MVV・パーパスを策定・浸透させる5ステップ完全ガイド

「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を刷新したい」「パーパスを新たに策定したい」といった声が、大企業やスタートアップからよく挙がります。しかし、自分たちだけでは具体的な方法が分からないという声も同時に耳にします。

本記事では、そのような方々を対象として、MVVやパーパスを策定・浸透させるための5ステップについて徹底解説させていただきます。それでは見ていきましょう!

本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。

MVV・パーパスの策定・浸透ステップの全体像

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)・パーパスの策定・浸透ステップは大きく分けて5つあり、おおよそ3ヶ月間~半年間かかります。ここでは全体の流れについて簡単に説明し、各ステップについては次章以降で詳しく解説することにしましょう。

①プロジェクトの発足・活動準備
まずは準備が必要です。検討目的を明確化したうえでチームを発足し、MVV・パーパスに関する基本的な知識を身に付けます。

②現状の整理
いきなりMVV・パーパスを検討するわけではありません。既存MVV・パーパスの浸透度調査、市場・競合・自社調査などを行い、自分たちの立ち位置を明確にします。

③あるべき方向性の整理
整理した現状に基づいて、今後自分たちが進むべき方向性を定めます。現状が整理されたからこそ、将来について定めることができるわけです。

④MVV・パーパスの策定
ここでやっとMVV・パーパスを策定できます。あるべき方向性と合致するようなMVV・パーパスを、社員を巻き込みながら作っていきます。

⑤MVV・パーパスの浸透施策の企画・実行
MVV・パーパスは作って終わりではありません。社内における浸透度を定点観測しながら、終わりのない改善活動を進めていきます。 以上がMVV・パーパスの策定・浸透における基本的な5つのステップです。それでは、各ステップの具体的な中身を覗いてみましょう。

①プロジェクトの発足・活動準備

プロジェクトの活動目的を明確化したうえで活動計画を策定し、プロジェクトチームを組成のうえ、メンバーはMVV・パーパスに関する基礎的な知識を身に付ける必要があります。
重要視されることが少ない本ステップですが、プロジェクトの成功を左右する極めて重要な取り組みです。全力で取り組むようにしましょう。

①-1.活動目的の明確化
最初にプロジェクトの目的を定義します。目的が明確でなければ、プロジェクトの途中で道に迷ってしまうため、これからのすべての活動の拠り所を最初に決めておきます。

①-2.活動計画の策定
タスク(何をするか)・スケジュール(いつするか)・役割分担(誰がするか)を定めます。これが目的を達成するための道筋となります。

①-3.プロジェクトチームの組成
目的達成のために必要な人材を社内外から集め、プロジェクトチームを組成します。社長がオーナーとして本気を示しつつ、組織横断的に幅広い人材を巻き込むようにします。

①-4.MVV・パーパスに対する理解の醸成
この後の検討を円滑に進めるため、MVV・パーパスに関する最低限の知識を身に付けます。書籍や外部講師を活用して、効率的に学びましょう。

②現状の整理

社員アンケートやヒアリング、市場・競合・自社調査を通じて、自社の現状を客観的に理解し、自社のあるべき方向性を定める際のインプットを獲得します。
闇雲に調査してしまうと際限がないため、「MVV・パーパスの策定・浸透に資する調査」という発想を念頭に置き、意味のない膨大な調査には絶対にならないようにしてください。

②-1.社員アンケートの作成・配布・分析
既存MVV・パーパスの浸透度合いや自社の活動に対する不安感などを、社員アンケートを通して吸い上げます。これで自分たちの立ち位置を客観的に知ることができます。

②-2.関係者ヒアリングの実施
社長や役員、現場などに対して、MVV・パーパスの策定・浸透に関するヒアリングを行います。自分たちの課題はもちろん、自分たちの魅力も忘れずに引き出しましょう。

②-3.市場調査
業界動向や顧客ニーズについて調査し、業界や顧客がどのように変化しているのかを見極めます。現状だけではなく、将来に対する見通しも漏れなく把握します。

②-4.競合調査
市場変化を受けて競合がどのような活動を行っているのかを見極めます。また、競合が掲げているMVV・パーパスもあわせて把握しておきます。

②-5.自社調査
自社のこれまでの歩みや戦略を棚卸しします。また、市場調査や競合調査を踏まえた自社の課題についても整理する必要があります。

③あるべき方向性の策定

現状整理で把握したこれからの市場・競合の動向や自社の強み・弱みを踏まえ、将来的に自社がどのような姿を描くべきかという方向性を定めます。
現状調査結果からMVV・パーパス策定までの距離は離れているため、その前段としてあるべき方向性を定めることで、MVV・パーパス策定がグッと簡単かつ効果的になります。

③-1.現状整理を踏まえたあるべき方向性の策定
現状整理の結果を踏まえ、将来的に自社がどこを目指していくべきかという方向性を定めます。この方向性が、最終的にはMVV・パーパスとして生まれ変わります。

③-2.あるべき方向性のキーメッセージ化
あるべき方向性だけでは文章が長く・難しくなる傾向にあるため、いくつかの短いメッセージに落とし込みます。これらの要素を盛り込みながら、MVV・パーパスを策定します。

④MVV・パーパスの策定

ここまできて、やっとMVV・パーパスの策定を行います。
策定方法はさまざまありますが、何よりも重要なことはできるだけ多くの社員を巻き込んで自分事化してもらうことです。これにより策定の手間は大きくなりますが、その後のMVV・パーパスの浸透における円滑さが段違いに向上します。

④-1.MVV・パーパスの候補策定(3案程度)
自社のあるべき方向性を踏まえ、MVV・パーパスを策定します。策定方法はさまざまありますが、自分事化を促して浸透させるためにできる限り多くの社員を巻き込んでください。

④-2.MVV・パーパスの決定(1案のみ)
策定した候補から、最終的なMVV・パーパスを絞り込みます。評価基準の設定、全社員の投票など方法はさまざまですが、ここでも社員の巻き込みを忘れないでください。

④-3.MVV・パーパスの社内外公表
最終決定したMVV・パーパスは大々的に社内外に公表しましょう。イベントを企画する、キービジュアルを作成する、経営戦略とあわせて発表するなどの工夫が可能です。

⑤MVV・パーパスの浸透施策の企画・実行

人間は、物事を「認識」「理解」「納得」することで、はじめて自分事化して「行動」を変えます。この3つの壁を突破して具体的な行動変革に繋げるため、活動に終着点はありません。根気強く、継続的に浸透施策に取り組んでいきましょう。
なお、浸透施策の企画自体はMVV・パーパス策定に先んじて実施しておくとスムーズです。

⑤-1.浸透施策の企画
策定したMVV・パーパスを浸透させるための施策を企画します。効果やコストなどの評価基準を設け、施策を優先順位付けすることで実行の品質・スピードが向上します。

⑤-2.浸透施策の実行
優先度の高い施策から実行していきましょう。実行中に想定とは異なる状況に陥ることは当然であり、そこからいかに高速で軌道修正していけるかが効果最大化のポイントです。

⑤-3.社員アンケートによる定点観測・改善
MVV・パーパスの浸透は終わりがありません。四半期から1年ごとの社員アンケートで自社の状況を定期的に把握し、絶え間ない改善活動に繋げていきます。

まとめ:MVV・パーパス成功の要諦

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)・パーパスの策定と浸透は、一朝一夕で完了する単発イベントではなく、組織の未来を形づくる息の長いプロジェクトです。本記事で紹介した5つのステップ、つまり①プロジェクトの発足・準備、②現状整理、③あるべき方向性の策定、④MVV・パーパスの策定、⑤浸透施策の企画・実行は、どれも欠けることなく丁寧に進めていく必要があります。

特に、初期段階の「目的の明確化」や「社員の巻き込み」はおろそかにされがちですが、後の浸透スピードとMVV・パーパス策定の効果を大きく左右します。また、MVV・パーパスは公表して終わりではなく、日々の意思決定や行動に自然と組み込まれるまで、継続的な観察と改善が必要になります。

変化の激しい時代において、組織が迷わず進むための羅針盤となるMVV・パーパス。その価値を最大化するために、ぜひ本記事のステップを参考に、自社に合ったプロセスを実践してみてください。組織全体が共通の目的と価値観で結ばれるとき、事業の推進力と社員の主体性は飛躍的に高まります。


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