と入金のタイミングがずれやすく、資金の動きが読みづらい業態です。返済負担が重いと、断るべき工事を断れなかったり、無理な工程を組んでしまったりと、経営判断が歪みやすくなります。
この項目では、代表者個人を含め、借入が事業を前に進めるための支えになれているのか、それとも無理な経営判断を追い込む要因になっていないかを検討することが重要です。
借入は、攻めるためだけでなく、落ち着いて経営判断をするための余白として捉える視点が求められます。借入自体が悪ということでは、まったくありません。

建設業の記入例⑧ 必要な資金と調達方法
必要な資金と調達方法では、何に資金をあてるのか、その資金をどのように調達するのかを整理します。
その際は、仕事が健全に回っている状態を前提に考えないことが重要です。むしろ、工事が少ない時期や想定外の出費が発生したときに、どれだけ耐えられるかを基準に整理します。
なぜなら、建設業では、資材費や外注費が先に発生し、入金が後になるケースが多くあるためです。このような状況において資金が不足すると、現場の質や判断の余裕に直接影響し、最終的には事業が失敗することにもつながりかねません。
調達方法についても、返済条件や支払条件が、現場判断を歪めないかを確認のうえ、最適な資金源を考えていきましょう。

建設業の記入例⑨ 事業の見通し
事業の見通しでは、収益計画を定量的に整理していきます。
ここでも、最も調子の良いケースを前提にしないことが重要です。建設業は、天候や外部環境の影響を受けやすく、計画通りに進まないことが珍しくありません。
そのため、工事が少ない月や、想定より受注が伸びなかった場合でも、事業が回るかどうかを基準に整理します。売上の数字だけでなく、忙しさと利益が釣り合っているか、判断負担が過度になっていないかといった視点も欠かせません。
この項目は、短期的な成長をこじつける場ではなく、長く続けられる事業像を冷静に整理するための項目です。

建設業の記入例⑩ 自由記述欄
自由記述欄は、他の項目では表現しきれなかった考え方や判断基準を整理するための場所です。数値や条件では示せない部分こそ、ここで言語化する意味があります。
どのような工事は受けないのか、どこまでなら無理なく続けられるのか、働き方や判断の線引きを明確にしておくことで、日々の判断に一貫性が生まれます。
この項目は、事業計画書の中でも特に、迷ったときに立ち戻る役割を持ちます。事業を守るための自分なりの基準を、遠慮せずに書くことが重要です。あなたが大切にしたい想いを全力で表現しましょう。

まとめ
建設業の事業計画書は、売上を最大化するための資料ではありません。現場に流されず、判断を誤らないための整理資料です。
事業計画書を書く過程で、自分が何を目指し、どこまで引き受け、どこで線を引くのかが明確になります。その積み重ねが、無理のない経営判断につながります。
計画書は一度書いて終わりではなく、事業の状況に応じて何度も見直されるものです。判断を支える土台として使い続けることで、事業計画書は本来の価値を発揮します。ぜひ繰り返し改善し、より良い事業計画書に仕上げてください。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
わたしたちBusiness Jungleでは、事業計画書の作成をお手伝いしております。
今回ご紹介した「簡易版の事業計画書」はもちろん、パワーポイントを使用した以下のような「本格版の事業計画書」も作成可能です。ぜひ、私たちと一緒に、最高の事業計画書を作成しましょう。
本格版の事業計画書(記載内容はサンプル)
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