近年、新卒採用の現場において「オワハラ(就活終われハラスメント)」が問題視されており、日本経済新聞の「就活支えるはずが… 新卒仲介者がオワハラ、内定辞退で費用要求」という記事でも話題になっています。
本来は学生のキャリア選択を支援すべき採用活動において、特定の企業への入社を強要・確定させるような行為が発生しており、社会的にも大きな課題となっています。
企業間の採用競争が激化する中で、内定承諾率を高めるための過度な引き留めや圧力がかかるケースも見られます。
また近年では、企業だけでなく新卒エージェントによるオワハラも増加しており、問題はより複雑化していると言えるでしょう。
本記事では、オワハラがなぜ起こるのかを整理したうえで、その背景にある構造を明らかにしていきます。
企業理念やMVVというキーワードをもとに、採用企業がオワハラを防ぐ方法についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。
新卒採用でオワハラが横行
新卒採用におけるオワハラは、決して一部の特殊な事例ではなく、一定数発生している現実があります。
実際に、内定を辞退しようとする学生に対して脅しに近い発言や、その場で他社選考の辞退を強要するケースが報告されています。
さらに問題なのは、こうした行為が採用企業だけでなく、新卒エージェントによっても行われている点です。
本来、学生の意思決定を支援する立場であるはずのエージェントが、報酬を提供してくれる企業側の利益を優先し、学生に不利益な圧力をかけているわけです。
この背景を整理すると、採用企業は優秀な人材を確保したい、エージェントは成果報酬を得たいというインセンティブが働くことで、学生の意思よりも採用成果が優先されやすくなっていると言えます。
オワハラが起こる理由
新卒採用におけるオワハラについて、ご理解いただけたでしょうか。
本章では、オワハラが起こる構造を正確に捉えるために、採用企業・新卒エージェント・学生という3つのステークホルダーの視点で考えていく必要があります。
オワハラが偶発的な問題ではなく、構造的に発生している問題であることが分かるはずです。
採用企業の目線
採用企業でオワハラが生まれる背景には、強い採用プレッシャーがあります。
特に新卒採用では、限られた期間の中で優秀な人材を確保しなければならず、内定承諾率が重要な指標となります。
その結果、数字を求めて採用活動が「マッチング」ではなく「囲い込み」に変わってしまうことがあります。
内定を出した学生を他社に取られないようにすることが優先され、学生の意思決定を尊重しない行動につながるのです。
また、採用担当者ごとに判断基準が異なる場合、短期的な成果を優先した強引な対応が生まれやすくなります。
これは組織としての意思決定基準が曖昧であることに起因する問題と考えられます。
新卒エージェントの目線
新卒エージェントにおいてオワハラが発生する大きな理由は、そのビジネスモデルにあります。
多くのエージェントは成功報酬型であり、学生が企業に入社することで初めて収益が発生します。
この構造により、エージェントは学生の意思よりも「入社させること」を優先しやすくなります。
場合によっては、他社選考の辞退を促したり、特定企業への入社を強く勧めたりする行動につながります。
つまりオワハラは、個人の倫理観の問題というよりも、成果報酬型という構造が生み出す歪みによって発生している側面があります。
学生の目線
学生側にも、オワハラが発生しやすい構造的な要因があります。
大前提として、新卒の就職活動は人生で初めての大きな意思決定であり、多くの学生は十分な情報や経験を持っていません。
そのため、エージェントや企業からの強い働きかけに対して、適切に判断できず、流されてしまうことがあります。
特に「今決めないと機会を失う」といった圧力に対して、不安から従ってしまうことも少なくありません。
また、エージェントはあくまで企業から報酬を得ている存在であるにもかかわらず、「自分の味方である」と誤解してしまうこともあります。
こうした情報格差や経験不足が、結果としてオワハラを受け入れてしまう要因となっているのです。
オワハラを防ぐカギとなる企業理念・MVVとは
ここで、新卒採用市場におけるオワハラを防ぐ手段として注目したいのが、企業理念やMVVという考え方です。
企業理念とは、企業のゴールとゴールにたどり着く方法を社内外に示すための考え方になります。
そして、その代表例がMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)というフレームワークです。
もう少し詳しく述べておくと、ミッションが「果たすべき使命」として企業の最終的なゴールを示し、そのゴールを具体化した「将来の理想的な姿」としてビジョンがあります。
バリューは「大切にしたい価値観」と訳され、ミッションやビジョンで示したゴールにたどり着くための方法を整理するものです。
一見、価値がありそうなフレームワークに見えますが、これだけではどのようにオワハラを防ぐのか理解することができません。
次章で、企業理念やMVVがオワハラを予防できる理由について、詳しく見ていきましょう。

なお、MVVや関連する概念であるパーパス(存在意義)について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
企業理念・MVVがオワハラを予防できる理由
ここまで見てきた通り、オワハラは個人の問題ではなく、採用市場における構造的な問題によって引き起こされています。
そして、この問題の本質は、「何を優先すべきか」というゴールや意思決定の基準が曖昧であることにあります。
企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、こうした意思決定の基準を明確にする役割を果たします。
「自社のゴールは何なのか」「何を大切にするのか」「どのように人や事業と向き合うのか」を言語化することで、採用活動における判断の軸が揃います。
その結果、強引な囲い込みや圧力といった行動にブレーキがかかり、オワハラを構造的に防ぐことが可能になるのです。
本章では、企業理念やMVVがオワハラを予防できる理由について、3つの視点で詳しく整理していきましょう。
成果至上主義からの脱却
オワハラが発生する要因の一つが、採用企業やエージェントにおける成果至上主義にあることはすでに学びました。
特に新卒採用では、内定承諾率や採用人数といった数値が重視される傾向があり、それが過度に強まることで、手段を選ばない行動につながることがあります。
しかし、企業理念やMVVが明確に定義されている企業では、「何をもって成果とするのか」という定義そのものが変わります。
単に人数を確保することではなく、自社にフィットした人材と出会い、長期的に活躍してもらうことが重要な成果として位置づけられるようになると言えるでしょう。
その結果、短期的な数字を追うために学生に圧力をかけるといった行動は、自社の価値観に反するものとして認識されるようになります。
つまり企業理念やMVVは、「成果」の定義を変えることで、オワハラの発生を抑制する役割を果たすわけです。
短期ではなく長期目線での企業成長
オワハラは、短期的な視点に偏った意思決定によって生まれる問題でもあります。
「今この学生を確保できるか」という目線だけで判断すると、どうしても囲い込みや圧力といった行動が生まれやすくなります。
一方で、企業理念やMVVが浸透している企業では、最終的なゴールにたどり着くことが最優先で考えられるため、意思決定が長期視点になります。
採用においても、「この人材が長期的に活躍できるか」「企業として持続的に成長できるか」といった観点で判断が行われるようになります。
このような視点に立てば、無理に入社を強要することがいかに非合理であるかが見えてきます。
ミスマッチが生じれば早期離職につながり、結果として企業にも学生にもマイナスになるためです。
つまり企業理念やMVVは、短期的な成果ではなく、長期的な企業価値の向上を重視する意思決定を促し、オワハラを防ぐ土台となります。
利害ではなく共感によるマッチング
オワハラが生まれる背景には、「利害関係による採用」という考え方があります。
企業は採用人数を確保したい、エージェントは報酬を得たいという利害が優先されることで、学生の意思が後回しにされてしまっています。
しかし、企業理念やMVVが明確な企業では、採用の考え方そのものが変わります。
自社の価値観や目指す方向性に共感してくれる人材を採用するという、いわば「共感によるマッチング」が重視されるようになります。
この状態では、無理に引き留める必要はありません。
価値観が合わない場合は自然に離れていき、合う人材だけが残るという健全な構造が生まれ、それが結果として各ステークホルダーの利益につながります。
つまり企業理念やMVVは、採用を「奪い合い」ではなく「選び合い」に変えることで、オワハラそのものが発生しにくい環境をつくる役割を果たすわけです。
企業理念・MVVを採用で機能させる方法
ここまでで、企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)がオワハラの予防に効果的であることが分かったと思います。
しかし、多くの企業では、理念を掲げているにもかかわらず、採用の現場では短期的な成果が優先されてしまい、結果としてオワハラのような問題が発生しています。
これは、理念が「言葉として存在しているだけ」であり、意思決定や行動にまで落とし込まれていないことが原因です。
企業理念やMVVを採用で機能させるためには、策定から浸透、そして制度への組み込みまで、一貫した設計が求められます。
本章では、その具体的な方法について整理していきます。
企業理念・MVVを策定する
まず前提として、企業理念やMVVそのものが明確に定義されていなければ、採用に活かすことはできません。
すでに作成している場合は、見直す余地がないかを含めて検討する必要もあるでしょう。
この際に重要なのは、単にきれいな言葉を並べるのではなく、「意思決定の基準として機能するか」という観点で設計することです。
そのためには、自社が何を大切にし、どのような人材とともに成長していきたいのかを具体的に言語化すべきです。
また、経営層だけで決めるのではなく、現場の意見も取り入れながら策定することも重要でしょう。
そうすることで、実際の業務や採用活動と乖離しない、現実的な理念として機能するようになります。
なお、企業理念やMVVの策定方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
社内に浸透させる
企業理念やMVVは、社員に理解されていなければ意味がありません。
特に採用においては、現場の担当者が理念を理解し、それに基づいて判断できる状態をつくる必要があります。
そのためには、単に共有するだけでなく、研修やワークショップを通じて「自分事化」させることが重要です。
なぜこの理念が必要なのか、自分の業務とどのように関係するのかを理解してもらうべきです。
理念が浸透していれば、採用の現場においても自然と判断基準として機能し、オワハラのような行動を防ぐことにつながります。
なお、企業理念やMVVの浸透方法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
採用制度に組み込む
企業理念やMVVを本当に機能させるためには、採用制度の中に組み込むことが不可欠です。
例えば、選考基準にMVVへの共感や適合度を組み込むことで、「自社に合う人材」を明確に定義・選定することができます。
また、面接の評価項目や質問内容にも反映させることで、採用担当者ごとの判断のばらつきを防ぐこともできるでしょう。
さらに、内定承諾率といった短期指標だけでなく、入社後の活躍や定着といった長期指標も評価に組み込むことが重要です。
このように制度として組み込むことで、理念が単なる理想論ではなく、具体的な行動につながる仕組みとして機能するようになります。
学生に伝えて共感を得る
最後に重要なのが、企業理念やMVVを学生に対してしっかりと伝えることです。
採用活動は、企業が学生を選ぶ場であると同時に、学生が企業を選ぶ場でもあるため、自社の価値観や目指す方向性を正しく伝え、共感してもらうことが不可欠です。
説明会や面接の中で理念を丁寧に伝えることで、学生は自分との相性を判断できるようになるでしょう。
その結果、無理に引き留める必要がなくなり、自然とマッチングが成立するようになります。
共感を前提とした採用が実現すれば、オワハラのような行為が入り込む余地はなくなるはずです。
企業理念やMVVは、採用における関係性そのものを健全にする役割を果たしてくれるわけです。
企業理念・MVVを活用する際の注意点
最後に、実際に企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を採用の場面で使う際の、注意点を洗い出しておきましょう。
ここまで学んだ内容に加えて、本章でご説明する注意点を念頭に置いておくことで、企業理念やMVVがより意味のあるものになるはずです。
意味ある言葉を作る
企業理念やMVVを策定する際に陥りやすいのが、「きれいな言葉」を作ることを目的としてしまうことです。
抽象的で耳障りの良い表現は一見魅力的に見えますが、具体的な行動や意思決定につながらなければ意味がありません。
重要なのは、その言葉が実際の現場で使われるかどうかです。
採用の場面においても、「この判断は自社の価値観に合っているか」と問い直せるような内容でなければ、機能しません。
そのためには、自社の実態や課題を踏まえたうえで、意思決定や行動につながる言葉に落とし込むことが重要です。
理想論ではなく、現実の意思決定に耐えられる言葉であることが求められます。
作って終わりにしない
企業理念やMVVは、策定した時点がゴールではなく、むしろスタートです。
多くの企業では、理念を発表しただけで満足してしまい、その後の運用や浸透が不十分なまま終わってしまいます。
しかし、理念は繰り返し使われて初めて意味を持ちます。
日々の意思決定や評価、採用の判断など、あらゆる場面で参照されることで、徐々に組織に根付いていきます。
そのためには、経営層やマネジメント層が率先して理念に基づいた判断を行ったうえで、終わりなく浸透施策を企画・実行していくことが重要です。
理念を「使う文化」をつくることが、形骸化を防ぐポイントになります。
入社前後の浸透を徹底する
企業理念やMVVを採用で活かすためには、入社前後の浸透も非常に重要です。
採用の段階で理念に共感して入社したとしても、その後のフォローがなければ、徐々に意識が薄れてしまいます。
例えば、内定者フォローや新入社員研修の中で理念を丁寧に伝え、自分の業務とどのようにつながるのかを理解してもらう必要があるはずです。
さらに、配属後も上司や先輩が理念に基づいた行動を示すことで、実践レベルでの理解が深まるでしょう。
このプロセスを徹底することで、理念に馴染みのない新卒社員でも、理念が日々の行動として定着していきます。
結果として、採用時だけでなく、その後の組織運営においても健全な意思決定が行われるようになります。
まとめ|企業理念・MVVでオワハラを予防しよう
本記事では、新卒採用におけるオワハラの実態とその原因、そして企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)による解決の可能性について解説してきました。
オワハラは一部の企業や担当者の問題ではなく、採用市場における構造的な問題です。
そしてその背景には、「何を優先すべきか」という意思決定の基準が曖昧であるという本質があります。
企業理念やMVVは、その基準を明確にすることで、短期的な成果に偏った行動にブレーキをかけ、長期的な視点での意思決定を可能にします。
さらに、利害ではなく共感によるマッチングを実現することで、採用そのものを健全なものへと変えていくことができます。
ただし、理念は作るだけでは意味がなく、策定・浸透まで一貫して設計することで、初めて組織の行動を変える力を持ちます。
オワハラを防ぎ、持続的に成長できる組織をつくるためにも、今一度、自社の企業理念やMVVを見直してみてはいかがでしょうか。
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