任天堂は、世界的なゲーム企業として多くの人に知られていますが、その経営思想について深く理解している方は多くありません。
特に、近年注目されているMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の観点で見ると、任天堂は非常に特徴的な企業です。
一般的な企業のようにMVVを明確に定義しているわけではなく、独自の考え方で企業の方向性や価値観を整理しています。
本記事では、任天堂の経営方針やDNAといった考え方をもとに、MVVの観点からその思想を整理していきます。
任天堂の事例を通じて、MVVの本質や、自社にとって最適な考え方を見つけるヒントとしてご活用ください。
なお、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」と一緒にMVV・パーパスを策定したい方、あるいは浸透させたい方は、いつでもご連絡ください。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、全力でサポートさせていただきます!

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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは
任天堂のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)について考える前に、まずはそもそもMVVとは何なのかという理解が必要です。
MVVは一言でいえば、企業が目指すゴールと、ゴールに至るための方法を整理した概念です。
組織は何もしないと単なる「この集団」になってしまい、効率的に進むことはできませんが、MVVがあることで全員が足並みをそろえて進んでいくことができます。
具体的には、ミッションは「果たすべき使命」、ビジョンは「将来の理想的な姿」、バリューは「大切にしたい価値観」を表しています。
なお、ミッションとビジョンの違いは混同してしまうかもしれません。
ミッションが遠い未来のゴールであるため抽象的になってしまいますが、ビジョンが近い将来のゴールであるため目指す先に具体性が生まれます。
MVVを策定して社内に浸透させることで、企業は進むべき先を照らす羅針盤を手にすることができるため、大多数の企業ではこうした考え方を取り入れているわけです。

なお、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や関連する概念であるパーパスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
任天堂にはMVVがない
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の定義や意味については理解できたと思います。
しかし、すべての企業がMVVの概念を採用しているわけではなく、独自の概念を採用している企業もあります。
独自の概念を採用している企業の代表例が、世界的なゲーム会社である任天堂です。
わたしたちが調査した限り、任天堂ではMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)という言葉が使用されていません。
しかしながら、代わりに「経営方針」と「DNA」という言葉が登場しており、これらがMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のような機能を果たしていると考えられます。
本章では、任天堂の経営方針とDNAについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
任天堂の経営方針
任天堂における「経営方針」は企業としてのゴールを示しており、ミッション・ビジョンと同じような役割を担っていると言えるでしょう。
| 任天堂の経営方針 |
| 私たちは「娯楽を通じて人々を笑顔にする会社」として、どなたにでも直感的に楽しんでいただける「任天堂独自の遊び」を提供することを目指しています。この独自の娯楽体験を実現するために、ハード・ソフト一体型のゲーム専用機ビジネスを経営の中核に置き、どのような娯楽でも「いつかは必ず飽きられてしまう」という考えのもと、人々を笑顔にするために独創的な商品やサービスを世界中の人々にお届けし続けていきます。 |
※任天堂株式会社「任天堂の人材に対する考え方」より引用
この経営方針から分かるのは、任天堂が「娯楽を通じて人々を笑顔にする」という明確なゴールを持っているという点です。
単にゲームを作る企業ではなく、娯楽を通じて価値を提供することを目的としており、そのために「任天堂独自の遊び」を追求し続けています。
また、「いずれ飽きられる」という前提に立っている点も特徴的であり、常に新しい価値を生み出し続ける必要があるという強い危機感が表れています。
こうした考え方は、ミッションやビジョンとして整理されることが多い内容ですが、任天堂ではあえてそのような言葉を使わず、シンプルな経営方針として表現しています。
任天堂のDNA
任天堂における「DNA」は企業としてのゴールにたどり着くための方法を示しており、こちらはバリューとして捉えることができるでしょう。
| 任天堂のDNA |
| ●独創 任天堂の存在意義は、新しい楽しさと面白さを提供し続けることにあります。 私たちは良い意味で他と違うもの、ユニークで驚きを生むことに大きな価値をおきます。 あきらめることなくそれを追求し、新しいことに挑戦します。 ●柔軟 急激に変化する世の中に、素早く対応しなければ、私たちは生き残れません。 条件や環境が変われば、最適な答えも変わります。過去の成功法則や常識にとらわれず、変化に柔軟に対応します。 ●誠実 小さな信用の積み重ねが大きな変化を生み出します。 決してうぬぼれず、謙虚な心を忘れず、すべてのことに真面目に向き合います。 進歩するために、私たちは日々反省し、努力します。 |
※任天堂株式会社「任天堂の人材に対する考え方」より引用
任天堂のDNAからは、企業としてどのように行動すべきかという価値観が明確に示されています。
「独創」「柔軟」「誠実」という3つの要素は、いずれも日々の意思決定や行動に直結する内容であり、社員一人ひとりの判断基準として機能しているはずです。
特に、独創性を重視する姿勢は任天堂の象徴とも言えるものであり、他社とは異なる価値を生み出す源泉となっていると想定されます。
そのうえで、任天堂のDNAを「個人の成長」と「チームでの協働」と組み合わせて、「会社としての総合力」として定義している点もユニークです。

※任天堂株式会社「任天堂の人材に対する考え方」より引用
任天堂の山内社長は「社是・社訓は邪魔」と断言
任天堂のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に関するユニークな話として、1949年に任天堂の3代目代表取締役社長に就任した山内博(やまうちひろし)氏についてもご紹介しておきます。
山内氏は、若かりし頃からアイデアマンとして名が知られ、単なるトランプ製造業であった任天堂を業界トップに躍進させ、さらには電子ゲームによって世界的な企業に押し上げて「中興の祖」として活躍しました。
しかし、そんな山内氏は次のように言い切ったそうです。
| 代表取締役社長の山内博氏の言葉 |
| 社是や社訓といったものはジャマになる。一寸先は闇のこの業界で、固定的な考えを持てば自ら負けを招く |
※DIAMOND online「任天堂の中興の祖、山内溥が社是・社訓など邪魔と断言した理由」より引用
任天堂がMVVという言葉を避け、経営方針やDNAを使用しているのはこうした背景があるかもしれません。
確かにMVVは非常に強力な経営ツールですが、あくまでもゴールを達成するための手段に過ぎません。
強い意思を持ってMVVを掲げなかったり、あるいは別の概念を採用することも一案でしょう。
任天堂以外のMVV事例
ここまで、任天堂に集中して考えていきましたが、もちろん独自概念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の事例は他にもあります。
こちらの記事では、MVVや関連する概念であるパーパスの企業事例を整理しています。よろしければご覧ください。
まとめ|MVVという言葉にこだわる必要はない
本記事では、任天堂の経営方針やDNAを、MVVの観点から読み取っていきました。
任天堂は、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)という言葉を使用しているわけではありませんが、実質的にはそれに相当する考え方を採用しています。
重要なのは、MVVという言葉を使うこと自体ではなく、自社としてのゴールや価値観を明確にし、それを組織全体に浸透させることです。
概念を増やしすぎることで理解や実践が難しくなるのであれば、任天堂のようにシンプルなかたちで整理することも有効な選択肢となります。
自社にとって最適なかたちで考え方を整理し、実際の行動につなげていくことこそが、MVVを活用する本来の目的と言えるでしょう。
その点で考えると、任天堂は特殊で勇気のある考え方を採用していますが、他のどの企業よりも意味のある使い方ができているのではないでしょうか。
MVVやパーパスの言語化や社内展開にお悩みであれば、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」がお手伝いできるかもしれません。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、あなたの会社らしいMVV・パーパスを共にかたちにします。

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