近年、多くの企業がMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を掲げるようになりました。
しかし、「掲げているだけで実際の行動につながっていない」「言葉が抽象的で理解されていない」といった課題を抱える企業も少なくありません。
その中で注目されているのが、企業の転機に合わせてMVVを刷新し、組織全体で共有・実践していく動きです。
単なる理念の言語化にとどまらず、社員を巻き込みながら策定し、実際の行動へとつなげていくことが重要視されています。
こうした流れの中で参考になる事例が、新光電気工業株式会社です。
同社は創立80周年という節目にあわせて、従来の企業理念を見直し、新たにMVVを制定しました。
本記事では、新光電気工業の企業理念をもとに、MVVをどのように設計し、どのように活用すべきかを具体的に解説します。
自社のMVVを見直したい方や、これから策定を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」と一緒にMVV・パーパスを策定したい方、あるいは浸透させたい方は、いつでもご連絡ください。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、全力でサポートさせていただきます!

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本記事の監修 松浦英宗(まつうらえいしゅう)
創業・事業成長に必要なサービスをオールインワンで提供するBusiness Jungleの代表。
外資系戦略コンサルティング会社(アーサー・ディ・リトル・ジャパン)などにおいて、事業戦略立案やMVV・パーパスの策定・浸透に関する豊富な経験を有する。
新光電気工業株式会社とは
そもそも新光電気工業株式会社は、長野県長野市に本社を置く電子部品メーカーであり、半導体パッケージ分野を中心に事業を展開している企業です。
半導体の性能を支える重要な部品を開発・製造しており、デジタル社会の基盤を支える存在として世界的に事業を展開していると言えるでしょう。
そんな同社のルーツは、電球の再生事業にあります。
人々の暮らしに光を届けるという原点は現在も受け継がれており、半導体技術を通じて社会を支える企業へと進化してきました。
新たに作成した企業理念
繰り返しになりますが、新光電気工業は、新たにMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を制定しました。
企業としての存在意義や将来像、価値観を分かりやすく整理し、企業が目指すゴールと到達方法を整理している点が魅力的です。
また、策定プロセスにおいては社員の意見を取り入れる取り組みが行われており、特にバリューについては現場の声が反映されているようです。
トップダウンで決めるのではなく組織全体で作り上げ、社内における納得感を醸成している点も特徴です。
それでは、新光電気工業のMVVを構成する各要素について、詳しく見ていきましょう。

出所:同社HP(新光電気グループ MVV ミッション・ビジョン・バリュー)より引用
ミッション(社会における存在意義)
新光電気工業のミッションは、「Brightening the Future」という言葉に象徴されるように、社会に新たな価値を提供し続ける存在であることを示しています。
同社の原点は、電球の再生を通じて人々の暮らしに光を届けてきた点にあり、その想いは現在も変わることなく受け継がれています。こうした想いが背景にあるのでしょう。
現在では半導体パッケージを中心とした事業を通じて、デジタル社会の基盤を支える役割へと進化しています。
単に製品を提供するだけでなく、人と社会の暮らしをより豊かにし、未来を創造していく存在であることを、本ミッションを通して明確に示しています。
また、過去の延長線上にとどまるのではなく、新たな価値を生み出し続ける姿勢が強く打ち出されている点も特徴です。
企業の歴史と未来志向が両立された、非常に完成度の高いミッションといえるでしょう。
| “Brightening the Future” 最先端のテクノロジーとものづくりで、 人々の暮らしを豊かに彩り、輝かしい未来の創造に貢献する。 私たちの「原点」は、電球の再生を通じて、人々の暮らしに光をもたらすことにありました。 その想いは、いまも半導体パッケージなどを通じて、 世界中でデジタル社会を支える力となっています。 人と社会を彩る“新たな光”を届ける企業として希望に満ちた未来の創造に貢献する それが新光電気のMissionです。 |
出所:同社HP(新光電気グループ MVV ミッション・ビジョン・バリュー)より引用
ビジョン(目指すべき将来像)
ビジョンでは、新光電気工業が目指すべき将来像として、「半導体の未来をつなぐイノベーティブカンパニー」という方向性が示されています。
半導体業界は技術革新のスピードが非常に速く、企業には常に変化への対応と新たな価値創造が求められます。
その中で同社は、単に技術の進化に追随するのではなく、自ら変革を起こし続ける存在であることを掲げています。受け身ではなく主体的に未来を切り拓く姿勢が、このビジョンの核となっていると推察できます。
さらに、「限りなき発展」という創業以来の思想がビジョンにも組み込まれている点が特徴です。
これは継続的な成長と挑戦を意味しており、企業として非常に重視している姿勢を象徴していると言えるでしょう。
| 半導体の未来をつなぐ “イノベーティブカンパニー” として、 「限りなき発展」を目指す。 経済・社会の在り方を大きく変える技術革新が加速し続けています。 私たちは半導体の革新的な進化に欠かせない “イノベーティブカンパニー”として 半導体実装で培ってきた類を見ない技術力とものづくり力を源泉に、 創造への情熱を絶やすことなく、「限りなき発展」に挑んでいきます。 |
出所:同社HP(新光電気グループ MVV ミッション・ビジョン・バリュー)より引用
バリュー(大切にすべき価値観)
バリューでは、ミッションやビジョンを実現するために社員が持つべき価値観が具体的に示されています。
「進取果敢」「SPEED」「共創」「期待の先へ」「温かさ」という5つの観点で整理されており、いずれも日々の行動に直結する内容となっています。
これらのバリューは抽象的な理念ではなく、社員一人ひとりの判断や行動の基準として機能するよう具体的に設計されており、組織全体の方向性を揃える役割を果たしています。
ミッションやビジョンを通じて企業のゴールを示すだけでは不十分です。
バリューを通して大切にしたい価値観を示し、ゴールにたどり着くための方法まであわせて明示することが重要です。
| 進取果敢 新たな発想と果敢な挑戦で変革を起こすとともに、未知の領域にも臆せず踏み出し、時代の変化を先取りし、自ら進化を遂げることで、半導体の未来を切り拓いていきます。 SPEED 市場や顧客ニーズの変化を敏感に捉え、迅速かつ的確に行動する柔軟な対応力で革新を加速させる あらゆる場面で「SPEED」を実現します。 共創 闊達で透明性の高いコミュニケーションを基盤に、組織や立場を越えて連携し、多様な知恵と力を結集することで、新たな価値を創造し、未来を形づくります。 期待の先へ 進取果敢な挑戦とSPEEDある行動、そして共創の力で期待を超えていく 私たちは、半導体の未来を支える企業として、常に「期待の先」を目指し続けます。 温かさ 技術の進化とともに、人・社会・環境を想う心を 私たちは誠実で真摯な姿勢を常に忘れず、すべてのステークホルダーとともに、成長・発展していきます。 |
出所:同社HP(新光電気グループ MVV ミッション・ビジョン・バリュー)より引用
行動規範(社員として遵守すべきこと)
なお、同社ではMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に加えて、社員として遵守すべきこととして「行動規範」を定義しています。
バリューと合わせ、会社として守るべきルールを具体的に定義したものと捉えることができます。
MVVと行動規範がセットで機能することで、理念が形骸化することなく、実際の行動へと結びつく仕組みが整えられていると言えるでしょう。
| ・人権を尊重します ・法令を遵守します ・公正な商取引を行います ・知的財産を守り尊重します ・機密を保持します ・業務上の立場を私的に利用しません |
出所:同社HP(新光電気グループ MVV ミッション・ビジョン・バリュー)より引用
なお、一般的なMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の定義や、行動される概念であるパーパスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
企業理念制定の背景
新光電気工業がMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を制定した背景には、企業としての大きな転機があります。
同社は富士通の子会社として事業を展開してきましたが、2025年に産業革新投資機構(JIC)などが出資する特別目的会社による買収を受け、資本構成および経営体制が大きく変化しました。
こうした環境の変化を踏まえ、これまでの延長線ではなく、改めて将来の方向性を明確にする必要が生じたわけです。
さらに、創立80周年という節目を迎えたことも、企業理念を見直す大きな契機となりました。
これまで受け継いできた歴史や価値観を振り返ると同時に、次の成長フェーズに向けた指針を定義することが求められたと考えられます。
また、半導体業界を取り巻く環境は急速に変化しており、技術革新や市場競争の激化に対応するためにも、企業としての意思や価値観を明確に言語化する重要性が高まっていたとも考えられます。
こうした背景から、従来策定していた理念である「SHINKO Way」を全面的に見直し、新たなMVVとして再定義したのです。
旧企業理念(SHINKO Way)の紹介
新光電気工業がこれまで掲げてきた「SHINKO Way」は、同社グループの存在意義や価値観、そして社員一人ひとりの行動の原理原則を体系的に示した企業理念です。
その内容は多岐にわたり、「技術力」「ものづくり」「発展性」「国際性」「温かさ」といった理念に加え、創業者精神や企業指針・行動指針、さらには行動規範まで細かく整理されています。
一方で、非常に網羅的であるがゆえに、現代の社員にとってはやや複雑で、直感的に理解しにくい側面もあったと考えられます。
こうした背景から、従来の価値観を引き継ぎつつ、よりシンプルで行動につながるかたちへ再構築されたものが、今回のMVVであると捉えることができるでしょう。

出所:同社公表資料より引用
本事例から学べるMVVのポイント
新光電気工業の事例からは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する際は、組織の方向性を揃え、実際の行動につなげるための設計が重要であることが分かります。
特に印象的なのは、「分かりやすさ」「社員の巻き込み」「柔軟な定義」「刷新のタイミング」という4つの観点です。
これらはいずれもMVVを機能させるうえで欠かせない要素であり、どれか一つが欠けても理念は形骸化しやすくなります。
同社は、長年の歴史で培ってきた価値観を大切にしながらも、現代の組織に合わせて再設計している点が非常に優れています。
新光電気工業のMVV刷新は、これからMVVを策定する企業はもちろん、すでに掲げている企業にとっても自社の理念を見直すヒントとなる事例といえるでしょう。
本記事の集大成として、事例から読み取れるMVVのポイントを整理していきましょう。
企業理念は分かりやすくする
旧来の「SHINKO Way」は、複数の概念を網羅した非常に完成度の高いものでしたが、その分内容が多岐にわたり、直感的に理解するにはやや難しい側面もありました。
一方で、新たに制定された企業理念はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や行動規範というシンプルな構造で整理されており、文章量も少ないため、誰が見ても理解しやすいかたちになっています。
企業理念は作ることが目的ではなく、社内に浸透させ、行動につなげることが本質です。
そのためには、まず理解されることが前提となります。
本事例からは、情報量や網羅性よりも「分かりやすさ」を優先して設計することが、MVVを機能させるうえで重要であることが分かります。
社員を巻き込んで制定する
新光電気工業では、MVVの策定にあたり、多様な社員が参加するワークショップを実施し、特にバリューについては現場の意見を反映させているようです。
これは非常に重要なポイントです。
なぜなら、経営理念をトップダウンで決めた場合、どうしても「与えられたもの」という認識になりやすく、現場での実行につながりにくくなるためです。
一方で、社員自身が議論し、言葉をつくるプロセスに関わることで、理念に対する納得感が生まれ、自分事として捉えられるようになります。
その結果、MVVを通して、社員の自発的な意識・行動の変化へとつながっていきます。
MVVを浸透させたいのであれば、策定プロセスそのものに社員を巻き込むことが重要であると言えるでしょう。
なお、MVVの策定方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
企業理念の解釈に正解はない
一般的にはMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)というフレームワークが広く用いられていますが、その定義や構成に絶対的な正解があるわけではありません。
新光電気工業の事例でも、MVVに加えて行動規範を定義しており、独自の考え方に基づいて具体的な行動まで整理しています。
また企業によっては、ミッションの代わりに社会との関係性を軸に「パーパス」を中心に据えるケースや、MVVの順序や定義を変えるケースもあります。
重要なのはフレームワークに従うことではなく、自社にとって最も機能するかたちで企業のゴールと到達方法を設計することです。
本事例からは、形式にとらわれるのではなく、組織の実態に合わせて柔軟に理念を定義することの重要性が分かります。
なお、パーパスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
企業の転機でMVVは刷新できる
MVVは一度策定すれば終わりというものではなく、企業の状況や環境の変化に応じて見直していくことも重要です。
実際に新光電気工業は、資本構成や経営体制の変化、そして創立80周年という節目を契機に、従来の理念を全面的に見直しました。
これは、企業としての方向性を再定義する絶好のタイミングであったと言えます。
特に組織の大きな転機においては、理念を見直すことで、社員の意識を一気に切り替える効果も期待できるでしょう。
もちろん、頻繁に変更しすぎると浸透しにくくなるリスクもありますが、必要なタイミングで大胆に見直すことは、組織の成長にとって有効な手段です。
本事例からは、MVVは固定的なものではなく、進化させ続けるべきものであることが分かります。
まとめ|新光電気工業の企業理念から学ぼう
新光電気工業の事例から分かるのは、MVVは単に掲げるものではなく、組織の方向性を揃え、社員の行動を変えるために設計すべきものであるという点です。
旧来の「SHINKO Way」のように網羅性の高い理念も価値はありますが、実際に機能させるためには、誰もが理解できるシンプルさが求められます。
また、社員を巻き込んで策定することで納得感を高め、自分事化を促すことや、自社に合ったかたちで柔軟に定義することの重要性も明らかになりました。
さらに、企業の転機において理念を見直すことで、組織の意識を大きく変えることができる点も見逃せません。
MVVに正解はありませんが、重要なのは「浸透し、行動につながるかどうか」です。
同社についても、MVVを策定して終わりではなく、今後の浸透活動にこそ企業理念刷新の真価が問われます。例えば、以下記事で記載されているような浸透施策を実践していくことが求められるでしょう。
今後の、新光電気工業の動きに目が離せません。
MVVやパーパスの言語化や社内展開にお悩みであれば、わたしたち「Business Jungle MVV・パーパス策定」がお手伝いできるかもしれません。外資戦略コンサルやデザイナー出身者を含む多様な専門チームが、あなたの会社らしいMVV・パーパスを共にかたちにします。

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