ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる方法とは?具体施策10選と成功事例

ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる方法とは?具体施策10選と成功事例

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、企業がどこを目指し、どのようにたどり着くべきかを示す羅針盤です。

VUCA(Volatility/変動性、Uncertainty/不確実性、Complexity/複雑性、Ambiguity/曖昧性)と呼ばれる流動的で不確実な時代が到来した結果、世界規模で社会・環境に配慮した投資や、SDGs(持続可能な開発目標)の推進が起こりました。

これに伴い、企業の社会的責任を求める声が大きくなり、MVVを軸にした経営のニーズが増大することになったわけです。
しかしながら、こうした時代の流れに任せて何となくMVVを策定したものの、社内に一切浸透していない企業が数え切れないほどあります。

本記事では、社内に浸透することのない「お飾りのMVV」が生まれてしまう原因から、そうならないようにするための浸透施策、そして実際に浸透に成功した企業の事例まで徹底的に解説しています。
ぜひ最後までご覧いただき、価値のあるMVVにするための方法について理解してください。

なお、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」と一緒にMVV・パーパスを策定したい方、あるいは浸透させたい方は、いつでもご連絡ください。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、全力でサポートさせていただきます!

MVV・パーパスの策定・浸透はこちら⇒ Business Jungle MVV・パーパス策定

本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスとは

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させる方法について説明する前に、まずは言葉の定義を確認しておきましょう。
言葉の意味を正しく理解していなければ、それらを浸透させる方法についても正しく理解することができません。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスは、企業がどこを目指し、そこにどのようにたどり着けばよいかを示す羅針盤です。
組織が「個の集団」から「効率的な組織」になるための必須条件であるため、各言葉の意味をしっかりと把握しておきましょう。

ミッションとは

ミッションとは「果たすべき使命」を意味し、企業が目指す先を示してくれます。
企業として最終的に目指すゴールがあるからこそ、社内外のステークホルダーは企業に対して期待し、ともに進んでいこうとしてくれます。

例:コーヒーで世界を幸せにする

ビジョンとは

ビジョンとは「将来の理想的な姿」を意味し、目指す先を具体化して示してくれます。
ミッションだけでは遠い未来の話で、どうしても抽象的になってしまいますが、ビジョンがあることで具体性が増し、人々はより一層ワクワクしてくれます。

例:最高のコーヒーを、誰でも・いつでも・どこからでも購入できるプラットフォームを構築する

バリューとは

バリューとは「大切にしたい価値観」を意味し、目指す先に到達するための方法を示してくれます。
ミッションやビジョンだけでは目指す先しか分からないため、そこにはどのようにたどり着けばよいのかをルールとして周知し、徹底させる効果があります。

例:①自分がコーヒーを楽しむ、②楽しみを他者に還元する、③ビジネスの視点でつなげる

パーパスとは

パーパスとは「存在意義」を意味し、ミッションと同様に目指す先を示してくれます。
両者には厳密な違いはあるものの、実務の世界では明確に区別して使用するケースが少ないため、まずは同義として捉えておけばよいでしょう。

例:コーヒーで世界を幸せにする(ミッションと同じ)

なお、本記事では、この後はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)という言葉が何度も登場しますが、そこにはパーパスも含まれるものだと考えてください。

今回ご紹介したMVVやパーパスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

ミッション・ビジョン・バリューの「浸透」が重要な理由

あなたの所属している会社や誰もが知っている大企業においても、大層立派そうなMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を掲げているものの、まったく実態が伴っておらず、冷めた目で見てしまうような経験はないでしょうか。

ミッション・ビジョン・バリューを策定・浸透させることで、確かに大きなメリットがあります。
社内において目指す先とそこに至るためのルールが整備されていることで、組織としての推進力が増大し、社外のステークホルダーからも支持されて業績も向上するというメリットです。

しかしながら、多くの企業においては、ミッション・ビジョン・バリューは策定時のみお祭り騒ぎとなるものの、その後はほったらかしにされるケースが散見されます。
これでは、社員の目からは「また経営層が言葉だけの取り組みをしている」という失望しか集まらず、浸透が伴わない言葉は組織を退化させてしまいます。

ミッション・ビジョン・バリューは「作って終わり」ではまったく意味がなく、害悪とすら言えます。
最も重要なことは、作った内容を社員に意識させ、理解してもらい、自分事化してもらい、そして行動を変えてもらうことです。

作った後の「浸透」こそがミッション・ビジョン・バリューの肝です。
これは数ヵ月レベルでの取り組みではなく、絶えず取り組む必要がある終わりなき活動であることを忘れないでください。

ミッション・ビジョン・バリューが浸透しない原因

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)については、浸透こそが極めて重要であるということは理解できました。
しかし、なぜ多くの企業は作成したMVVを浸透させることができないのでしょうか。

その答えは、3つの原因に集約することができます。
つまり、組織にMVVを浸透させるまでに必要となる「MVVを意識する」「MVVを理解する」「MVVを自分事化する」といういずれかにおいて、つまずいてしまっているからです。

この意識・理解・自分事化という3つの壁を乗り越えることで、はじめて社員の行動が変わり、MVVが社内に浸透するのです。
それぞれの壁について、詳しく見ていきましょう。

原因①:MVVを意識できない

MVVを意識するとは、とにかくMVVに関して目にすること、耳にすることを指します。
ポスターでも、メールの文章でも、役員陣からの口頭説明でも何でも構いません。

しかし、多くの企業ではMVVは策定時に1度大きく発信されるだけで、その後は日常業務の中で触れる機会がほとんどありません。
結果として、社員の記憶から徐々に薄れていき、「存在は知っているが思い出せない」「そもそも見たことがない」という状態に陥ってしまいます。

人は日常的に触れていない情報を行動に反映することはできません。
つまり、MVVが浸透しない最初の原因は、単純に接触頻度が圧倒的に足りていないことにあるのです。

原因②:MVVを理解できない

仮にMVVを意識する機会があったとしても、その内容が理解できなければ意味はありません。
しかし、多くの企業では、そもそもMVVに関する基礎知識が十分に共有されていないという問題があります。

ミッション・ビジョン・バリューそれぞれが何を意味しているのか、どのような役割を持っているのか、なぜ必要なのかといった理解がないままでは、MVVを正しく捉えることはできません。
結果として、「なんとなく大切そうな言葉」として受け止められるだけで、自分の業務との関係性を考えることができなくなってしまいます。

また、MVVの背景にある考え方や目的が伝わっていない場合、その言葉の意図も誤解されやすくなります。
同じ言葉を見ても、人によって解釈がバラバラになってしまうのはこのためです。

MVVは、その意味や役割を正しく理解してはじめて機能します。
そのため、全社員が共通の理解を持てる状態を作れていないことが、浸透を妨げる大きな原因となっているのです。

原因③:MVVを自分事化できない

MVVを理解できたとしても、それが自分の仕事や行動と結びつかなければ、実際の行動は変わりません。
多くの企業では、MVVが「会社のもの」「経営層のもの」として捉えられており、自分自身とは関係のないものだと感じられてしまっています。

特に、社員がMVVの策定プロセスに関与していない場合、「いつの間にか決まっていたお飾りの言葉」として受け止められ、当事者意識が生まれません。
また、人事評価や日々の業務と結びついていない場合、MVVを実践する動機も生まれません。

MVVは理解されていても、当事者意識がなければ実践されません。
この「自分事として捉えられていない」という状態こそが、浸透を阻む最後の原因と言えるでしょう。

ミッション・ビジョン・バリューを浸透させる方法

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の基本や浸透しない原因について、理解することができました。

ここからは、MVVを浸透させる方法について、具体施策10選を見ていきましょう。
すべての施策は、実際の企業でも活用されており、すでに効果が実証されている内容です。

各施策に応じて、浸透しない原因である「意識」「理解」「自分事化」のいずれに効果があるのかを整理しています。
まずは施策を眺めて、自社の状況に応じて優先的に取り組むべき施策を見極めましょう。

もちろん、これらの施策をヒントとして、自社なりに最適な施策を考案してもよいでしょう。

①徹底した経営陣のコミットメント

MVVの浸透は、経営陣のコミットメントが強ければ強いほど加速します。

1度発表しただけで終わりではなく、社長や役員が全社会議や動画配信、社内SNSなどあらゆる場面で繰り返し語り、社員に「これは経営の本気のメッセージだ」と認識させる必要があります。

意思決定の場でも「この施策はわたしたちのMVVに沿っているか」などと問いかける姿勢を見せるべきです。
また、採用ページやプレスリリースなど、対外的な発信でもトップが率先してMVVを語ると、社外の候補者や顧客にも本気が伝わります。

トップのコミットメントを示すためにも、MVV検討のリーダーは社長とし、社長から役員、役員から部長、部長から課長、課長から一般社員というかたちで、MVVに対する本気を示して広めていく必要があります。

②MVVアワードの開催

MVVを体現した行動を称えるアワードを定期的に開催することは、MVV浸透にとって大きな追い風となります。

1年に1度など、立候補や推薦制でノミネートされた社員・取り組みを表彰するイベントを実施し、その具体的な行動や成功体験を事例として共有しましょう。

そのうえで、受賞理由を動画や記事にまとめて社内に配信し、経営陣が直接感謝の言葉を伝えることで、MVVを行動に移した社員が称賛される文化が生まれます。
他の社員がMVVについて意識するきっかけを与えることができ、社内にポジティブな循環が生まれます。

③クリエイティブ制作・配布

MVVは言葉だけでなく、視覚的にも訴求することで記憶に残ります。
そのため、オフィスの壁や共有スペースにポスターを掲示し、動画やインタビュー記事を制作して社内案内などで配信していきましょう。

デスクトップの壁紙やSlack・Teamsの背景画像やスタンプにMVVを取り入れると、日常的に目にする機会も増え、無意識に刷り込まれます。
また、デザインにはコーポレートカラーやブランドトーンを反映させることで、MVVが企業文化の一部として感じられるようになるはずです。

非常に簡単に着手することができ、MVV浸透のはじめの一歩としても有効です。

④MVV研修

新入社員や中途社員が入社したタイミングで、MVVの研修を行うことも、MVVを浸透させるためには効果的です。
座学だけでなく、ケーススタディやロールプレイを交えて、MVVが実際の業務や経営にどう影響するかを体感してもらうことも大切です。

既存社員に対しても半年や1年に1度を目安に研修を行い、最新の事例や現場のMVV体現エピソードなどを共有してもらうことで、MVVを正しく理解する機会を作ります。

これにより、新しい社員も古くからいる社員も、全社員が常に同じ方向を向いて行動できる状態が保たれます。

⑤全社員を巻き込んだMVV策定

MVVを浸透させるためのファーストステップは、MVVを作る段階から始まっています。

トップダウンで経営陣だけが決めた言葉は、現場にとって押し付けと感じられやすく、浸透しません。
そこで、全社アンケートで社員が考える自社の強みや顧客から評価されている点を収集し、その結果をもとに部門横断のワークショップを開催するなど、MVVを全社員一丸となって共創していくことが極めて有効です。

その後、経営陣と現場メンバーで議論を重ねて最終案を発表する、あるいは複数案から全社員による投票を実施することで、社員は「自分も策定に関わった」と感じられ、完成した言葉を自分事として語りやすくなります。
結果として、MVVの策定直後から社員の会話や意思決定にMVVが自然に登場するようになります。

MVVの策定に参加する人員が増えれば増えるほど、検討の難易度が跳ね上がることは事実です。
しかしながら、「MVVは浸透させることに意味がある」という目的に立ち戻ると、できる限り多くの社員を巻き込むことは避けては通れないでしょう。

以下に代表的な巻き込み方を整理しましたので、可能な限り実践しましょう。
経営者の思いや作成の手間を優先して社員を巻き込まず、形骸化したMVVが数多くあることを忘れないでください。

社員を巻き込んだMVV策定方法実行難易度浸透貢献度
代表社員のプロジェクトチーム参画
部署や役職ごとに1名ずつなど、代表社員をチームに参画させることで当事者意識を醸成します。
MVV策定ワークショップの開催
部署や役職ごとにワークショップを開催し、それらをまとめあげるかたちでMVVを策定します。
全社員アンケートによる意見の吸い上げ
会社が抱えている課題や強みなど、どのようなテーマでもよいのでアンケートを介して社員を参加させます。
全社員投票によるMVVの絞り込み
経営陣でMVVを複数案作成のうえ、最終的な決定は全社員投票にします。
MVVドラフト案の全社レビュー
経営陣でMVVのドラフトを作成し、ドラフトに対するフィードバックを社員から受け付けて最終化します。
MVV策定プロセスを発信して共感醸成
MVVを策定する過程を都度公開し、リアルタイム感やワクワク感、きちんと考えている感を醸成します。

⑥個人MVVの策定

組織全体のMVVを出発点として、社員一人ひとりが自分自身の価値観や人生の目的を言語化する取り組みを行っても、非常に有効です。
MVVを自分事化するために、個人MVVを策定すると言い換えてもよいでしょう。

まずは会社のMVVを踏まえ、社員個人のキャリアや人生の目標と照らし合わせる時間を設け、「自社のMVVと自分のやっていること、あるいはやりたいことがどのように重なるか」を考えます。
そのうえで、個人MVVとしてまとめあげて自分事化を促し、日々の業務で意識・実践してもらいます。

個人MVVの実践状況については、人事評価のフィードバックタイミングなどで上長から確認するなど、策定して終わりにならないための工夫が必要でしょう。

⑦MVVの1on1実施

上司と部下との1on1において、単なる業務進捗や評価の話だけでなく、MVVを軸とした振り返りを行うと、MVVの自分事化が加速し、日常業務でのMVV実践が習慣化します。

最近の仕事でどの行動がMVVの体現につながったか、もっと体現できる方法は何かといった対話を行い、次回までの行動計画を設定してもよいでしょう。

こうした対話が繰り返されることで、MVVがキャリア形成と一体化し、社員が自然とMVVに沿った行動を取るようになります。

⑧採用・評価制度への落とし込み

MVVを最終的な行動に落とし込んでもらうためには、人事制度と結びつけることが欠かせません。

採用面接では候補者が自社のMVVに共感できるかを確認し、共感できない候補者は採用しないという判断基準を明確にします。
さらに、評価制度では成果だけでなく行動の質を重視し、MVVの体現度を評価項目に加えます。昇進条件にもMVVの実践状況が含まれると、社員は理念を日常的に意識するようになります。

このように、制度と連動させることで、社員がMVVを強く自分事化する仕組みが整います。
なお、採用・評価制度の変更は、社員に与える影響が極めて大きいため、綿密に計画したうえで取り組むことが大切です。

⑨浸透状況のモニタリング・改善

MVVの浸透は1回きりの施策実行で終わりではなく、継続的にモニタリングして改善を続ける必要があります。

半年ごとを目安に簡単な社内アンケートを行い、社員がどれだけMVVを認識・理解・自分事化し、行動に反映できているかを数値化します。
また、ワークショップや研修後には必ずフィードバックを収集し、満足度や実践度を測定することも忘れてはいけません。

これらのデータを経営会議などで共有し、どの部署で浸透が進んでいないかを特定し、必要に応じて追加施策を打ちます。
データで浸透度の変化を追えると経営陣や人事が投資効果を把握しやすく、施策の優先順位も明確になるため、絶対に取り組みたい施策です。

⑩MVV浸透組織の設置

理念浸透を一過性のキャンペーンで終わらせないためには、MVV浸透を専門に担うチームを設置することも有効です。

人事、広報、現場リーダーが参加するMVV推進組織を立ち上げ、年間計画を策定し、アワード、研修、アンケートなどの浸透施策を体系的に企画・実施します。
さらに、各部署からアンバサダーを選出して全社一体の組織とすることで、MVVが社内の細部にまで浸透していきます。

責任者・担当者を決めておくことで、MVVの浸透が主体的に実行されるようになります。
持続的な活動にするためにも、会社としての本気を示すためにも、専任組織の設置は検討したいものです。

ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるポイント

ここまででMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透施策について理解することができましたが、施策を実行しようとする際には気をつけていただきたいポイントがあります。
ここでは、浸透施策をより一層効果的に実行できるようにするためのヒントを5つ見ていきましょう。

一言で述べるのであれば、MVV作成の段階から浸透を見据え、自社の現状を正しく理解したうえで、正しい対象者に正しい施策を講じ、そしてこれらすべてに対して全力で取り組むことが必要となります。

浸透を見据えてMVVを作成する

MVVは作ること自体が目的ではなく、社員の行動を変えるための手段です。
しかし、多くの企業では「良い言葉を作ること」に意識が向いてしまい、その後の浸透までを設計できていません。

例えば、覚えやすいか、日常会話で使えるか、評価や意思決定に紐づけやすいかといった観点を持たずに作成してしまうと、どれだけ立派な内容であっても現場では使われなくなってしまいます。

そのため、MVVは策定段階から「どのように使われるか」「どのように浸透させるか」を前提に設計することが重要です。
本記事で何度もお伝えしている「作成の段階からできる限り多くの社員を巻き込む」という方針も、社員に当事者意識を与え、最終的な行動変化を促すためです。

なお、MVVの作成方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

自社の状況を正しく理解する

MVVの浸透施策は、どの企業でも同じ方法でうまくいくわけではありません。
企業規模や組織構造、既存の文化、MVVの認知度などによって、最適なアプローチは大きく異なります。

例えば、すでにMVVの存在は知られているが行動に結びついていない企業と、そもそもMVVを知らない社員が多い企業では、取るべき施策はまったく異なります。

そのため、まずは社員アンケートなどを通じて自社の現状を正しく把握し、「どの段階でつまずいているのか」を明確にすることが不可欠です。
現状を見誤ったまま施策を実行しても、期待した効果を得ることはできません。

浸透度に応じて社員を分類する

社員は一律に同じ状態にいるわけではありません。
MVVをよく理解している社員もいれば、存在すら知らない社員もいるなど、浸透度には大きなばらつきがあります。

そのため、社員を一括りにして施策を実行するのではなく、浸透度に応じて分類しておくことが重要です。
例えば、「まったく意識していない層」「意識しているが理解していない層」「理解しているが自分事化していない層」「すでに行動できている層」といったかたちで整理することで、各社員に対して適切なアプローチが可能になります。

このように社員を分類することで、誰に対してどの施策を打つべきかが明確になり、浸透のスピードと精度を高めることができます。

社員ごとに優先施策を実行する

浸透度に応じて社員を分類した後は、それぞれに対して適切な施策を優先的に実行していく必要があります。

例えば、MVVを「まったく意識していない層」に対してはMVVを意識させる施策が必要であり、「理解しているが自分事化していない層」に対しては自分事化を促す施策が必要です。

このように、社員の状態に応じて施策を出し分けることで、無駄なく効果的に浸透を進めることができます。

本気・長期的に取り組む

最後は根性論になってしまいますが、これが最も重要でしょう。
MVVの浸透に関しては、本気で取り組み、長期的で終わりのない活動になることを受け入れる必要があります。

MVVの浸透は、短期間で完了するものではありません。
1度発信しただけで社員の意識や行動が変わることはなく、継続的な取り組みが必要不可欠です。

MVVの提唱者であるプロジェクトメンバーや、社長・経営陣の本気が見えない取り組みに対して、誰が自分の行動を変えようと思うでしょうか。
MVVの浸透に取り組むのであれば、相当の覚悟が必要であることを、決して忘れてはいけません。

ミッション・ビジョン・バリュー浸透の成功事例

それでは最後に、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透に成功した事例を見ていきましょう。
まずはソニーグループに関して深掘りを行ったうえで、他企業についても概要に触れていきます。

いずれの企業も、本記事でご紹介したような方法でMVVを浸透させることに成功しています。
共通するのは、試行錯誤しながらも、全力で取り組んでいるということです。

これらの事例を参照して、MVVを浸透させることがどれほど大変かという苦労を知ると同時に、浸透させることで企業は大きく成長できるという恩恵を知ってください。

ソニーグループ

こちらはミッション・ビジョン・バリューではなく、パーパス・バリューという組み合わせですが、国内で最も有名な事例の1つであるため確認しておきましょう。
あわせて、ミッション・ビジョン・バリューやパーパスという名称自体には大きな意味はなく、目指す先とそこに至る方法を示し、人々の意識・行動を変えられればよいということも、強調しておきます。

さて、ソニーグループは、2018年に代表執行役社長兼CEOに就任した吉田憲一郎氏が主導して、2019年1月に「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスと、「夢と好奇心・多様性・高潔さと誠実さ・持続可能性」というバリューを策定しました。

吉田氏は社長就任にあわせて「ソニーらしさ」「ソニーの存在意義」について検討をはじめ、社員向けブログを開設のうえ社員の意見を求めるなど、社員にも検討プロセスに参加してもらいながら、最終的にパーパス・バリューに落とし込みました。

また、策定段階での社員巻き込みだけではなく浸透施策もしっかりと講じている点が特徴です。
「P&V事務局(Purpose & Values)」が中心となってキービジュアルやビデオを作成のうえ全世界の社員に届け、社長本人もグローバルの事業拠点で実施したタウンホールミーティングでパーパスへの思いを語っています。
また、各事業のマネジメント層に対して事業戦略を語る際は必ずパーパスと関連付けることを求めるなど、社員がパーパスを身近に感じ、行動に直結させられるような工夫を散りばめています。

このような取り組みも相まって、パーパス・バリューを策定した翌年の2020年には過去最高益を記録し、社長自身も経営方針説明会にて「パーパスに向かって社員一人ひとりが行動したからこそ」と振り返っています。

トヨタ自動車

トヨタはトヨタウェイという考え方を管理職研修や現場OJTに組み込み、改善活動の中で実践させています。
また、トヨタインスティテュートで体系的に教育を行い、世界中の拠点に同じ価値観を浸透させています。

楽天

楽天は楽天主義を行動指針として定義し、朝会や社内イベント、トップメッセージで繰り返し発信しています。
また、評価や組織運営の中でも楽天主義が判断基準として活用されており、グループ会社にも横展開されています。

メルカリ

メルカリはバリューを評価制度に組み込み、成果はもちろん、価値観に沿った行動が評価されます。
社内会議やプロジェクト判断でもバリューが基準として明示的に使われており、採用面接でもバリューとの一致が重視されます。

スターバックス

スターバックスは従業員をパートナーと呼び、理念への共感を採用基準にしています。
研修では接客や店舗運営を通じて同社の価値観を体験的に学ばせ、日々の顧客対応の中で実践させています。

Google

Googleは、目標設定と企業の価値観を連動させています。
各チーム・個人の目標が企業の方向性と一致するよう設計されており、評価やフィードバックもこの観点で行われます。

Netflix

Netflixはカルチャーデックを通じて価値観を明文化し、評価制度と強く連動させています。
自由と責任という原則のもと、成果だけでなく価値観に沿った行動が求められます。合わない人材は積極的に入れ替える運用により、文化を維持しています。

パタゴニア

パタゴニアは環境保護を事業方針に組み込み、売上の一部を環境活動に充てるなどの施策を実行しています。
社員も環境活動に参加する機会があり、理念が業務外でも実践されています。経営判断と価値観が一致している点が特徴的です。

Salesforce

Salesforceは同社が大切にしている社会貢献を制度化し、社員が実際にボランティア活動に参加する仕組みを整えています。
理念を具体的な行動に落とし込み、全社員が体験できるように設計することで、価値観を浸透させています。

Amazon

AmazonはLeadership Principlesと呼ばれるバリューを採用・評価・会議運営に組み込み、面接では各原則に基づく行動事例の回答を必須としています。
社内会議でも意思決定の際に原則との整合性が問われ、評価・昇進も同基準で判断されます。

なお、企業のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスの事例を確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。

まとめ|ミッション・ビジョン・バリューは「浸透」が最重要

MVVの浸透はゴールではなく、企業が目指す先に効率的にたどり着くために必要な終わりのない活動です。

MVVの策定から浸透、モニタリング、改善までのサイクルを継続的に回すことで、組織は迷わず進むための羅針盤を持ち続けることができます。
すべての施策を1度に導入する必要はなく、まずは浸透状況のモニタリング・改善やトップのコミットメントなど、優先度の高いものから始め、徐々に評価制度などに展開していくのが現実的です。

MVVに関する小さな成功体験を積み重ねることで社内の共感が広がり、やがてMVVは文化として定着し、社員が自然と行動する状態が実現します。

MVVは「作って終わり」では絶対にいけません。
「浸透」にこそ注力し、かたちだけのお飾りMVVにならないように注意しましょう。

もし、MVVやパーパスの言語化や社内展開にお悩みであれば、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」がお手伝いできるかもしれません。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、あなたの会社らしいMVV・パーパスを共にかたちにします。

MVV・パーパスの策定・浸透はこちら⇒ Business Jungle MVV・パーパス策定

関連記事