パーパス経営とは?メリットやデメリット、成功事例や失敗事例をわかりやすく解説

パーパス経営とは?メリットやデメリット、成功事例や失敗事例をわかりやすく解説

パーパス経営は、近年急速に注目を集める経営手法です。

従来の企業経営が「利益最大化」を目的としていたのに対し、パーパス経営は企業のパーパス(存在意義)を中心に置き、「私たちは何のために存在しているのか?」という問いに答えを持つことから始まります。

現代社会は、グローバル化やテクノロジーの進化、気候変動、人口動態の変化、格差拡大といった多様な課題に直面しています。
こうした課題に対して、企業は単なるモノやサービスの提供者ではなく、社会課題の解決者としての役割を期待されるようになりました。

このような目まぐるしい変化の中で、パーパスは企業にとって「北極星」のような存在になります。
明確なパーパスは、社員一人ひとりが今取り組んでいることや、今後取り組もうとしていることに対して納得感を与え、日々の意思決定や行動の拠り所になってくれるわけです。

こうした背景を踏まえ、この記事ではパーパス経営について詳しく解説していきます。
メリットや成功事例だけではなく、デメリットや失敗事例についてもあわせて解説しておりますので、パーパス経営の難しさも理解できるはずです。

なお、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」と一緒にMVV・パーパスを策定したい方、あるいは浸透させたい方は、いつでもご連絡ください。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、全力でサポートさせていただきます!

MVV・パーパスの策定・浸透はこちら⇒ Business Jungle MVV・パーパス策定

本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。

パーパス経営とは

はじめに、本記事の中心テーマであるパーパスについて理解を揃えておきましょう。

パーパスとは「存在意義」と訳され、企業がなぜ存在しているのかという根源的な問いに対する答えです。
そしてパーパス経営とは、この「存在意義」を企業活動の軸にして、あらゆる意思決定・行動を一貫して行う経営手法を指します。

パーパスは「利益を出すために存在している」という経済的な観点からの答えでは不十分であり、社会的意義を含んでいる必要があります。
自社中心ではなく、社会との関係性の中で、自社の在り方を定める必要があると言い換えてもいいでしょう。

たとえば、食品メーカーであれば「食を通じて人々の健康と幸せを支える」、IT企業であれば「テクノロジーで人々の可能性を広げる」といった具合です。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や経営理念とは

パーパス(存在意義)について理解する際は、混同されやすいMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や経営理念についても理解しておく必要があります。

パーパスはそれ単体で語られることは少なく、MVVや経営理念とセットで語られることが大半です。
そのため、パーパス経営を知るためには、こうした周辺概念についても押さえておく必要があります。

概念定義
ミッション
(Mission)
ミッション(Mission)は、企業が果たすべき使命を表し、企業が目指す先を示します。

たとえば「世界一の電動モビリティを提供する」といった表現がミッションの例になります。
ビジョン
(Vision)
ビジョン(Vision)は、企業が目指す将来の理想的な姿を描くもので、ミッションよりも具体的な目指す先を描き、関係者に実感を持たせる効果があります。

たとえば「誰でも・いつでも・どこからでも電動モビリティを利用できるプラットフォームを構築する」といったものがビジョンにあたります。ミッションだけでは抽象的でしたが、ビジョンを交えることで具体的になりました。
バリュー
(Value)
バリュー(Value)は、企業が大切にしたい価値観であり、ミッションやビジョンを実現するために守るべきルールを指します。

たとえば「スピードよりも品質を優先する」「挑戦を恐れず新しいアイデアを試す」「常に顧客の立場で考える」といった価値観がこれに該当します。ルールがあることで、組織が効率的に同じ方向に向かっていけるようになります。
経営理念経営理念は、企業の目指す先とそこに至る方法をすべてまとめた概念であり、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパス、あるいは他の考え方が含まれます。

パーパスとMVV・経営理念との違い

さて、パーパスとMVV・経営理念との違いについても目を向けておきましょう。
結論を述べると、パーパスはMVV・経営理念のうち、ミッション(果たすべき使命)と非常に近しい考え方です。

教科書的な説明をすると、パーパスは存在意義を示しており、自分の内から湧き上がる思いをもとにした目指す先です。
一方のミッションは果たすべき使命を示しており、外部からの要請に基づく思いをもとにした目指す先です。

つまり、パーパスは内発的な動機に基づいている一方、ミッションは外発的な動機に基づいています。
これだけ聞くと、パーパスは善で、ミッションは悪に感じてしまうかもしれませんが、そんなことはまったくありません。

実は、パーパスという言葉自体には大きな意味はなく、ミッションを「存在意義」という意味で使用している企業も大勢あります。
あるいは、MVV・経営理念やパーパス以外の新しい独自概念を登場させている企業もあります。

この事実を通して何よりもお伝えしたいことは、目指す先とそこに至るための方法さえ明示できていれば、パーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、あるいは経営理念という言葉そのものにこだわる理由は一切ないということです。

パーパス経営は、パーパスという「言葉を使った経営」ではなく、パーパスという「考え方に基づく経営」です。
もしあなたの会社にMVVや経営理念が既にあり、存在意義に立ち戻って事業を推進することができているのであれば、無理にパーパスを策定する必要はありません。

自社の状況に合わせて最適な方法を検討することが大切なのであり、パーパスという言葉を使うことを目的にしてはいけません。

なお、MVV・パーパスの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しているので、気になる方はご覧ください。

パーパス経営が注目される背景

パーパス経営は単なるトレンドではなく、時代に求められている必然の動きです。

本章では、パーパス経営が注目されることになった背景を整理していきましょう。
不確実な世界が到来し、社会や環境への貢献要請が叫ばれ、そしてさまざまな組織・個人でパーパス経営を後押しする追い風が起こった結果、パーパス経営が市民権を得ることにつながりました。

不確実な世界の到来

まず、近年はVUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)と呼ばれる流動的で不確実な時代になりました。

デジタル技術などの登場により、企業の競争構造がすぐに変わってしまう環境ができあがったわけです。
誰もが知る大企業が、主力事業に注力するばかりに、新規プレイヤーに市場を奪われるという事態も珍しくありません。

このような不確実な時代において企業に求められるのは、場当たり的な対応ではなく、「何のために企業が存在するのか」から逆算した行動です。
そのため、VUCA時代の到来により、パーパス経営はより一層注目されるようになりました。

社会や環境への貢献要請

不確実な世界の到来に伴い、労働市場の中心に位置するミレニアム世代やZ世代の考え方も変わっていきました。

たとえば、給与や安定性よりも、社会に貢献できる企業で働きたいと考える若者が増えています。
採用活動においても、明確なパーパスを掲げる企業の方が優秀な人材を惹きつけやすくなっています。

また、持続可能な世界の実現に向けて、環境保護に対する意識も大きくなっています。
労働者や顧客、あるいは投資家からの信頼は、環境をないがしろにする企業には集まらなくなっているわけです。

こうした要請は、「企業がパーパス経営を通して社会や環境に貢献する」という自然な流れにつながっていきました。

パーパス経営に対する追い風

このような大きな環境変化だけではなく、さまざまな組織・個人がパーパス経営を後押ししたことも、パーパス経営の立ち上がりにとって追い風となりました。

具体的なきっかけを挙げていくと、2018年に世界最大級の資産運用会社CEOが年次書簡で提唱した「A Sense of Purpose」があります。ここでは企業は利益追求だけでなく社会への貢献やステークホルダーへの価値提供を重視しなければ、長期的な繁栄は望めないと指摘されました。

続く2019年には、アメリカの主要企業CEOによって構成されているビジネス・ラウンドテーブルにおいて、「株主第一主義」を見直して顧客・従業員・地域社会など幅広い関係者に価値を届ける経営への転換が表明されました。

さらに2020年のダボス会議でもステークホルダー資本主義が推奨され、パーパスは企業戦略の中心概念として定着していきました。

パーパス経営のメリット

パーパス経営が注目されているからと言っても、それが最終的に企業に恩恵を与えなければ、取り組むことはできません。
そのため本章では、パーパス経営のメリットについて詳しく解説させていただきます。

パーパス経営のメリットを一言で述べるのなら、パーパス経営を行うことで目指す先と到達方法が明確になる結果、社員のエンゲージメントが向上し、顧客からの信頼獲得につながり、それが企業の成長として還元されることになります。

目指す先と到達方法が明確になる

パーパス経営を実践すると、企業の存在意義、つまり企業が目指す先が定まります。
そして、目指す先に至るための方法もあわせて定義することで、効率的に目指す先に進むことができるようになります。

組織というのは、目指す先と到達方法が共有されていなければ、個の集団になってしまいます。
そして個の集団は、各々が自由に行動してしまうため、非常に非効率です。

パーパス経営を実践することで、「個人の集団」を「効率的な組織」に進化させ、目指す先に向かって最短距離で進んでいくことができます。

社員のエンゲージメントが向上する

パーパス経営で、目指す先や到達方法が整理されると、社員にとって日々の業務が楽しくなります。

これは直感的にも理解できると思いますが、目の前の仕事を日々淡々と業務をこなすことと、自分の仕事が大きなゴールに向かって進んでいると実感しながら業務を行うことを比べると、言うまでもなく後者の方がワクワクします。

パーパス経営の実践は、社員のエンゲージメント向上というかたちで、企業を支える社員にも効果を還元してくれます。

顧客からの信頼を得られる

パーパス経営に基づいて目指す先に向かって効率的に進み、社員も意欲的に活動している企業があれば、そうではない企業と比較して応援したいと思わないでしょうか。

恐らく多くの人が、そうした企業を応援してくれるはずです。
また、社員がエンゲージメント高く業務にあたることで、結果的に顧客に届く商品・サービスやアフターフォローの満足度も大きく向上しているはずです。

このようにパーパス経営の実践は、顧客の企業に対する印象や体験価値を向上させ、顧客からの信頼につながります。

企業の成長につながる

そして最後に、ここまで述べたようなメリットが、企業の成長という最終成果となって返ってきます。
これは感覚的な話ではなく、さまざまな調査・研究からもパーパス経営の成果が裏付けられている事実です。

×5倍:
パーパス経営企業とS&P500企業との投資パフォーマンスの差分

+16%:
3年間で10%成長している組織の割合に関する、パーパスドリブンな組織とそうでない組織の差分

+105%:
パーパス意識の強い・弱い企業を比較した際の、ブランド価値の成長率の差分

×2.3倍:
パーパスなどの重要要素を上手く活用した場合、同業他社と比較した際の成長率の差分

パーパス経営のデメリット

一方、明るい部分だけを見ても、パーパス経営の本質を理解したことにはなりません。

正しく実践できればメリットの大きなパーパス経営ですが、取り組めば誰でも・すぐに効果が出るわけではありません。
むしろ、使い方次第では、パーパスを作らないほうがよいことさえあります。

「お飾りパーパス」で現場が混乱する

経営陣だけでパーパスを作成して、現場には一切浸透していないパーパスほど、価値のないものはありません。
あなたの会社も、そのような事態に陥ってはいないでしょうか。

パーパス経営においては、この失敗が本当に多いです。
恐らく、パーパスを策定した企業の過半数以上が「お飾りパーパス」になっており、現場ではパーパスが冷めた目で見られています。

パーパスは作って終わりではありません。
むしろ、浸透させて社員の意識・行動を変えてこそ価値があるのであり、掲げるだけでは邪魔なだけです。

経営陣だけで言葉遊びでパーパスを決めても、パーパス経営とは言えません。
策定の段階からできる限り多くの社員を巻き込み、当事者意識を持たせ、そのうえで終わりのない浸透活動を進めていく必要があります。

効果創出まで手間が必要になる

そして、パーパス経営の効果はすぐに出るわけではありません。
パーパスが社内に浸透するまで半年から数年程度の時間がかかり、そして策定・浸透にはカネ・ヒトも必要になります。

パーパスは魔法の杖などでは決してなく、根気強く取り組んでいく必要があります。
その際は、社長や役員、社員全体のコミットメントも必要不可欠です。

こうした手間を理解せず、パーパスを採用したものの手を抜いてしまう企業が後を絶ちません。
パーパスに対して本気になれないのであれば、そもそもパーパス経営を実践するべきではないのです。

パーパス経営の成功事例

さて、パーパス経営のデメリットも見てきましたが、正しく実践できる場合は非常に強力な武器になります。

ここでは、実際にパーパス経営で成功している企業事例を見ていきましょう。
各社の成功事例を見ることで、パーパス経営に取り組む意義や、各社のパーパス経営に対する熱量を理解できるはずです。

パタゴニアの成功事例

パタゴニアは「地球を救うためにビジネスを行う」というパーパスを掲げ、環境保護を企業活動の中心に据えています。

自社製品の買い取り・修理サービスである「Worn Wear」を展開し、使い捨てを減らすライフスタイルを提案するほか、売上の1%を環境団体に寄付し、創業者が株式の全てを環境保護団体に譲渡するという大胆な決断も行っています。

こうした一貫した行動により、ブランドに対する深い共感と圧倒的な顧客ロイヤルティを獲得し、アウトドア業界で持続的な成長を実現しています。

ソニーグループの成功事例

ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」というパーパスを全社に浸透させました。

この理念を経営戦略の軸とすることで、エンターテインメント、半導体、ゲーム、音楽など多様な事業でシナジーを生み出し、社員一人ひとりが自らの仕事に「感動を届ける」という視点を持つようになりました。

その結果、イノベーションが加速し、コロナ禍においてもゲーム・音楽・映像事業が好調を維持し、パーパス策定の翌年である2020年度には過去最高益を達成しています。

味の素の成功事例

味の素は、グローバル全社員を対象とした「My Purpose ワークショップ」を実施し、社員一人ひとりが自分の存在意義を言語化することで、パーパス「アミノサイエンス®で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」と重ね合わせる取り組みを推進しています。

これにより社員のエンゲージメントが大きく向上し、多様な国・文化にまたがる組織でも共通の価値観が浸透しました。

その結果もあって、健康栄養領域での新規事業創出やサステナビリティ経営の推進が進み、海外売上比率は7割を超え、グローバルブランドとしての地位をさらに強化しています。

パーパス経営の事例一覧

ここまでに登場した企業に共通するのは、パーパス経営を単なるスローガンに留めず、採用・人事評価・商品開発・マーケティング戦略にまで落とし込み、経営の隅々に一貫性を持たせている点です。

その結果、顧客や社会からの強い支持を得ると同時に、社員のモチベーションやエンゲージメントが向上し、財務的成果にも直結しています。
パーパス経営がお飾りではなく、成長を生み出す仕組みとして機能していると言えるでしょう。

他にも、パーパス経営を実践している企業は非常に多くあります。
以下に有名企業が掲げているパーパスを一覧化しましたので、パーパスに対するイメージを深めてください。

企業名パーパス(存在意義)
花王豊かな共生世界の実現
武田薬品工業タケダは、世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献するために存在します。
日本航空(JAL)多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来を実現し、世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループを目指します。
三菱UFJ銀行世界が進むチカラになる。
ソニーグループクリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。
サントリーホールディングス人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、「人間の生命の輝き」をめざす。
オリンパス世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現
Making people’s lives healthier, safer and more fulfilling
サイボウズチームワークあふれる社会を創る
ユーグレナ人と地球を健康にする
ライオンより良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する
(ReDesign)
三井住友トラスト・ホールディングス託された未来をひらく
~信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる~
東京海上ホールディングスお客様や社会の“いざ”をお守りする
ネスレ食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます
第一三共ヘルスケア世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する
JT心の豊かさを、もっと。
小松製作所ものづくりと技術の革新で新たな価値を創り、人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く
富士フイルム地球上の笑顔の回数を増やしていく。
オリックス変化に挑み、柔軟な発想と知の融合で、未来をひらくインパクトを。
第一生命グループ共に歩み、未来をひらく
多様な幸せと希望に満ちた世界へ
NECOrchestrating a brighter world

なお、パーパス経営の事例について、もっと詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

パーパス経営の失敗事例

パーパス経営は強力な経営手法である一方、かたちだけの導入では逆効果になりかねません。
そのため、成功事例だけでなく、失敗事例にも目を向けることが大切です。

よくある失敗例として4つの事例を挙げさせていただきますが、一言でまとめると「パーパスを掲げるだけ掲げて浸透していないこと」が最大の失敗です。

こうした失敗をするくらいであれば、パーパス経営は掲げないほうがよいでしょう。
中途半端な思いで成功できるほど、パーパス経営は甘くありません。

パーパスが抽象的すぎた失敗事例

パーパスの内容が「世界をより良くする」「未来を明るくする」など、どの企業にでも当てはまってしまう漠然とした内容であると、社員・顧客の行動変化につながりません。

例えば、ある大手小売企業では「人々の生活を豊かにする」という抽象的なパーパスを掲げたものの、具体的な商品戦略や人事評価と結びつけられず、社内に浸透しないまま形骸化しました。

パーパス経営を実践する際は、社員が日常業務で「これがパーパスに沿った行動だ」と判断できるレベルまで、パーパスを自社らしく具体化することが重要です。

経営層のコミットが足りない失敗事例

パーパス経営はトップ自らが語り続けることで初めて成功します。
経営層の本気を示すことができなければ、社員・顧客は「また一時的なキャンペーンだ」と冷めてしまいます。

例えば、海外の大手飲料メーカーでは、サステナビリティをテーマとしたパーパスを掲げたにもかかわらず、経営会議では常に短期的利益を優先し、社長からもパーパスに関する発言が一切ありませんでした。
結果として「言行不一致」と批判され、SNSで炎上する事態になりました。

パーパスを策定した後は、トップが社内外で繰り返し語り、意思決定にも反映しなければ、誰も見習ってパーパス経営を実践しようとはしません。

社員の本音と乖離した失敗事例

現場の実態や社員の価値観を無視したパーパス経営は、逆に社員のモチベーションを下げてしまいます。

例えば、あるIT企業は「挑戦と成長を大切にする」というテーマでパーパス経営を実践したものの、実際には失敗に厳しい評価制度が残ったままで、社員がリスクを取らなくなり、離職率が上昇しました。

パーパスを策定する際は、ワークショップやヒアリングを通じて、現場のリアルな課題感を反映する必要があります。
この現場の巻き込みは、実情を正確に捉えるだけではなく、社員に当事者意識を持ってもらうという点でも必須です。

目標設定が曖昧な失敗事例

パーパス経営の実践においては、行動目標が具体的でなければ進捗が測定できず、いつの間にか形骸化してしまいます。

例えば、食品メーカーが「健康寿命を伸ばす」というパーパスを掲げましたが、パーパスの達成状況を測定するための具体的な目標が設定されなかった結果、事業戦略や製品開発にも反映されず、パーパス策定前と何も変わりませんでした。

パーパス経営においては、評価・採用制度やKPIなどにパーパスを組み込み、数字で進捗を可視化することも検討しましょう。
同時に、数字面での「管理」は現場に不信感を抱かれる可能性もあるため、慎重に決断する必要があります。

パーパス経営を成功させる4つの条件

今回ご紹介した失敗事例からは、パーパス経営を成功させる条件が見えてきます。
つまり、良いパーパスを社員と一緒に作り、経営層の本気を示し、目標を立てて浸透活動に全力をささげるという条件です。

パーパス経営を絵に描いた餅で終わらせないためにも、次の4つの条件は必ず守るようにしてください。

良いパーパスを作る

良いパーパスでなければ、社員や顧客をはじめとするステークホルダーの意識を変え、行動まで変化させることはできません。

そして、良いパーパスの条件とは「市場の機会・ニーズがあること」「自社にとっての整合性があること」「強い信念があること」を満たすものです。

ゲーム事業を展開する企業が、「世界一の電卓を作る」というパーパスを掲げても誰にも響きません。
小さくて衰退する市場を相手にしており、自社の事業とまったく整合しておらず、それゆえに本気になれないからです。

経営層が本気を見せる

パーパス経営は、会社の在り方を決める最も重要な活動です。
そのため、社長を筆頭にして、全経営陣の最重要テーマとして取り組むことが必須です。

会社の経営を任された人たちが、先頭に立ってパーパス経営を実践し、何度も何度もパーパスについて語らなければ、社員に浸透することはないでしょう。
そして、社員にパーパスが浸透しなければ、状況は何も変わることはありません。

パーパス策定に社員を巻き込む

パーパス経営において最も重要なことは、パーパスを社員に浸透させ、意識や行動を変えることです。
そのためには、パーパスに対して社員が心から腹落ちできるようにする必要があります。

この観点において、パーパス策定に社員を巻き込むことで、パーパスは実務に即した内容になります。
そして何よりも、「自分もパーパス策定に参加した」という社員の意識は、その後の浸透活動を格段にスムーズにしてくれます。

パーパス経営の目標を設定する

最後に、パーパス経営を実践するためには、目標設定が欠かせません。
パーパス経営を通して何を実現したいのか、定量的な指標を用意して、定期的に測定することで実践状況を把握しましょう。

特に、四半期から半年、あるいは1年など、一定の期間を決めて社員アンケートを実施し、パーパスに対する理解度を測定する取り組みなどを設けてもよいでしょう。
そのうえで、理解度の割合を目標として設定すると、パーパス経営における課題なども見えてくるはずです。

パーパス経営を実践する5ステップ

ここまでで、パーパス経営について、しっかりと理解することができました。
しかし、いざパーパス経営を実践しようとした場合、具体的にどのようなステップで進めていけばよいのでしょうか。

結論を申し上げると、パーパスの策定・浸透のプロセスは、大きく5つのステップに分けられます。
全体でおおよそ3か月から半年ほどかかりますが、浸透活動については終わりがない活動です。

ステップ概要
ステップ①:
プロジェクトの発足・活動準備
パーパス策定に必要な準備を行います。
活動目的・計画を明確化したうえで、プロジェクトチームを組成し、パーパスに対する知識も深めておきます。
ステップ②:
現状の整理
自社の置かれている現状を正しく理解します。
社員アンケートやヒアリングを活用したり、市場・競合・自社調査を行うことで、将来の方向性を定めるための前提条件を整理します。
ステップ③:
あるべき方向性の策定
現状を踏まえ、自社が目指すべき方向を決めます。
ここでは、いきなりパーパスという「言葉選び」に入るのではなく、方向性として「中身」を検討することが重要です。
ステップ④:
パーパスの策定
あるべき方向性を、パーパスとして落とし込みます。
まずは3案程度を作成のうえ、最終的に1案に絞り込んでいくとスムーズに進めることができるでしょう。
ステップ⑤:
パーパス浸透施策の企画・実行
最も重要なのが、パーパスを浸透させることです。
浸透施策を企画・実行のうえ、社員アンケートを通じて浸透状況を定点観測し、絶えず改善を図っていきましょう。

上記はパーパス経営を実践するための一連の流れですが、この流れのなかでMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の一部、特にパーパス経営を実践する場合はバリューを考えていくことも必要でしょう。

また、パーパスは策定して終わりではありません。
社員に伝え、意識を変え、行動を変えてこそ価値がありますので、絶え間なく浸透活動に取り組むようにしてください。

各ステップの詳細については、こちらの記事で解説しています。
記事内ではミッション・ビジョン・バリューについて書かれていますが、これらをパーパスとして読み替えれば、そのまま適用することができます。

パーパス経営における具体的な浸透施策

さて、パーパス経営を実践するステップについてはご理解いただけたと思いますが、その中でも最も重要なのは策定したパーパスを社内に浸透させるステップです。

ここでは多くの企業が悩むパーパス浸透について、対象者別に具体的な施策を紹介しておきます。
あくまで一例ですので、自社に合った内容を考え、優先順位を付けて効率的に取り組むようにしてください。

経営層向け施策

まずは、パーパス経営を主導していく立場である、経営層向けの施策からご紹介させていただきます。
とにかく、経営層が手本を示し、それを見た社員の意識が変わるようにすることを心がけましょう。

ワークショップ設計(経営層参加型)
経営層自身がパーパスの意義や社会的背景を深く理解する場を設け、トップのコミットメントを強めます。

経営陣の定期メッセージ発信
全社員に向けてパーパスに基づく意思決定や成功事例を定期的に共有し、経営としての本気を示します。

戦略会議・意思決定への組み込み
さまざまな会議・意思決定において、パーパスを基点とした意思決定ルールや優先順位を策定し、経営判断の一貫性を確保します。

従業員全体向け施策

経営層ではなく、一般社員を対象としたパーパス浸透施策も欠かせません。
簡単に着手できる施策から難しい施策までありますので、自社と相性のよいものを選ぶようにしてください。

オンボーディングプログラム
新入社員研修や中途入社者向けオリエンテーションでパーパスを学び、入社初日からパーパスに対する意識・共感を醸成します。

動画・ビジュアル活用
パーパスを表現した動画やポスター、デジタルサイネージを社内に掲示し、パーパスを日常的に意識できる環境を整えます。

社内SNS・ゲーミフィケーション活用
社員がパーパス事例を投稿・共有できる仕組みを導入したり、オンラインチャットでパーパスを表現したスタンプなどを作成し、パーパスを気軽に活用する機会を提供します。

評価・採用制度への反映
パーパスに基づく行動を促すため、各種制度にパーパス実践度合いや適合性を反映することも一案です。ただし、「嫌々やらされている感」が出ないように、導入は慎重に決断しましょう。

パーパスアワード
パーパスに関する優れた取り組みを表彰し、パーパスに対する社員の意欲を向上させます。

現場リーダー・推進者向け施策

実際に現場でパーパス浸透の指揮をとるのは、リーダー層の社員になるはずです。
そのため、そうした社員を対象とした浸透施策を講じてもよいでしょう。

アンバサダー制度
各部門からパーパス推進リーダーを選出し、事例共有会やヒアリングを通じて現場主導のパーパス浸透を促します。

リーダー育成プログラム
マネージャー層を対象に、パーパスを基点としたマネジメントや1on1面談の方法を学ぶ研修を実施します。

部門別ワークショップ・成功事例共有
リーダー層が主導となって各部門でパーパスを日常業務にどう落とし込むかを議論し、具体的な実践アイデアを引き出したうえで、当事者意識を醸成します。

社外ステークホルダー向け施策

パーパス経営は社内に向けたものだけではありません。
社外に対しても、しっかりとアピールし、浸透活動を加速させていくべきでしょう。

商品・サービスへの組み込み
パーパスを商品開発やサービス設計の判断基準に反映し、顧客接点でも一貫したブランド体験を提供します。

社外発信とブランド体験設計
採用広報やサステナビリティレポート、共創イベントなどを通じて、顧客や地域社会とパーパスを共有し、パーパスへの共感を生み出します。

代表的な浸透施策について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

パーパス経営に関するよくある質問

最後に、パーパス経営に取り組む際によくある質問を整理しておきます。

近年はさまざまな経営概念が登場しており、パーパス経営との関係性が分かりにくいことも少なくありません。
ここまでの記事では説明しきれていない代表的な考え方について、簡単に整理しておきましょう。

SDGs・ESG・サステナビリティは、パーパス経営にどう影響した?

SDGs(Sustainable Development Goals)は、国連が定めた持続可能な社会を実現するための国際目標であり、ESG(Environment・Social・Governance)は企業を評価する際の環境・社会・ガバナンスの観点を指します。また、サステナビリティは社会の持続可能性を重視する考え方です。

これらの概念の広がりによって、企業は利益だけでなく社会への価値提供も求められるようになりました。
その結果、「自社は社会にどのような意味を持つ存在なのか」というパーパスを経営の中心に据えるパーパス経営が強く注目されるようになったわけです。

パーパス経営とDXの関係性は?

DX(Digital Transformation)は、デジタル技術を活用して企業のビジネスモデルや組織、業務プロセスを変革する取り組みを指します。

こうしたDXの進展によって、企業はこれまで以上に不確実で変化の激しい環境に置かれるようになりました。
その結果、短期的な判断だけではなく、「自社は何のために存在するのか」という一貫した信念を持つことの重要性が高まっています。

つまり、DXが環境変化を加速させたからこそ、企業の意思決定の軸となるパーパス経営が重視されるようになったと言えるでしょう。

ミレニアム世代・Z世代にとってパーパス経営は重要?

非常に重要です。

ミレニアム世代(1980年代〜1990年代半ば生まれ)やZ世代(1990年代後半〜2010年前後生まれ)は、企業を選ぶ際に給与や知名度だけでなく、その企業が社会にどのような価値を提供しているかを重視する傾向があり、パーパス経営との相性が非常によいです。

そのため、明確なパーパスを掲げている企業は共感を得やすく、パーパス経営を実践することで採用力や社員のエンゲージメント向上にもつなげることができます。

パーパスウォッシュとは?

パーパスウォッシュとは、企業が立派なパーパスを掲げているものの、実際の経営や行動が伴っていない状態を指す言葉です。
環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」と同様に、見せかけの理念として批判されることがあります。

パーパス経営では、言葉を掲げるだけでは意味がありません。
採用、人事評価、商品開発、マーケティングなど企業活動のあらゆる場面にパーパスを反映させることで、初めて信頼される経営になります。

厳しい言い方になってしまいますが、本気ではないパーパス経営は、百害あって一利なしです。

まとめ|パーパス経営に取り組むべし!

パーパス経営は、企業が「何のために存在するのか」を明確にし、社員や顧客から共感を得ながら成長するための経営手法です。

パーパス(存在意義)は組織の北極星となり、日々の意思決定や行動の基準を与えることで、社員のエンゲージメントや顧客からの信頼を高め、長期的な企業価値向上につながります。

一方、抽象的なパーパスや経営層の関与不足などは逆効果になる恐れがあり、そのようなケースではパーパスはむしろ悪となってしまいます。
成功の鍵は、現場の声を徹底的に反映し、浸透活動を継続的に実施し続けることです。

パーパス経営はパーパスを作って終わりではなく、変化する社会に合わせて磨き続けるもの。
自社の存在意義を言葉と行動で示し、持続的な成長を目指していきましょう。

もし、MVVやパーパスの言語化や社内展開にお悩みであれば、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」がお手伝いできるかもしれません。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、あなたの会社らしいMVV・パーパスを共にかたちにします。

MVV・パーパスの策定・浸透はこちら⇒ Business Jungle MVV・パーパス策定

目次

関連記事